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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

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第9話(中編)――「公爵夫人の部屋」

 6月上旬、レオンは軍務局の仕事で王都へ戻った。


 グランツ公爵邸の東棟では、頼まれていた窓枠の交換と雨戸の取り付けが終わっている。エレオノーラから仕上がりを一緒に見てほしいという手紙が届いていたため、レオンは午後から屋敷を訪れた。


「前よりずっと良くなりました」


 東棟の客室へ入ると、エレオノーラは嬉しそうに新しい窓を開けた。


「雨の日にも水が入らなくなりましたし、閉めれば風もほとんど感じません」


「冬にならないと本当の差は分かりませんが、これなら以前よりはかなり良いでしょう」


 レオンが窓を開け閉めして具合を確かめている間も、エレオノーラはすぐ隣にいた。


 最後の窓を閉じたところで、彼女の指がレオンの袖へ触れた。レオンが振り向いても、エレオノーラは手を離さなかった。


 その手を取り、身体を引き寄せる。


 エレオノーラが顔を上げたところへ、そのまま唇を重ねた。


 最初にキスをした時のような驚きは、もうなかった。エレオノーラは目を閉じ、自然に手をレオンの肩へ回してくる。


 唇を離すと、彼女は赤くなった顔のままレオンを見た。


「今日は工事を見に来たのではなかったの?」


「もう見終わりました」


「では、帰ってしまうの?」


 レオンは答える代わりにもう一度口づけた。


 今度はエレオノーラの腕が首へ回り、先ほどより距離が近くなる。


 廊下から人の話し声が聞こえたところで2人は離れた。


 間もなく扉が叩かれる。


「奥様、お茶をお持ちしました」


「入って」


 侍女が入ってきた時には、レオンは窓のそばへ戻っていた。それでもエレオノーラの頬に残った赤みまでは隠せなかった。


 茶が置かれ、侍女が下がったあと、エレオノーラはカップを手にしたまま尋ねた。


「今夜は王都に泊まるのですか?」


「ええ。軍務局の近くにいつも使っている宿があります」


「そうなのね」


 声にわずかな物足りなさが混じった。


 レオンはそこには触れず、領地の近況を話した。ガラス工房が動き始めたこと、岩塩で作った保存肉を王軍へ納めていること、仕事を求めて移ってくる者が増え、新しい家を建てていることなどである。


 エレオノーラは以前より領地の話を聞きたがった。


「最初は、陛下からずいぶん貧しい土地を与えられたのだと思っていました」


「俺も最初の帳簿を見た時はそう思いました」


「今では金も銀も採れるのでしょう?」


「採れます。ただ、暮らしてみると塩や鉄の方がありがたい時もありますよ」


「そこがあなたらしいのね」


「もちろん金も好きです」


 エレオノーラが声を立てて笑った。


 レオンは、その笑顔を見るのがいつの間にか好きになっていた。


 最初はアルベルトの正妻であり、国王の妹だからこそ目を向けた。しかし何度も会い、話し、笑うところを見ているうちに、レオンはエレオノーラ自身にも惹かれるようになっていた。


 夕方になり、レオンがそろそろ戻ろうと立ち上がると、エレオノーラも席を立った。


「もう帰るの?」


「夕食時まで居座るわけにもいかないでしょう」


「今日はアルベルトはいません」


 レオンは足を止めた。


「王都を離れているのですか?」


「3日ほど出ています。戻るのは明後日の予定です」


 エレオノーラはそれだけ言った。


 レオンも理由を聞かなかった。


 代わりに彼女の手を取ると、エレオノーラの指が自分から絡んできた。


「それなら、夕食をご馳走になってもいいですか?」


「ええ。そうして」


 その夜は大きな食堂を使わず、エレオノーラが普段食事を取る小さな部屋に2人分の料理が用意された。


 給仕が下がって食事が終わるころには、卓上に葡萄酒だけが残っていた。


「顔が赤いですよ」


 レオンが言うと、エレオノーラはグラスを見た。


「まだ1杯しか飲んでいません」


「では、酒のせいではありませんね」


 目が合うと、エレオノーラが先に笑って視線を落とした。


 レオンは向かいの席から立ち、彼女の隣へ移った。


 肩を抱くと、エレオノーラは何も言わず身体を寄せてくる。


 昼よりも長い口づけを交わした。


 エレオノーラの指が髪へ入り、唇が離れても胸元に顔を寄せたまま動かない。


「レオン」


「はい」


「今夜……」


 言葉はそこで止まった。


 レオンは腰へ腕を回し、エレオノーラを立たせた。


 彼女はレオンの手を取ると、そのまま私室へ続く廊下へ歩き始めた。

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