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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

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第9話(後編)――「朝までここに」

 エレオノーラの私室へ入ると、侍女が暖炉へ薪を足していた。


「今夜はもう下がっていいわ」


 侍女はレオンへ一度だけ目を向けたが、何も尋ねず一礼して部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 食堂では聞こえていた使用人たちの声も、ここまでは届かなかった。


 レオンが近づくと、エレオノーラはその場で待っていた。


 頬へ触れて唇を重ねると、彼女の腕が背中へ回る。何度か口づけを交わすうちに身体から緊張が抜け、抱き寄せれば素直に胸へ身体を預けてきた。


 エレオノーラが少し顔を上げた。


「ずっと、こうなるような気がしていたわ」


「俺もです」


 今度はエレオノーラの方から唇を重ねてきた。


 レオンは彼女を抱き寄せたまま、暖炉の火が揺れる部屋の奥へ進んだ。


 その夜、レオンは公爵邸を出なかった。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、窓の外がまだ青白いうちにレオンは目を覚ました。


 隣ではエレオノーラが眠っており、長い髪が枕の上へ広がっている。起こさないよう身体を起こしかけると、腕を掴まれた。


「もう行くの?」


「まだ寝ていたと思いました」


「今起きたの」


 エレオノーラは腕を離さず、そのままレオンを寝台へ引き戻した。


「外はまだ暗いでしょう」


「そうですね」


「なら、もう少しくらいいいでしょう」


 レオンが横になると、エレオノーラは肩へ額を寄せた。昨夜までより、その距離がずっと自然になっていた。


「何だか悔しいわ」


「何がです?」


「あなた、いつもと同じ顔をしているから」


「そんなに変な顔を期待されても困ります」


 エレオノーラが顔を上げ、笑った。


「やっぱり、そういうところは変わらないのね」


 レオンも笑い、彼女の髪を指で整えた。


 しばらく2人とも話さなかった。


 やがて朝の光が窓へ差し始めると、エレオノーラがレオンの胸元で口を開いた。


「昨日のこと、嫌ではなかったわ」


「俺もです」


 エレオノーラはそれを聞くと、また身体を寄せた。


 日が昇る前には出なければならない。


 レオンが服を整える間、エレオノーラも薄い上着を羽織って寝台を離れた。


 扉の前まで来たところで、彼女はレオンの手を取って引き止め、自分から唇を重ねた。


「次はいつ王都へ来るの?」


「10日ほどしたら戻る予定です」


「10日……」


「長いですか?」


 エレオノーラは答えず、もう一度短くキスをした。


「戻ったら来て」


「分かりました」


 ようやく手を離したエレオノーラは、名残惜しそうにレオンを見送った。


 レオンも頬へ一度触れてから扉を開けた。


 ◇ ◇ ◇


 その日の午後、軍務局へ出たレオンを待っていたのは、領地から届いた新しい報告だった。


 地下8階の銅鉱脈は、最初に確認した範囲よりさらに奥へ続いている。ガラス工房でも、以前より透明度の高い瓶を作れるようになったという。


 もう1通の書状は鉱山技師からだった。


 地下8階の銅鉱脈を調べていた者たちが、兵の護衛を受けて地下9階へ続く石段の周囲を確認した際、これまで見たことのない鉱石を見つけたらしい。


 書状には試料も添えられていた。


 手に取ると、小さいわりにずっしりと重い。表面は灰黒色で、欠けた部分には銀灰色の金属光沢が見える。


 鉱山技師によれば、これまで採った銀、金、銅のどれとも違い、用途もまだ分からないという。


「また何か出たのですか?」


 隣の机にいた軍務官が尋ねた。


「今度は正体不明です。かなり重い鉱石らしいですよ」


「あなたの領地は、掘るたびに何か出ますな」


「だから、まだ掘るんです」


 レオンは試料を布へ戻した。


 地下9階はまだ本格的に調べていない。その先には地下10階もある。


 ここまで来れば、鉱夫や技師を連れて少人数で覗く段階ではなかった。深くなるほど魔物も強くなっている以上、次の調査には相応の兵力と準備が必要になる。


 レオンは報告書の余白へ、必要な兵、食料、松明、治療用品、予備武器、荷運びの人数を書き始めた。


 王都で片付ける仕事を終えたら、いったん領地へ戻る。


 10日ほどしたら、再び王都へ来る予定もあった。


 公爵邸で待っている人ができたからである。

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