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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

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第10話(中編)――「1,000人を動かせ」

 地下9階へ入ったのは、出発した翌日の午後だった。


 地下8階までの地図はできており、途中の物資置き場にも水や松明が用意されている。人数こそ多いが、移動そのものは以前より整っていた。


 地下9階は天井の高い岩場が続いている。


 石段の近くで見つかった灰黒色の鉱石は、奥へ進んでも何度か岩壁に現れた。


 鉱山技師が槌で一部を削った。


「これなら鉱脈と見てよいでしょう。石段の近くに少し出ていただけではありません」


「場所だけ記録しておけ。掘るのは討伐が終わってからだ」


 さらに進むと、白灰色の土が露出した場所があった。


 普通の粘土より硬く、火で炙っても形が崩れにくい。


 技師が試料を取りながら言った。


「これも持ち帰りたいですな。かなり火に強い土かもしれません」


「耐火粘土に近い物か?」


「その可能性があります。炉の内側へ使えるなら、鉄や銅だけでなくガラス工房にも役立ちます」


「試料を多めに採っておけ。戻ったら鍛冶屋とガラス職人にも見せる」


 金銀ほど目を引く資源ではないが、炉を高温に保てる材料が手に入れば、領内の加工技術を一段上げられる。


 技師が笑った。


「男爵様は、相変わらず金より土の方を喜ばれますな」


「金を掘っても、まともな炉がなければ加工できない。使える土なら金鉱と同じくらい大事だ」


 その日は地下9階の広い岩室を野営地に決めた。盾兵を入口側へ置き、食料と予備武器をまとめた場所から離して、負傷者を休ませる場所も確保した。


 日がない地下では時刻が分かりにくいため、地上から持ち込んだ水時計で時間を測った。


 夜半が近づいたころ、レオンはもう一度占った。


 地下10階から大量の魔物が上へ向かっている。大型の狼や猪、灰色の獣が地下9階を通り、一部は別の道へ分かれて地上を目指していた。


 巨大な黒褐色の魔物だけは、地下10階の奥に残っている。


 レオンは目を開いた。


「そろそろ来る」


 隊長が立ち上がった。


「ここで迎え撃ちますか?」


「ああ。9階から8階へ続く狭い通路を使う。全部を俺たちで止める必要はない。抜けた分は地上の400人が受ける」


 眠っていた兵を起こし、盾兵を通路いっぱいに並べた。


 弓兵はその後方、槍兵は盾の隙間から攻撃できる位置へ入れる。戦闘が長引くことを考え、最初から交代する部隊も決めた。


 やがて暗い通路の奥から、重なり合う足音が聞こえてきた。


 先頭に現れたのは大型の狼だった。その後ろから猪に似た魔物、地下7階で戦った灰色の獣、見覚えのない爬虫類まで続き、互いを押し合うように狭い通路へ殺到してくる。


「まだ撃つな」


 弓兵が弦を引いたまま待つ。


 先頭の狼が十分近づいた。


「放て!」


 矢が一斉に飛んだ。


 先頭が倒れると、後ろから来た魔物が死骸へ乗り上げる。その瞬間を狙って2射目を浴びせ、盾列まで届いた個体は槍で止めた。


 狭い通路では、一度に前へ出られる魔物の数も限られる。それでも数が多く、何度か盾列が押された。


「左の盾兵を交代させろ。弓兵は手前の死骸ではなく、その上へ乗った奴を狙え。槍兵も無理に前へ出るな」


 疲れた兵を順番に後ろへ下げ、予備隊と入れ替える。


 1時間近く戦うと、ようやく魔物の勢いが落ちた。


 地下9階だけで100体近く倒しているが、すべてが同じ通路へ来たわけではない。別の経路から上層へ抜けた群れについては、地上の部隊に任せるしかなかった。


 しばらくして、地下8階から伝令が来た。


「男爵様、地上からの報告です。迷宮入口に約150体が出ましたが、守備隊が防いでおります。別に30体ほどが街道へ抜け、村の守備隊と交戦中です」


「領民は避難させたか?」


「はい。占いの結果を受け、夕方までに村の外で働いていた者も全員戻しております」


「そのまま予定どおり守れ。森まで追う必要はないと伝えろ」


「分かりました」


 次の報告が届いた時には、入口へ出た群れはほぼ討ち取られていた。


 街道へ抜けた魔物も村へ入る前に止めており、領民の死者はいない。


 レオンが占いで見た夜襲は現実になった。


《占術が的中しました》

《天命が1つ満たされました》

《身体適応が進みます》

《能力【指揮Ⅳ】を獲得しました》


 視界から文字が消えると、離れた場所から届く報告を以前より素早く整理できる感覚があった。


 地下の300人、入口の400人、村と街道を守る300人。それぞれ別の場所で戦っていても、どこに余裕があり、どこへ予備兵を回すべきかを、一つの戦場として考えられる。


 隊長が尋ねた。


「このまま地下10階へ進みますか?」


「進まない。兵を休ませる」


「逃げた魔物を追えるうちに叩く手もあります」


「地下10階には大物が残っている。疲れた兵をぶつける方が危ない。夜明けまで休ませろ」


「分かりました」


 負傷者を地下8階の治療所へ戻し、武器と矢を補充した。


 翌朝、交代要員を加えて300人をそろえる。


 レオンは隊列の先頭に立った。


「地下10階へ行く。昨夜逃げなかった奴を倒すぞ」


 兵たちが武器を取り直した。

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