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僕だけが知る彼の裏側〜距離感ゼロの王子様  作者: 水波瀬 凪
距離感ゼロの王子様〜本編

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【最終話】距離感ゼロの王子様の隣にいるために

「みず……何す……んっ」


唇に何かが押し付けられた。


けれどそれはすぐに離れて、目を見開いて見上げるとすぐ間近に僕を見下ろす瑞樹の顔があった。


「何……したの、瑞樹」


すごい怖い顔で、瑞樹は僕を見てる。


「瑞樹…怒ってんの?」


「ごめん。どうかしてた」


僕の体を突き放すと、瑞樹はベッドに座り、僕に背を向けた。


僕もゆっくり体を起こしてベッドに座る。


そしてそっと、唇を指で触れた。


なんだったんだろ、今の。


あまりに一瞬で何が何だかわけがわからない。


「瑞樹……」


瑞樹のパジャマの背中を、くいっと引っ張った。


「何だよっ!」


振り返りざま怒鳴られ、不覚にも体がビクンとはねた。


「わ、悪い、大声出して。そんな顔すんなよ、悠人」


僕の背中に腕を回して、瑞樹が抱きしめてくれる。


一瞬、ちょっとだけ身を引きかけたけれど、僕はそのまま、黙って瑞樹の肩に頭を落とした。


「悠人……」


呼ばれて顔を上げると、瑞樹が僕の頬に手を当てた。


瑞樹の顔がゆっくりゆっくり近づいて来る。


大人しくされるがままになっていたら、瑞樹の唇が僕に重なった。


後頭部に手をかけられて、ぐっとひきよせられたら、もっとキスが深くなった。 


息が苦しくなって、瑞樹の背中に手を回して、パジャマを掴んだ。


やっと口が解放されたかと思ったら、瑞樹のキスが僕の首筋に移る。


くすぐったいような、気持ちがいいような、変な感じ。


「あ、や…嫌だ」


瑞樹の手が、僕のパジャマのボタンを外しかけた時、唐突に我に返った。


何してるんだ、いったい。


瑞樹は僕を友達と思っていたんじゃなかったの? 


それとも僕の気持ちに気付いて、同情でしてくれた?


僕は瑞樹の体を、両手でぐいっと引き離した。


すぐに瑞樹も我に返ったように、明らかに動揺を見せた。


「何これ、どういう事?」


「悠人だってノリノリだったじゃんかよ」


それは、好奇心ってこと? 


つい、ノリでキスしたら、僕も乗ってきたから。


「……ごめん、瑞樹」


穴があったら入りたいって、こんな気分を言うんだろうな。


「おまえが悪いのかよ。いきなり襲ったの俺の方だろ。謝るのは俺の方だよ」 


ふいに瑞樹に腕を掴まれ、思わず身をすくませた。


「そんな怖がるなよ、悠人。ごめん」


謝りながら、瑞樹の目がだんだん潤んでくる。 


「友情とか、親友とか、そんなのカムフラージュなんだよ。俺はキスとかその先とか、したいくらい悠人が好きなんだ」


何、言ってんの? 瑞樹。


「結構前に、悠人が好きって気付いて。で、他の誰より可愛いって思ってて、ずっとこんな風にしたくって。けど我慢して我慢して……」


瑞樹が…僕を…好き?


