↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第二章――「王都の寵児」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/93

第2話(前編)――「500人を預ける」

 王直属の特任士官になって5日後、レオンは朝食を終える前に王宮軍務局から呼び出された。


 宿舎へ来た使者によれば、すぐ軍務局へ出頭せよとの命令である。レオンは残っていたパンを食べ、水を飲んでから剣を腰へ下げた。


 軍務局の会議室では、大きな地図を前に数人の将校が話し合っていた。その中には国王の姿もある。


 レオンが礼をすると、国王は地図の西北部を指した。


「レオン、仕事だ」


「今度は占いだけではなさそうですね」


「その通りだ。お前には兵を率いてもらう」


 国王に促され、軍務官が事情を説明した。


 王都から西北へ4日ほど進んだ場所に、王国軍の大きな駐屯地がある。冬の食料、矢、予備の弓、馬の飼葉、薬などを補給するため、荷車62台を王都から送ることになっていた。


 ところが、その街道周辺で大規模な武装集団が確認されているという。


「確認されている人数はどれくらいですか?」


 レオンが尋ねると、軍務官は報告書を確かめた。


「200から300ほどと見られている。ただし、一つの集団なのか、いくつかに分かれて動いているのかまでは分からん。普通の盗賊にしては人数が多い」


「荷車62台なら、襲う側にも狙うだけの価値がありますね」


「そのために護衛を付ける。今回は、お前に500人を預ける」


 レオンは地図から顔を上げた。


「500人ですか」


「多すぎるか?」


「逆です。俺にそこまで預けてよいのかと思っただけです。200人なら率いたことがありますが、500人は初めてです」


「ならば覚えろ」


 国王はそれで話が済んだという顔をしていた。


「先日の模擬戦では、300人の動きを見て勝敗を当てた。今度は自分で500人を動かしてみろ。お前が未来を当てるだけの占い師なのか、それとも兵を任せられる軍人なのか、私も確かめたい」


 レオンは、自分が試されていることを理解した。


「分かりました。やります」


「兵の内訳を説明してやれ」


 国王から話を引き継いだ軍務官は、歩兵300人、弓兵120人、騎兵80人を用意していると説明した。さらに荷車には御者や荷役、修理を担当する者が約100人付くため、実際に街道を移動する人数は600人を超える。


「出発は明朝ですか?」


「その予定だ」


「それなら今日中に兵と荷車を確認させてください。積んでいる食料と飼葉の量も見ておきたいです」


 軍務官はレオンを見た。


「敵の情報より先に、そちらを確認するのか?」


「敵のことも聞きます。でも500人と荷車62台を4日間動かすなら、戦う前に食料や飼葉が足りなくなる方が困ります」


 国王が笑った。


「最初から兵站を見るか」


「腹を減らした兵や馬を連れて戦いたくありませんから」


「好きに調べろ。ただし出発は明朝だ。準備のために遅らせることは認めん」


「分かりました」


 会議が終わると、レオンはそのまま王宮近くの兵営へ向かった。


 兵営では500人の兵がすでに出発準備を始めていた。歩兵は槍や盾を確かめ、弓兵は矢筒の中身を揃え、騎兵は馬具を点検している。少し離れた場所には62台の荷車が並び、袋詰めの穀物や干し肉、塩、矢束、薬、飼葉などが積み込まれていた。


 レオンは、部隊を直接動かす5人の百人隊長を集めた。


 全員が30代から40代で、17歳のレオンよりはるかに長く軍務に就いている。年齢だけを見れば、誰が全体の指揮官なのか分からないような顔ぶれだった。


「明日から俺が全体を預かります。ただ、500人全員へ俺が直接命令するつもりはありません。それぞれの隊は、これまでどおり皆さんが動かしてください」


 隊長の1人が確認した。


「従来の編成をそのまま使うということでよろしいのですか?」


「大きくは変えません。ただし騎兵80人は40人ずつ前後に分けます。弓兵についても一か所へ固めず、前と後ろの両方へ置きたいと思っています」


「その配置にする理由を伺っても?」


「武装集団がどこから襲ってくるか、まだ分かっていません。これから占いでも確認しますが、見てもいない敵を決めつけて編成を崩すより、今はどちらにも対応できる形にしておいた方がいいでしょう」


