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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

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第8話(中編)――「窓ガラスを作れ」

 地下7階の岩塩は、食用にできることが確認された。


 レオンは採掘量を急に増やさず、まず領内で使う分を優先した。


 肉を塩漬けにし、皮革職人にも回す。家畜へ与える分には、人が食べるほどきれいな部分を使う必要がないため、選別した残りも無駄にならなかった。


 余った塩は町へ売った。


 秋には王軍から、保存肉を試験的に納めてほしいという話まで来た。


 迷宮の塩が、領民の食卓から軍の兵站までつながったのである。


 8月下旬、レオンは地下8階の調査へ進んだ。


 今回は兵80人を連れている。


 階段を下りたところで、鉱山技師が床に広がる白っぽい砂へ目を留めた。


 壁には半透明の石も混じっている。


「石英ですな」


「ガラスに使えますか?」


「細かく砕いて不純物を減らせば、原料にはなるでしょう。実際に使えるかはガラス職人に見てもらう必要があります」


 試料を集めさせた。


 この世界にもガラスはある。


 王宮や大貴族の屋敷にはガラス窓があり、薬師も薬を入れる小瓶を使っている。ただし透明度の高いガラスや大きな板ガラスは高価だった。


 領地で材料を採れるなら、薬草を売るための瓶を自分たちで作れるかもしれない。


 さらに奥では、岩壁に緑色を帯びた部分が現れた。


 鉱山技師が槌を入れ、欠片を調べる。


「銅を含んでいる可能性があります」


「銅まで出ますか」


「まだ断定はできません」


 銅なら鍋、金具、装飾品にも使える。鉄ほど硬くはないが加工しやすく、細い管や器具にも向いている。


 前世の知識では、錫を混ぜれば青銅を作れることも知っている。


「錫まで出ればありがたいんですが」


「男爵様、この迷宮に少し期待しすぎではありませんか?」


「今までが出来すぎていますからね」


 その日は銅らしい鉱石と石英を持ち帰った。


 王都で調べたところ、鉱石からは実際に銅が取れた。


 石英についてはガラス職人を領地へ呼び、試作を始めた。


 最初に作った物は色が濃く、気泡だらけだった。


 2回目も窓に使えるほど透明ではない。


 レオンは横から見ていたが、細かな作り方に口を出すことはしなかった。


 自分が知っているのは、珪砂や石英がガラスの材料になることくらいである。何年も炉を扱ってきた職人より詳しいはずがない。


 3回目に、小さな瓶ができた。


 少し青みはあるが、中身は見える。


 薬師が受け取って確かめた。


「薬を入れるなら十分使えます」


「では、まず瓶から作りましょう。板ガラスはその後でいいです」


 小さな窓用のガラスにも挑戦した。


 大きく平らな板を作るのは難しかったが、小さなガラスを何枚も枠へはめるなら使える。


 石英、石灰、燃料の石炭を同じ領地で用意できる。


 職人の方も、工房ごと移ってくることに興味を示した。


 秋になるころ、最大の村の外れにガラス工房が建ち始めた。


 春にはなかった煙突が増え、街道を荷車が行き交う。宿屋には商人や職人が泊まり、食堂も増えた。


 4つの村を合わせて約2,000人だった人口は、秋の帳簿で2,200人を超えている。


「半年で200人以上増えましたな」


 管理官は嬉しそうだったが、レオンは先に食料を確認した。


「冬を越せますか?」


「今年は水害が少なく、穀物にも余裕があります。岩塩のおかげで肉も以前より長く保存できます」


「なら来年の春までに家を100戸増やしましょう。人口が増えてから建て始めたのでは遅いです」


 仕事を増やせば人が来る。


 人が来れば家と食料が必要になる。


 新しい住民が物を買えば、商人も増える。


 迷宮で見つけた資源は、それぞれ別々に存在しているのではなかった。


 鉄が農具になり、石炭が炉を動かし、石灰や煉瓦が家を造る。塩は食料を保存し、石英はガラスになり、銅は新しい工房を呼び込む。


 領地が少しずつ、村の集まりから町へ変わろうとしていた。


 ◇ ◇ ◇


 秋が深まったころ、レオンは王都へ戻った。


 軍務局の仕事に加えて、公爵邸の東棟を確認する約束があったからである。


 エレオノーラは以前より気軽にレオンを迎えるようになっていた。


「今度は窓を直せばよいのですよね?」


「まずそこからです。アースチューブを増やすより、隙間風を止める方が先でしょう」


「あなたに聞くと、何でも大工事にしなくて済むのですね」


「高い工事をすれば偉いわけではありませんから」


 エレオノーラは笑った。


 以前より、2人だけで話す時間も増えている。


 それでもレオンはまだ踏み込まなかった。


 その年も、残りわずかだった。

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