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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第一章――「貧乏士族の倅」

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第1話(後編)――「占いを当てれば強くなる」

 翌朝、レオンは家の裏で薪を運びながら、昨日得た【体力Ⅰ】を確かめていた。


 両腕に抱えた薪は、これまでのレオンなら途中で一度休みたくなる量だった。それが今は、家の裏から薪置き場まで続けて運んでも息が上がらない。


「本当に効いてるな」


 見た目には大きな変化がない。それでも疲れ方は明らかに違った。


 占いが当たると能力を得られ、身体への適応も進むらしい。


 まだ1度だけなので断定はできないが、少なくとも昨日はそうだった。


 薪を置いたところで、エルザが家から出てきた。


「レオン、銅貨を見なかった?」


「銅貨?」


「3枚、台所に置いたはずなの。薪を買うお金なんだけど、見当たらなくて」


 エルザは台所だけでなく、腰に下げた袋の中まで探したという。


 今のローデン家にとって、銅貨3枚はなくしても気にしないで済む金額ではない。


「母さん、ちょっと待って。占ってみる」


「昨日みたいに分かるの?」


「やってみないと分からない。でも探し回るより早いかもしれない」


 レオンは前世で客を占っていた時のように、知りたいことを1つに絞った。


 母がなくした銅貨3枚はどこにあるのか。


 しばらく待っても何も起こらない。


 昨日だけの偶然だったのかと思い始めたころ、頭の中に古い井戸が浮かんだ。石組みの縁と、その横に置かれた木桶が見える。


「井戸だ」


 エルザが聞き返した。


「裏の井戸?」


「たぶん。朝、水を汲みに行った?」


「ええ。そこで落としたのかしら」


「見に行こう」


 2人で家の裏へ回った。


 井戸の横には水を運ぶ木桶が置かれている。レオンが桶を動かすと、石の隙間で金属が光った。


「あった」


 拾い上げると、銅貨は3枚ともそろっていた。


 エルザは息子の手にある銅貨を見て目を見開いた。


「本当にあったわ。どうして分かったの?」


「占ったら井戸が見えた。それ以上は俺にも分からない」


 エルザが銅貨を受け取った直後、再び文字が現れた。


《占術が的中しました》

《天命が1つ満たされました》

《身体適応が進みます》

《能力【握力Ⅰ】を獲得しました》


 今度は驚いて声を出さなかった。


 家族には見えないものらしい。理由も分からない以上、むやみに話す必要もないだろう。


 レオンは右手を何度か開閉した。


 近くにあった太い薪を握ってみると、指が以前より強く木へ食い込んだ。木を砕けるほどではないが、握る力がはっきり増している。


「何をしているの?」


 エルザに聞かれ、レオンは薪を元へ戻した。


「ちょっと力が付いた気がしてさ」


「昨日から変なことばかり言うわね」


「俺もそう思うよ」


 痛みや体調の悪化はない。


 むしろ身体は軽くなり、力も増している。それ以上に気になったのは、この少年の身体に対する違和感が昨日より薄くなっていることだった。


 ◇ ◇ ◇


 昼になると、ゲオルグにも銅貨を見つけた話が伝わった。


「また当てたそうだな」


「今度はなくした物を見つけただけだけどな」


「昨日は事故、今日は銅貨か」


 ゲオルグは少し考えた。


「占い師というのは、皆そんなことができるのか?」


「できないよ」


 レオンは思わず即答した。


 ゲオルグが眉を上げる。


「なぜ言い切れる?」


「いや……普通の占いは、こんな感じじゃないと思うってこと」


 前世で自分も占い師だったと口にするところだった。


 未来が映像で見え、なくした物の場所まで分かるなら、以前の占い店で苦労することなどなかった。


 ゲオルグもそれ以上は追及しなかった。


「俺は占い師というものをあまり信用していなかったが、お前が西街道の事故を当て、母さんの銅貨まで見つけたことは事実だ。2度続けば偶然とも言い切れんな」


「俺もそう思ってる」


 そこへリナが身を乗り出した。


「兄さん、私も占って」


「何を占ってほしいんだ?」


「明日の夕食に肉が出るか」


 レオンは笑った。


「それは占いじゃなくて、肉を買う金があるかどうかだろ」


「じゃあ兄さんが稼いでよ」


「俺が?」


「占いが当たるんでしょう? お金をもらって占えばいいじゃない」


 レオンは妹を見た。


 12歳のリナに商売の知識があるわけではないが、言っていること自体は間違っていない。


 前世でも、占いをして金を受け取っていた。


 今の占いは、それよりはるかによく当たる。しかも的中するたびに、自分の身体まで強くなっている。


「そうだな」


 ゲオルグが息子を見る。


「何か考えがあるのか?」


「この占いが本当に使えるなら、金を取って占えばいい。町には失せ物で困ってる人もいるだろうし、商売のことで悩んでる人もいると思う」


「それで食っていけるほど客が来るのか?」


「やってみないと分からない。でも元手はほとんどかからないだろ」


 大きな金を持っていないなら、手元にあるものから始めればよい。


 前世で金に困った経験があるからこそ、そのくらいは分かる。


 ゲオルグが尋ねた。


「剣の稽古はどうする?」


「やるよ。士族なんだから必要だろ。でも剣だけじゃ、すぐには家の収入にならない」


「両方やるつもりか」


「ああ」


 ゲオルグはしばらく考えたあと、反対しなかった。


「なら明日から短剣の持ち方を教える。占いをするなら好きにしろ。ただし、士族の仕事まで忘れるなよ」


「分かった」


 リナが待ちきれない様子で尋ねた。


「じゃあ、お肉は?」


「まだその話かよ」


「大事だもん」


「分かったって。まず金を稼ぐ。それで肉を買う」


「いっぱい?」


「腹いっぱい食わせてやるよ」


 リナが笑った。


 エルザもつられて笑い、ゲオルグは呆れた顔で残ったパンを口へ運んだ。


 その光景を見ているうちに、レオンの中でやることが決まった。


 異世界へ来た理由も、男になった理由も分からない。今すぐ答えが出ないことを考え続けても仕方がない。


 この家には金がない。


 自分には当たる占いがある。


 なら、それを使って稼げばよい。


 その夜、寝台へ入ると淡い文字が視界に浮かんだ。


《占術的中数 2》

《身体適応は進行中です》

《次の天命を達成すると、新たな能力を獲得します》


 レオンは文字を読んだ。


 昨日より低い声に慣れ、男の身体を動かすことへの違和感も少し薄れている。


「当てるたびに、この身体になじんでいくのか……」


 問い掛けても返事はなかった。


 ただ、今のところ悪い変化ではない。体力が増え、握る力も強くなった。


 そして明日からは、占いで金を稼ぐ。


 レオンは寝台へ身体を横たえ、最初にどんな客を相手にすることになるのかを考えながら目を閉じた。

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