 別の隊長がレオンを見た。


「ハルベル伯爵領で200人を率いたという話は聞いております」


「今回は500人です。俺にとっても初めてですよ」


 知らないことまで知っているふりをする必要はない。日々の兵の扱いなら、目の前の百人隊長たちの方が自分より詳しい。


「兵の普段の扱いについては、皆さんの経験を頼りにします。俺は部隊全体をどこへ進ませ、どこで戦うのかを決めます。判断がおかしいと思った時は遠慮なく言ってください。ただし、戦闘が始まって命令を出した時は、すぐに動いてもらいます」


「承知しました」


 5人の返事を聞いたあと、レオンは荷車の確認へ移った。


 62台のうち最も多いのは軍用食料を積む荷車で、ほかに矢や予備の弓、薬や包帯、飼葉などを運ぶ車が続いている。


 【兵站Ⅰ】を得る前であれば、62台もの荷車に何がどれだけ積まれているのかを把握するだけでも苦労しただろう。今は積載量、兵500人と御者たちが食べる量、騎兵80頭の飼葉、街道を走る日数を順番に見ていけば、余裕のある物と不足しそうな物を整理できた。


「予備の車輪は何本積んでいますか?」


 荷車を管理する役人が帳面を確認した。


「8本です」


「12本まで増やしてください。縄も今の1.5倍は欲しいです。補修用の木材と蹄鉄も、もう少し積みましょう」


「かなり多くなりますが、本当に必要でしょうか?」


「荷車が4台しかなかった俺の商売でも故障はありました。今回は62台で4日以上走ります。何台か壊れる前提で考えた方がいいでしょう。余れば持ち帰れば済みますが、足りなければ積荷を捨てることになります」


「分かりました。追加します」


 必要な準備を終えた午後、レオンは街道の地図を前に占いを始めた。


 荷車62台と500人の護衛が、西北の駐屯地まで進む未来を意識する。街道のどこかには、200人を超える武装集団が潜んでいる。


 やがて、森に挟まれた街道が見えた。


 隊列の前方へ矢が飛び、兵たちが盾を並べている。道を塞いでいる武装集団は100人ほどだった。


 そこで意識を前方だけに向けず、荷車の後ろまで広げてみた。


 別の光景が現れた。


 先頭で戦闘が始まっている間に、木立から多数の男たちが飛び出している。こちらは150人を超えていた。狙っているのは護衛の兵ではなく、食料や武器を積んだ荷車である。


 さらに様子を追うと、最後尾を守っていた騎兵が前方の戦闘へ向かった直後に、本隊が森から出てくることまで分かった。


 前方の100人は、護衛を引きつけるための囮だった。


 レオンは目を開けた。


「敵は正面から襲ってきます。ただし、本当に荷車を奪うのは後ろから来る連中です」


 集まっていた百人隊長たちに、占いで見えた内容を説明した。


「この森で、前方に100人ほどが出ます。こちらが兵を集めて押し返そうとすると、後方から150人以上が荷車へ来る。敵は最後尾の兵が前へ動くのを待っています」


 隊長の1人が地図を見ながら言った。


「それなら、後方の兵を動かさなければ防げますな」


「防ぐだけなら、それでもいいでしょう。でも敵は、後ろが薄くなったと思わなければ出てきません。せっかく場所も狙いも分かっているなら、相手に予定どおり出てきてもらいます」


 レオンは地図上の森を指した。


「最後尾に見える兵の一部を前へ動かします。その代わり騎兵40人を街道から見えない場所へ隠し、弓兵40人も荷車の陰へ残す。敵が荷車へ近づいたところで、左右から叩きます」


「向こうの囮に乗ったように見せて、本隊の方を待ち伏せするのですな」


「そうです。正面の100人は追い散らすだけで構いません。本当に捕らえるべきなのは、荷車を奪いに来る方です」


 作戦が決まると、レオンは地図を畳んだ。


「明日は予定どおり出発します。敵がいるからと道を変えれば、また別の場所で狙われるだけです。来る場所が分かっているなら、こちらが先に準備して待ちましょう」


 5人の百人隊長は、最初に会った時よりも真剣な顔でレオンの話を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。