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48歳バツイチ占い師、異世界の貧乏士族の倅になる ~占いを当てるほど強くなる16歳の成り上がり~  作者: ひまえび
第一章――「貧乏士族の倅」

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第10話(中編)――「200人を率いる」

 12月半ば、伯爵領西部の村から早馬が城へ入った。


 領外から武装した集団が近づいているという。


 レオンが城へ呼ばれると、ハルベル伯爵と隊長はすでに地図を広げて待っていた。


「今回はどのくらいの兵を出すのですか?」


 レオンが尋ねると、隊長が答えた。


「敵は170から180人。お前には200人を預ける」


「百人隊長になったばかりですが、今回は200人を任せるのですか?」


 ハルベル伯爵が答えた。


「百人隊長だから100人までしか動かせないという決まりはない。80人を問題なく指揮したのだから、必要なら200人も使ってもらう」


「分かりました。人数が増えること自体に異論はありません」


「なら話が早い」


 武装集団は西の領外から入ってきた傭兵崩れで、馬を持つ者も多いという。


 狙いは西部にある大きな穀物倉と見られていた。冬を越すための麦や豆が大量に集められており、奪われれば数百人を長く養えるだけの食料を失う。


 隊長が地図を指した。


「正面の街道を使えば、この砦を通らなければならん。普通ならここを避けるだろう」


「砦を通らずに入れる道は、ほかにあるのですか?」


「北に川がある。今は浅いところまで凍っているが、大人数で渡るには危険だ」


 レオンは地図へ目を落とした。


 【軍略Ⅰ】と【地形把握Ⅰ】があるため、相手が選びそうな道は占う前からある程度絞れる。


 さらに川と武装集団の動きを意識すると、夜明け前の光景が頭の中へ浮かんだ。


 橋の近くでは30人ほどが松明を持ち、わざと目立つように動いている。


 本隊は橋にはいなかった。


 上流へ行ったところに浅瀬があり、100人を超える男たちが凍った川を渡っている。徒歩の者が先に渡り、そのあとから騎馬が続いていた。


 渡った先には低い土手と林がある。


「橋にいる連中は囮です」


 隊長が地図へ顔を寄せた。


「それなら、本隊はどこから入ってくるんだ?」


「橋より上流です。少し北へ行った浅瀬を使い、夜明け前に渡ってきます。橋には30人ほどしかいません。本隊は140人前後です」


 ハルベル伯爵が地図を見た。


「本隊の場所が分かったなら、どう迎え撃つつもりだ?」


 レオンは地形を確かめてから答えた。


「川を渡らせます」


 隊長が顔を上げた。


「川の中にいる間を狙う方が有利ではないのか?」


「そこで追い返すだけなら、逃げた連中がまた集まって戻ってくる可能性があります。今回は本隊の大半をこちらへ渡らせてから、戻る道を塞ぎます」


 レオンは地図へ指を置いた。


「弓兵40人を土手の裏へ隠します。徒歩兵100人は林の左右へ分け、騎馬60人はさらに南で待機させます。敵の本隊が川を渡って林へ入ったところで、騎馬を浅瀬の後ろへ回します」


