↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/94

第3話(前編)――「今度の敵は魔物だ」

 1月下旬、レオンは王宮軍務局の会議室へ呼ばれていた。


 卓上の地図には、王都から西北へ馬で5日ほどの場所にある王領が示されている。山と森林が多く、平地には4つの村があり、合わせて2,000人ほどが暮らしていた。


 軍務官が報告書を開いた。


「年が明けてから、この一帯で魔物の被害が急に増えている。最初は森の近くで羊や豚が食われる程度だったが、今月に入ってからは村へ入るようになった。死者は3人、森へ入った猟師も2人戻っていない」


「どんな魔物が出ているのですか?」


「一番多いのは灰狼だ。普通の狼より二回りほど大きく、群れで人間を襲う。それに大猪も確認されている。最後に届いた報告には、森の奥でオーガを見たとある」


 レオンは地図から軍務官へ目を移した。


「灰狼、大猪、オーガが同じ場所にいるんですか?」


「それが妙なのだ。灰狼が群れを作ることも、大猪が数頭で動くことも珍しくはない。しかし種類の違う魔物が互いに争わず、続けて同じ地域の村を襲う例は少ない」


「討伐隊はもう出しているのでしょう?」


「2度出した。最初は80人、次は150人だ。どちらも村の周辺から追い払うところまでは成功したが、森へ逃げられると見失った。2回目は追撃した部隊が逆に囲まれ、12人が負傷している」


 ここまで黙って聞いていた国王が口を開いた。


「そこで、今回はお前に任せる」


「俺が行くのは分かりました。兵は何人いただけるのですか?」


「600人だ」


 前回より100人増えている。


「ずいぶん増えましたね」


「500人を動かして荷車を1台も失わなかったのだ。次は600人を使ってみろ」


「分かりました。600人でお願いします」


「ためらわんのだな」


「少ない方が楽とは限りません。使える兵が増えるなら、その分だけやり方も増えます」


 国王は満足そうに軍務官を見た。


「編成を教えてやれ」


 用意されるのは歩兵350人、弓兵150人、騎兵100人だった。前回のような大規模な輸送隊ではなく、目的は魔物の討伐そのものである。


 レオンは地図を引き寄せた。


 4つの村の西側に大きな森林があり、その奥は山地になっている。森の中には何本か小川が流れ、北側には岩山に挟まれた細長い谷があった。


「俺が着くまで、村の兵には森の奥へ入らないよう命令を出してもらえますか?」


 軍務官が理由を尋ねる。


「村へ出てきた魔物を追い払うのは構いません。ただ、逃げた魔物を森の中まで追うのはやめた方がいいです。前の討伐隊と同じ戦い方をしても、また同じことになります」


「住民はどうする?」


「家畜はできるだけ村の柵の内側へ集めてください。避難が必要かどうかは、現地を見てから決めます」


 国王が地図を指した。


「今ここで、魔物の居場所を占うことはできないのか?」


「試すことはできます。ただ、森の形も地面の様子も分からないので、現地で占った方がはっきり見えると思います」


「ならば行ってこい。必要な物があれば軍務局へ申し出ろ」


「分かりました」


 レオンは地図を畳む前に、北側の谷をもう一度確かめた。


 600人もの兵を森の中へ入れ、灰狼を追い回すのは得策ではない。森での戦いが魔物に有利なら、別の場所で戦えばよい。


 そのためにも、まず群れの居場所と動きを知る必要があった。


 ◇ ◇ ◇


 5日後、レオンたちは4つの村の中で最も大きな集落へ到着した。


 西北へ進むにつれて山が近くなり、街道の両側には針葉樹の森が続くようになった。村の家々は木と石で造られ、周囲には人の胸ほどの高さの柵が巡らされている。


 村外れの畑には冬の間ほとんど作物がなく、牛や羊もすでに柵の内側へ移されていた。


 レオンは村の代表者と猟師を集め、これまで魔物が出た場所を地図へ書き込んでもらった。


「最初に灰狼が現れたのは西の森です。その数日後には南側から来ました。大猪が畑へ入ったのは、こちらです」


 年配の猟師が地図を指した。


「オーガを見た場所も教えてください」


「森のかなり奥です。私は遠くから見ただけですが、3体はいました。近くに灰狼が何頭もいたのに、互いに襲っておりませんでした」


「普段からオーガと灰狼は一緒に行動するものなのですか?」


「少なくとも私は見たことがありません」


 目撃場所を地図へ落としていくと、魔物が山側に多いことが分かった。北の谷の周囲には大きな獣道もあり、複数の魔物が繰り返し通っているらしい。


「明日の朝、森の縁を案内してもらえますか。奥まで入るつもりはありません」


「それでしたら私が行きます。兵の方も何人か連れてください。今の森へ少人数で近づくのは危険です」


「もちろんです」


 翌朝、レオンは騎兵20人と猟師2人を連れて森へ向かった。


 雪の残った地面には、多くの足跡が重なっている。


 灰狼と思われる大きな肉球の跡、大猪の蹄、その近くには裸足の人間を何倍にもしたような足跡も残されていた。


「これがオーガです」


 猟師が示した跡は、レオンの足よりはるかに長い。


「実際に見ると、かなり大きそうですね」


「大人のオーガなら、人間の倍近い背丈になります。腕も太い。まともに殴られれば鎧を着ていても危険です」


「それなら、まともに殴り合わないようにします」


 レオンは森を眺めながら占いを始めた。


 知りたいのは、次に魔物がどこへ現れるかである。


 最初は何も見えなかった。


 森の縁を少し移動し、地図と実際の地形を見比べた後、もう一度意識を集中させる。


 今度は夜の森が見えた。


 灰狼が木々の間を走っている。その後ろを何頭もの大猪が進み、さらに奥には複数のオーガがいた。


 別々に動いているわけではない。


 群れの中央付近には、ほかのオーガより明らかに大きな1体がいる。右肩から胸へ斜めに古い傷があり、その個体が進む方向へ、灰狼も大猪も動いていた。


 光景はさらに先へ進む。


 群れが森を抜け、北寄りにある小さな村へ向かっていた。


 明日の夜である。


 進んでくる方向も分かった。北西の森から村へ近づく。


 そこで占いは途切れた。


 レオンは猟師たちへ向き直った。


「次に狙われるのは北の村です。明日の夜、北西から来ます。それから、右肩から胸に大きな傷のあるオーガを探してください。あれが群れをまとめているように見えました」


 猟師は驚いた。


「オーガが灰狼や大猪まで率いているということですか?」


「本当に命令しているのかまでは分かりません。ただ、あの個体が動くと、ほかの魔物も一緒に動いていました」


 レオンは地図を開き、北の村と谷の位置を確かめた。


 村へ向かう群れの横から圧力をかければ、谷の方へ進路を変えられるかもしれない。


 前の討伐隊のように、森の奥へ魔物を追う必要はない。


 戦う場所はこちらで選べばよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。