第6話(中編)――「今度は金だ」
翌朝、レオンたちは再び地下4階を通り、地下5階へ下りた。
階段の先で通路は左右に分かれている。
【探索Ⅰ】で確かめると、右側には魔物の足跡が多く、左側には人間より大きな何かを引きずったような跡が残っていた。【魔物察知Ⅰ】も両方から反応している。
「左右へ進んだ場合に何があるのか、先に見てみます」
レオンはそれぞれの道を進んだ未来を占った。
右へ向かった場合は、狭い岩場で何頭もの魔物と戦っている場面が見えた。その先に目立った資源は見えない。
左側では、2頭の大きな黒い獣と戦ったあと、白っぽい岩壁を鉱夫たちが掘っていた。砕かれた石の中には、黄色く光る粒が混じっている。
「左へ行きます。途中に大きな熊のような魔物が2体います」
隊列を組み直し、弓兵を前方へ移した。
300歩ほど進むと、低い鳴き声が通路へ響いた。
松明の先に黒い巨体が現れる。
四つ足でも人の胸ほどの高さがあり、立ち上がれば2メートルを大きく超える。太い前脚には長い爪があった。
その後ろから、もう1体も姿を見せた。
「弓兵は顔と前脚を狙え! 盾兵は正面から受けるな!」
矢を受けた1体目が走り出す。
兵は通路の中央を空け、左右へ分かれた。
熊が横を通り抜けるところへ槍兵が脇腹を突くが、厚い毛と脂肪に阻まれて深く入らない。
熊が振り向き、槍兵へ爪を振った。
【反射Ⅱ】のおかげで、レオンにはその動きが以前よりよく見えた。爪が届く前に兵の肩を掴み、後ろへ引く。
「前脚を狙ってください! 立てなくしてから首へ入れます!」
弓兵が矢を集め、反対側から槍兵が脚を突いた。
熊が姿勢を崩したところへ盾兵が横から押し、倒れた巨体へ槍が入る。
2体目も同じように囲み、10分ほどで戦闘は終わった。
負傷者は5人だったが、重傷者はいない。
隊長は倒れた熊の毛を確かめた。
「この毛皮なら高く売れそうです」
「持ち帰りましょう。肉や脂も使えるか、村の人に見てもらいます」
魔物を倒して終わりではない。
食べられるなら食料になり、皮や骨、角、脂に使い道があれば、それも領地の資源になる。
占いで見た白い岩壁は、さらに200歩ほど先にあった。
鉱山技師が槌を入れると、割れた石の断面に細かな黄色い粒が混じっていた。
技師は別の場所からも試料を採った。
「金の可能性があります。似た色の鉱物もあるので、王都へ持ち帰って確認しましょう」
「同じ物がどこまで続いていますか?」
数か所を調べると、黄色い粒を含む岩は通路の両側へ続いていた。
レオンは、目の前の鉱脈を採掘した場合の未来を占った。
鉱石を運び出す者の周囲には兵が付き、採った量をその場で帳簿へ記録している。精錬所では黄色い金属が取り出され、それを受け取る時にも複数の者が量を確かめていた。
金である可能性はかなり高い。
ただし、まだ実物を精錬して確認したわけではない。
「試料だけ持ち帰ります。ここは確認が取れるまで掘らないでください」
技師が少し驚いた。
「銀より価値が高い物かもしれませんが、よろしいのですか?」
「だから先に警備を決めます。金が採れると広まれば、許可なく入ろうとする人間も出るでしょう」
地下5階へ入れる者は許可制とし、採掘を始める場合も人数を固定する。地下4階には番所を設け、銀や金を運ぶ際には、採掘した量と外へ出した量を毎回記録することにした。
鉄や石灰石なら多少こぼれても領地が傾くことはない。
金と銀は同じようには扱えなかった。
帰る途中、技師が岩壁の一部を指した。
「こちらには粘土質の層があります」
レオンも足を止めた。
「焼き物に使えますか?」
「種類によりますが、煉瓦や陶器に使える可能性はあります。石灰と組み合わせた建築材についても、窯を扱う職人に相談した方がよいでしょう」
「試料を持って帰りましょう」
銀や金ほど目立たないが、煉瓦を領内で作れるようになれば、倉庫、工房、炉、家の建設にも使える。
金銀を掘って売るだけより、そちらの方が長く役に立つかもしれなかった。