「こんなことしちゃってさ、今までの我慢は何だって……ホントマジでごめん」


瑞樹とキスをした。


そういうことがしたいくらい好きって、確かに言ったよね。


「瑞樹」


「何だよ、悪かったって言ってんだろ。気持ち悪いだろ、俺なんか」


「思ってないよ、瑞樹。僕も…たぶん、わかんないけど、瑞樹が好き」


こんな気持ち初めてだから、ちょっと自信がないんだけど……。


「何言ってんだ。同情かよ」


「違う。僕も瑞樹とキスとか、それ以上とかしたいくらい……好き、だよ」


さっき瑞樹にされたとき、嫌じゃなかったよ。


「何だよっ! 友達友達って強調しまくってたくせに」


「瑞樹だってしてたよ。友達なんだからって何度も言った。だから僕、言えなかった。友情が壊れるの、怖かったんだ」


「おまえ、男同士で付き合えないって言った」


「あの時は、先輩と何でもないって事をわかって欲しくて必死だったから」


「悠人っ」


まるで体当たりのような勢いで抱きつかれた。


「俺、もう死んでもいいっ」


「やだよ、瑞樹。死んだら嫌だよ」


「死なねーよ、例えだろ。死んでもいいくらい嬉しいってことだ」


「じゃあ僕も。死んでもいいくらい嬉しい」


「くっそー、早く言えよ。っつーか、早く告白すれば良かった」


そうしたら、無理だったかもしれない、と思った。


僕が気持ちに気付いたのって、さっきだもん。


もっと早くに告白されていたら、混乱したかもしれない。


「キスしよう悠人。両想いのキス」


ずっと前から瑞樹は好きだったって言ってくれた。


気付かなくてごめん。


僕が悩んで苦しんでた期間なんか、瑞樹に比べたら全然及ばない。


「キスしかしないからね、悠人」


チュッと短く唇に触れられた。


「どうして?」


「さっき嫌がっただろ? 脱がせようとしたとき、嫌だって悠人、言った」


「あれは、だって、瑞樹の気持ちなんか知らなかったし、怒って八つ当たりされてるみたいで怖かったから」


だから、今は全然怖くないし、嫌じゃない。


 




「だから今後一切、悠人に手を出すなよ」


部活が終わる頃、僕を迎えに来た瑞樹は、僕たちが付き合ったことを木原先輩に言った。


「で、これは何かな」


先輩の手には、瑞樹が出した入部届けがある。


「おまえが悠人に余計なことをしないように、見張っとくために入部するんだよ」


「いらないよ、こんなの」


僕たちの目の前で、先輩は瑞樹の書いた入部届けをビリビリと、破いた。


「ちょっ、何すんだよ!」


「キミは退部していないじゃないか」


悪戯っぽく先輩は笑うと、以前、瑞樹が渡した退部届けを目の前でヒラヒラさせた。


「休部届けを顧問に出しといたからね」


「勝手なことすんなよっ」


「ダメだよ瑞樹、こんな時は、先輩にありがとうございますって言うんだよ」


瑞樹の振り上げた腕を、僕は押さえて教えた。


「いい子だね、悠人」


先輩が、僕の頭を撫でた。


「悠人に触るなって言ったはずだっ」


「いいじゃん、これくらい。僕だって悠人が好きだったんだ。それをおまえにくれてやるんだ。少しくらいいいだろ。な、悠人」


少しならいいと思う。


だって、先輩が好きだって言ってくれたから、男同士でも恋愛出来るんだって知ったんだ。


恋に気付いたのは、先輩のおかげだから。


 



「ちょっと、待って瑞樹……」


先輩が帰った後、部室で着替えていると、何故だか変な展開になっていた。 


わけがわからないままどんどん脱がされて、戸惑う僕の言葉を聞いているのかいないのか、瑞樹の手は止まらない。


恋愛の経験値ゼロの僕は、瑞樹が次に何をするのかさっぱりわからない。 


されるがままでいいの?


「悠人、俺…こんなこと慣れてないし、要領悪いし、焦るし……」


下手くそでごめん、と瑞樹が謝る。


「そんな事ないよ。僕、瑞樹のキスとか気持ちいいし、僕が知らないだけできっとたくさん経験あるんだろうなって思ってたくらいだよ」


「あるかよ。悠人一筋なのに。俺、悠人がファーストキスだもん。それ以上なんか、全くの初心者なんだから」


そうだったんだ。と思うとかなり嬉しい。


普段、涼しい顔をして、汗なんかほとんどかかない瑞樹の額に、たくさんの汗を見つけた時、瑞樹が一生懸命なんだって知った。


「まあ、焦んなくても悠人は、ずっと俺の隣にいるんだよな?」


「いてもいいの?」


「いなきゃダメなんだってば!」


「うんっ。いる。ずっとずっと瑞樹の隣にいるからねっ」


僕は瑞樹に勢い良く抱きついた。


「約束だからな!」




〜とりあえずhappy end〜


読んでくれてありがとうございました。



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