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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第三章――「二つの世界の復讐」

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第3話(後編2)――「偽りの承認書」

 迷宮から戻ったレオンは、領地の邸宅で管理官から報告を受けていた。


 地下10階の採掘については、石壁の周囲を除けば予定どおり続けられる見通しだった。鉱夫たちも作業場所を移し、金銀鉱石の採掘を進めている。


 レオンは石壁を無理に掘り進めないことと、部屋の存在をむやみに広めないことを改めて指示した。


 今後、老人と何度か会って詳しい話を聞くつもりだが、世界を渡る方法についてはまだ確かなことが分かっていない。まずは迷宮の管理を徹底し、領地の仕事に支障が出ないようにする必要があった。


 そこへ、王都からの早馬が到着したという知らせが入った。


 管理官は届けられた書状を確認し、レオンへ差し出した。


「子爵様、エレオノーラ様からのお手紙でございます。できるだけ早くお読みいただきたいとのことです」


 レオンは書状を受け取り、封を開いた。


 そこには、公爵家の会計について新しい報告があったことが記されていた。


 エレオノーラが調べていた持参金からの支出について、家令が保管する支出命令書を閲覧する日取りが、ようやく決まったという。


 ところが、書状の後半には気になることが書かれていた。


 公爵家の財務担当から届いた説明では、サルヴィ商会への支払いについて、エレオノーラ本人の承認を得たことになっているらしい。


 しかも、承認の記録だけでなく、本人の署名と公爵夫人の印章を備えた書類が存在すると説明されているという。


 レオンは、その部分をもう一度読んだ。


 エレオノーラは、該当する支出を承認した覚えがないと話していた。


 もちろん、書類の原本をまだ確認していない以上、記録の取り違えや事務処理の間違いである可能性は残っている。しかし、もし本人が署名も押印もしていないのに、そのような書類が作られていたとすれば、単なる会計処理の間違いでは済まない。


 書状の最後には、エレオノーラ自身の考えが記されていた。


「レオン、私はこの支出を承認した覚えがありません。私の署名と印章があるというのなら、まず原本を確かめたいと思っています。誰が書類を作り、どのような手続きを経て支払いが行われたのか、家令と財務担当に説明を求めるつもりです」


 レオンは書状を読み終え、机の上へ置いた。


 今日、迷宮の地下10階で再会した老人からは、日本へ戻る道が存在することと、過去へ戻れる可能性があることを聞いた。


 前世の離婚をやり直せるかもしれないという話は、今でも信じられないほど大きな出来事だった。


 しかし、目の前にはエレオノーラが抱えている問題がある。


 今回の書状によって、公爵家の財務担当が、問題の支出には彼女自身の承認があったと説明していることまで分かった。


 それに対し、エレオノーラ本人は承認した覚えがないという。


 レオンは管理官へ、王都へ向かうための準備を頼んだ。


「エレオノーラ様の書類の確認が近いようだ。私も王都へ行って、直接話を聞きたい。もちろん、公爵家の帳簿を勝手に調べるつもりはないけど、彼女から相談を受けている以上、必要な手助けはしたいんだ」


「承知しました。王都へ向かわれるのでしたら、軍務局にもお立ち寄りになりますか。サルヴィ商会の件について、何か進展があるかもしれません」


「そうだな。ちょうどいい機会だから、軍務局でも話を聞いてみよう。王軍への納入妨害について、どこまで調査が進んでいるのか確かめたい」


 管理官は翌日の出発に備え、馬と護衛の手配を進めることになった。


 1人になったレオンは、老人から聞いた話を思い返した。


 日本へ戻る方法は、まだ完全に分かったわけではない。身体の適応が進めば、今とは違うことができるようになるかもしれないが、それも今後確かめなければならなかった。


 ただ、日本へ戻るとしても、今の世界で果たすべき責任を投げ出すつもりはなかった。


 レオンはエレオノーラから届いた書状をもう一度読み、返事を書くことにした。


「書類の確認には、私もできる限り協力します。あなたが承認した覚えのない支出については、原本を見たうえで詳しい事情を確かめる必要があると思います。私も王都へ向かいますので、まずは会って話したいと思っています」


 返書を書き終えると、レオンは封をして管理官へ預けた。


 エレオノーラがこれから何を選ぶのか、それは彼女自身が決めることだ。


 ただし、自分の財産を知らないうちに使われていたのだとすれば、黙って受け入れる必要などない。


 レオンは、彼女が納得できるまで調べられるよう、できる限りの協力をするつもりだった。


 そのうえで、アルベルトとセシリアが不正に関わっていたことが明らかになれば、相応の責任を取らせなければならない。


 かつて日本で高瀬真理子を裏切った2人が、こちらの世界でも同じように人の人生を踏みにじっているのだとすれば、今度は黙って見過ごすつもりはなかった。


 レオンは机の引き出しから、前夜に描いたタロットカードの絵を取り出した。


 旅人が崖の近くに立ち、その足元には犬がいる。


 昨日までは、なぜこんな絵柄が迷宮にあるのか分からなかった。しかし、今ではそのカードが、懐かしい恩師との再会につながっている。


 日本へ戻る道があると知ったことで、前世の離婚をやり直せるかもしれないという希望も生まれた。


 だが、今はまだ、その時ではない。


 レオンは描いた絵を引き出しへ戻し、エレオノーラからの書状を手に取った。


 翌朝には王都へ向かう。


 まずは、彼女の財産がどのように使われたのかを確かめなければならない。そして、そこに不正があったのなら、誰が責任を負うべきなのか、証拠を集めて明らかにするつもりだった。

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