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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第三章――「二つの世界の復讐」

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第3話(後編1)――「恩師との別れ」

 やがて、レオンは部屋の入口で待つ護衛たちのことを思い出した。


 すでに相当な時間が経っている。地下10階から地上へ戻るにも時間がかかるため、これ以上長居をすれば、領地の管理官たちにも心配をかけることになる。


「爺さん、そろそろ帰らないといけない。外には護衛も待っているし、領地の仕事も残っているんだ」


「そうか。子爵様は忙しいものだな。昔のように、客が来るまで茶を飲んでいるわけにもいかんか」


「爺さん、その言い方だと、私が日本で仕事をさぼっていたみたいじゃないか」


「さぼっていたとは言っておらん。客がいない時間には、しょっちゅうわしに占いを教えてくれと頼んでおっただろう」


「そうだったな。あのころは少しでも早く仕事を覚えたかったんだよ」


 レオンが立ち上がると、老人も椅子を離れた。


「今日の話は、わしも整理しておこう。お前の身体適応については、今までの経験だけでは分からんことが多い。こちらでも調べてみるから、また来るといい」


「それはありがたいけど、次はいつ扉が開くんだ? 今回は昨日の占いで今日の夕方に開くと分かったけど、毎日同じように開くとは限らないんだろう?」


「そうだな。お前の占術で、また開く時刻を調べてみろ。わしの方でも、次に訪ねてこられそうな時期を確かめておこう。ただし、無理に扉を壊そうとするなよ」


「そんなことはしないよ。鉱夫たちにも、勝手に掘り進めないよう指示してあるから安心してくれ」


 老人は卓の上のカードをまとめ、最初にレオンが見つけた「愚者」のカードを手に取った。


「こいつは、今日は役に立ったな。お前がこれを見つけてくれなかったら、せっかく扉が開いても、そのまま帰ってしまったかもしれん」


「爺さんも、なかなかやるじゃないか。私に分かるものを置いておいたわけだな」


「昔の弟子に気付いてもらうには、これが一番だと思ったんだよ。もっとも、カードを見つけたからといって、お前がここまで来るとは限らなかったがな」


 老人はカードを木箱へ戻した。


「次に来た時には、時間の移動についてもう少し詳しく話そう。その前に、お前自身もよく考えておくんだ。38歳の真理子へ戻って、本当に何をしたいのかをな」


「もう決めているよ。修一と沙也香の浮気をきちんと調べて、離婚の条件を自分で決める。そのためなら、今度は必要な金も使うし、人にも頼るつもりだ」


「それなら、わしも少しは力になれるかもしれんな。ただし、昔と同じように、何でもわしに相談すれば済むと思うんじゃないぞ」


「分かっているよ。爺さんには、占いを教えてもらっただけでも感謝しているんだ。それに、今日ここで会えただけでも嬉しかったよ」


 老人はレオンの言葉を聞き、少し照れくさそうに笑った。


「そういうことは、あまり真面目な顔で言うものじゃない。わしも年寄りだからな。弟子にそんなことを言われると、どう返せばいいか困るじゃないか」


「爺さんにも苦手なことがあるんだな」


「あるとも。特に、お前のように口の達者な弟子を相手にするのは苦手だよ」


 レオンは笑いながら、老人に別れを告げた。


 部屋の入口まで来ると、石の扉はまだ開いたままだった。外では護衛の隊長たちが待機しており、レオンの姿を見つけると近づいてきた。


「子爵様、ご無事で何よりでございます。中の調査は終わりましたか?」


「ああ。部屋の奥には、以前から私が知っている老人がいたんだ。危険な人物ではないし、少し事情を聞くこともできた。ただ、この場所にはまだ分からないことが多いから、勝手に調べたり、道具を動かしたりしないようにしてほしい」


 隊長は、部屋の中に人がいたことに驚いたようだった。


「その老人は、こちらへ出てこられるのでしょうか。必要であれば、我々がお話を伺うこともできますが」


「今のところは必要ないよ。本人もここを離れる予定はないようだ。私がまた会いに来るから、それまでは周囲の警備を続けてくれ」


 隊長は了承した。


 レオンは、部屋の中で老人が日本語を話していたことや、自分の前世を知っている人物であることまでは伝えなかった。護衛たちに説明するには、あまりにも込み入った事情だったからだ。


 レオンが扉から離れてしばらくすると、石壁の奥から再び重い音が聞こえてきた。


 振り返ると、開いていた扉がゆっくりと閉まり始めていた。


 鉱山技師は慌てて扉の動きを確かめようとしたが、レオンは近づかないよう指示した。


 左右の石は、開いた時と同じように一定の速さで動いている。やがて中央の継ぎ目が合わさり、最後には細い線を残すだけになった。


「見事なものですね。あれほど大きな石を動かしているのに、周囲の岩盤には何の異常もありません。やはり普通の建造物ではございませんな」


 鉱山技師は感心したように石壁を眺めた。


 レオンも改めて【探索Ⅱ】を使ってみたが、閉じた扉の向こう側を詳しく調べることはできなかった。能力が強化されたとはいえ、この石壁にはまだ分からないことが多いらしい。


「このままの状態で残しておいてくれ。次に扉が開く時刻は、私が占ってみる。周囲の採掘についても、石壁へ影響が出ない範囲で続けてほしい」


「承知いたしました。ここへは関係者以外を近づけず、引き続き見張りを置きます」


 レオンは石壁をもう一度見てから、護衛たちとともに地下10階を離れた。

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