「橋へ向かった30人には、どの程度の兵を当てるつもりなんだ?」


「20人だけ見張りに置きます。向こうが本気で攻めてこない限り追う必要はありません。本隊を先に崩します」


 隊長はハルベル伯爵を見た。


「俺もその配置でよいと思います」


「なら任せる」


 翌朝、レオンは200人を率いて西へ向かった。


 100人を超えると、隊列の長さもこれまでとは違う。兵だけではなく、馬、弓矢、食料、予備の武器、負傷者が出た場合に使う荷車まで準備する必要があった。


 【兵站Ⅰ】を得たことで、レオンは200人を動かすために必要な物資を以前より正確に見積もることができた。


 現地へ着くと部隊を4つに分け、それぞれを経験のある兵へ任せた。


「俺が200人全員へ直接命令する必要はない。各隊は自分の持ち場を崩さないでくれ。配置を変える必要が出た時はこちらから伝令を送る」


「了解!」


 夜になると、兵たちは林や土手の陰へ入り、火も最小限にした。


 レオンはブラウンから降り、川の方角を見ながら待った。


 夜半を過ぎたころ、橋の近くにいくつもの松明が現れた。


 見張りに出していた兵が戻ってくる。


「橋の方にも敵が現れました」


「何人くらいいる?」


「30人ほどです」


「予定通りだ。こちらからは手を出さず、そのまま見張ってくれ」


「了解」


 さらに時間が過ぎ、東の空がわずかに明るくなり始めたころ、上流から水と氷を踏む音が聞こえた。


「本隊が来た。各隊へ知らせろ」


 レオンは伝令を走らせた。


 敵の先頭が浅瀬を渡り、30人、50人とこちら側へ上がってくる。さらに後続が続き、100人を超えたところで、占いで見た大柄な男も馬に乗って川を越えてきた。


 集団の指揮官らしい。


 その時、レオンの視界に文字が現れた。


《占術が的中しました》

《天命が1つ満たされました》

《身体適応が進みます》

《能力【剣術Ⅱ】を獲得しました》


 これまで身に付いていた剣の感覚が、さらに明確になった。自分の刃が届く距離だけでなく、相手の構えから守りの薄い場所や次の動きまで読み取りやすくなっている。


 レオンは剣を抜いた。


「弓兵、撃て!」


 土手の陰から40人の弓兵が立ち上がり、敵の前方へ矢を放った。


 進軍が止まる。


「徒歩兵は左右から出ろ! 川へ戻すな!」


 林の両側から100人の兵が姿を現した。


「罠だ!」


「川へ戻れ!」


 敵の後方にいた者たちが浅瀬へ走ろうとする。


 その時には、南で待機していた騎馬60人が大きく回り込み、退路を塞いでいた。


「騎馬隊は浅瀬を押さえろ!」


 レオンもブラウンへ乗った。


 敵の指揮官らしい大柄な男が、20騎ほどを集めた。


「突破しろ!」


 敵の騎馬が一斉に走り出した。


 その先頭に立つ大柄な男が、レオンへ向かって剣を振り下ろす。


「小僧が!」


 レオンは正面から受けず、ブラウンを横へ動かして刃を外した。空を切った剣が戻ってくるところへ馬を寄せ、2撃目は剣の根元で受けて外へ流す。


 男の右腕が大きく開いた。


 レオンはその手首を剣の柄で打ち、武器を落とさせた。


 男が地面の剣へ手を伸ばそうとする。


 その前に、レオンの剣先が喉元へ向いた。


「もう終わりだ。馬から降りて武器を捨てろ」


「貴様……」


「周りを見ろ。これ以上戦っても部下が傷つくだけだ」


 男は周囲を見回した。


 浅瀬は騎馬兵に塞がれ、左右から伯爵家の兵が迫っている。すでに部下の多くが武器を捨て始めていた。


 男は抵抗を諦め、馬から降りた。


「武器を捨てれば命までは取らない! これ以上抵抗するな!」


 指揮官が捕らえられたことで、残る者たちも次々に剣や槍を地面へ置いた。


 戦いが終わった時には敵の大半が捕らえられ、暗いうちに逃げた者も、まとまった集団として再び戦える状態ではなかった。


 伯爵家側にも負傷者は出たが死者はなく、西部の穀物倉も守り切った。


 城へ戻った翌日、ハルベル伯爵はレオンを執務室へ呼んだ。


 卓上には大きな革袋が置かれていた。


「今回は銀貨400枚を出す」


「今回は銀貨400枚もいただけるのですか?」


「180人近い武装集団を壊滅させ、西部の穀物倉を守った。お前が失敗していれば、冬の食料を大量に失うところだった」


 レオンは革袋を持ち上げた。


「これだけ入っていれば、さすがに重いですね」


「今さら遠慮する必要はないぞ」


「遠慮するつもりはありません」


 隊長が笑った。


「そこだけは即答するようになったな」


「使い道がありますから」


「また商売へ回すつもりなのか?」


「商売にも使います」


 レオンは銀貨400枚を受け取った。


 百人隊長になって間もないというのに、今回はその倍に当たる200人を率いて大規模な武装集団を破った。さらに【剣術Ⅱ】まで得たことで、指揮だけでなく自分自身の戦う力も上がっている。


 すでに百人隊長という肩書きでは、レオンが任されている仕事を表し切れなくなっていた。

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