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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

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第5話(前編)――「30人で入れ」

 3月下旬、レオンは王都の軍務局で、領地の岩山から持ち帰った2種類の石を調べてもらっていた。


 向かいにいるのは王家に仕える鉱山技師である。50歳を過ぎた男は、黒い石を割って断面を確かめたうえで、小さな炉を使って性質を調べていた。


「黒い方は石炭です。質も悪くありません」


「やはり燃料に使えるんですね」


「使えます。薪より強い火が必要な炉には向いています。ただ、王都まで石炭だけを運んで売るより、鉄を加工する場所で使った方が利益は大きいでしょう」


 技師は赤茶色の石も手に取った。


「こちらは鉄を含む鉱石です。この欠片だけでは鉱脈の大きさまでは分かりません。同じ物が山の中にまとまってあるなら、採掘を考えてもよいでしょう」


「石炭と鉄の両方が採れるかもしれないわけですね」


「そうなれば便利ですが、まず量を確かめることです。地表に少し露出しているだけなら、採掘に人を入れても採算が合いません」


 レオンは机に置かれた2種類の石を見た。


 以前の占いでは、1年後の迷宮から同じ色の石を積んだ荷車が何台も出ていた。少量だけ採って終わる未来には見えなかったが、実際の鉱脈を確認するまでは安心できない。


「量については、迷宮へ入って調べます」


「ご自身で入られるのですか?」


「俺の領地ですからね。人を送り込む前に、中がどうなっているのか自分でも見ておきたいんです」


 技師は少し考えてから言った。


「それなら弟子を1人同行させましょう。鉱石を見慣れています。見つけた石をその場で判断するくらいなら役に立ちます」


「助かります。護衛はこちらで用意します」


 薬草を調べるため、軍務局を通じて薬師も2人紹介してもらった。


 迷宮内部へ入れる護衛の兵は30人とした。盾と槍を持つ歩兵12人、弓兵8人、剣や短槍を扱う兵10人である。そこへ鉱山技師の弟子1人、薬師2人、荷運びに慣れた領民4人、レオン自身が加わる。


 迷宮の外には別に兵50人を置く。内部で問題が起きた場合の救援だけでなく、迷宮から出た魔物を村へ向かわせないためでもあった。


 王都を発つ前に、レオンは国王へも予定を報告した。


「今度は迷宮へ入るのか」


「領地の中にある以上、何があるのか調べないわけにはいきません」


「魔物を討って男爵になったと思えば、今度は鉱山主にでもなるつもりか」


「金になる山なら、掘らない方がもったいないでしょう」


「お前ならそう言うと思った」


 国王は止めなかったが、条件を付けた。


「領地の開発はお前に任せる。ただし、王直属の士官が迷宮の奥で死んだなどという報告は聞きたくない。危険だと思えば引き返せ」


「今回は浅い場所を調べるだけです。最初から奥まで行くつもりはありません」


「その言葉どおりにしておけ」


 ◇ ◇ ◇


 4月上旬、レオンは再び迷宮の入口に立った。


 岩山の雪はほとんど消え、斜面には黒い土が見えている。入口を囲う木柵の内側には以前より大きな天幕が建てられ、兵の詰所と物資置き場も用意されていた。


 松明と油、水、食料、縄、予備の武器、担架を確認してから、レオンは内部へ入る者を集めた。


「今回は浅い場所の調査が目的です。鉱石や薬草を見つけても隊列から離れないでください。魔物が逃げても追いません」


 採掘に詳しい者と薬師、荷運びを担当する領民は兵の中央へ置く。前後は兵が守り、戦闘になった場合も非戦闘員を動かさないことにした。


「薬草を見つけた場合も、採りに行く前にお知らせします」


 薬師が確認すると、レオンは頷いた。


「お願いします。珍しい薬草を1本採るために死人を出したら、採算が合いませんから」


 準備を終え、一行は迷宮へ入った。


 入口から数十歩も進むと、外の光はほとんど届かなくなった。松明が照らす岩壁には自然にできた凹凸がある一方、ところどころに人の手で削ったような平らな面も見える。


 100歩ほど進んだところで、通路が左右に分かれた。左は狭く、右は人が3人並べるほどの幅がある。


 レオンが【魔物察知Ⅰ】へ意識を向けると、どちらにも反応があった。左側はわずかだが、右側には複数の魔物がいる。


「右にかなりいます」


 隊長が地図を持ったまま尋ねた。


「魔物の少ない左を先に調べますか?」


「右へ進んだ場合を占ってみます。少し待ってください」


 占いに現れたのは、松明を持った兵が広い場所へ入っていく光景だった。


 前方には魔物の姿がない。


 ところが兵が広間へ入った直後、天井近くの岩陰から灰色の影が落ちてきた。大きな蜥蜴に似た魔物で、正面だけではなく後方にも回り込んでくる。前に注意を向けていた兵の肩へ、上から噛みつく姿まで見えた。


 レオンは占いを終えた。


「右へ行きます。ただし、広い場所へそのまま入ると天井から襲われます」


「上に隠れているのですか?」


「何体もいます。広間へ出る前に天井を照らし、見つけたものから弓で落としてください」


 弓兵を前方へ移し、松明も増やした。


 しばらく進むと、占いで見たとおり通路が広がった。地面には何もいないが、弓兵が松明を高く掲げると、天井近くの岩陰で灰色の身体が動いた。


「上です!」


「射て!」


 矢が一斉に飛んだ。


 甲高い鳴き声とともに大蜥蜴が落下し、それをきっかけに天井から6体、前方の岩陰からさらに5体が飛び出してきた。


「盾兵は前へ! 後ろはその場を動くな!」


 12人の歩兵が盾を並べ、その間から槍を構えた。


 大蜥蜴が飛びかかってくると、前列が盾で勢いを受け止め、後列が首や腹へ槍を突き込む。天井に残った魔物には弓兵が矢を集めた。


 待ち伏せされる場所も攻撃の方向も分かっていたため、戦いは長引かなかった。


 すべての大蜥蜴を倒した時点で、負傷者は2人だった。どちらも軽傷で、自力で歩ける。


 その時、レオンの視界へ文字が現れた。


《占術が的中しました》

《天命が1つ満たされました》

《身体適応が進みます》

《能力【探索Ⅰ】を獲得しました》


 能力を得てから周囲を見ると、足跡、爪痕、糞、岩陰の広さといった、それまで見落としやすかった痕跡が目につくようになった。


 【魔物察知Ⅰ】が魔物そのものの方向を捉える能力なら、【探索Ⅰ】は、魔物がどこを通り、どこに潜みやすいのかを判断する助けになるらしい。


「この大蜥蜴が出入りしていた場所も分かります。先へ進みましょう」


 広間の奥には、さらに下へ続く石段があった。

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