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僕だけが知る彼の裏側〜距離感ゼロの王子様  作者: 水波瀬 凪
距離感ゼロの王子様〜本編

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3/11

【3話】僕の恋愛対象は女の子なので瑞樹の誤解なんですけど

「瑞樹、どうしたの、その顔!」


瑞樹の顔は、傷だらけになっていた。


瑞樹は、僕をチラッと見ただけですぐ目をそらし、僕を押しのけるようにして先に部室を出て行った。


瑞樹を追いかけて外に出たところで、葵につかまる。


「いろいろって瑞樹くんとケンカしたって事だった?」


相手は僕じゃない。


誰が瑞樹をあんなにしたの?


「すごい事になってるねぇ、長瀬」


「あ、先輩」


痛々しいね、と木原先輩は少し顔をしかめて、遠くの瑞樹をじっと見ている。


「先輩……じゃないですよね」


「…ったく…キミは、僕をなんだと思ってるの」


先輩はずっと僕といたんだっけ。


僕がスマホをもらいに行った時もちゃんと教室にいたし、瑞樹に危害を加える時間なんてない。


じゃあいったい誰?




部活が終わり、僕は散らばったボールを拾い集めていた。


いつもなら瑞樹も手伝ってくれるのに、今日はさっさと部室に戻っていく。


「相当怒ってるんだ、瑞樹」


ハァ…とため息をつきながら片付けていると、木原先輩が「手伝うよ」と言った。


「いいですいいです」


タマ拾いなんて雑用、部長の仕事じゃない。


「早く済ませて帰ろう。送って行くから」


別に送ってもらわなくても一人で帰れます、と言いたかったがやめた。


最後の一個を片付けて、部室に持って入ろうとしたとき、ちょうど着替えを終えた瑞樹が出てくるのに出くわした。


瑞樹は、僕と先輩を交互に見ると、あからさまにムッとした。


そして突き飛ばすようにして行ってしまう。


「いいよ、後は僕がやっとく。追いかけておいで」


先輩の好意に甘えて、僕は瑞樹を追って走った。


「瑞樹、待ってよ」


瑞樹は走ってたわけではないからすぐに追いついた。


「…なんだよ」


不機嫌ながらも一応振り向いてくれる。


「今日の昼休みの事なんだけど」


「ああ……。もういいよ」


「いいって、許してくれるってこと?」


「バーカ。勝手にすりゃいいだろって事。あいつと付き合うんだろ? 好きだったんだろ、良かったじゃん。で、俺のこと、邪魔なんだろうが」


「み…瑞樹、なに言って……」


「昼休み、悠人どこ行ってた? 誰といた? あいつといたんだろ? 電源切って何してた?」


畳み掛けられるように聞かれて、僕は動揺した。


「言えない様な事してたんだろっ」


瑞樹は怒ったまま、言い捨てて走っていこうとする。


「待って瑞樹っ……あの、その怪我どうしたの!」


僕にしては素早く腕を掴むことに成功した。


「…テニス部二年のやつらだよ。悠人を探してた時にやられたんだ。おまえとあいつの邪魔すんなって、いきなり殴りやがった。全部わかった。今までの嫌がらせもあいつらだ。悠人がいいなら俺は邪魔しない。仲良くやればいいし」


じゃあ、バイバイって瑞樹は誤解したまま、行っちゃったんだ。


誤解は早く解かなきゃいけないって思っていたけど、今は無理みたい。


瑞樹が冷静になってくれなきゃ聞いてももらえない。




昼休み、いつものように屋上に向かった。


遠くから瑞樹が見えたけれど、一人じゃなかった。


葵が自分で動いたんだって分かった。


声をかけるのがはばかられて、僕は教室に戻り、ひとりで弁当を食べた。


今日は金曜日だ。


この前瑞樹に、泊まりに来いよって言われた日。


もう家にもちゃんと言ってあるけれど、こんな状態で泊まりに行ってもいいのだろうか。



部活の後に、瑞樹と話そうと思っていたけれど、瑞樹は部活を休んでいた。


「本格的にケンカしちゃったか」


先輩が、なぐさめか冷やかしか、何かわからない言い方をするのにムカついた。


「片付け終わったら、映画でも見て帰らない?」


「僕、今日は用があるんです」


のんきに映画なんか見てる場合じゃないよ。


「じゃあ、明日は? 休みだし、どこか行こうよ。迎えに行くし」


僕は先輩と向き合った。


すでにほかの部員は部室に戻ってしまって、テニスコートには僕と先輩の二人きりだし、誰にも聞かれる心配はない。


「僕、先輩とは付き合えません。すみません」


深々と頭を下げて断った。だけど。


「悠人。堅苦しく考える必要はないんだよ。僕は悠人と仲良くしたいだけなんだ。僕と一緒にいれば、長瀬も嫌がらせをされずにすむんだ」


「先輩、二年の先輩たちがやってたこと、知ってたの?」


「昨日知ったよ。あいつら僕が悠人を気に入ってることを知っていたんだ。僕のために、悠人と仲のいい長瀬に嫌がらせをしていたことも、昨日、暴力を振るったことも白状した。ちゃんと注意はしたけど、またキミと長瀬が仲良くしていたら、隠れてやらないとも言い切れない」


そんなの脅しじゃんか。


先輩がもうするなって言えば、言うことを聞くんじゃないの? 


もしかして先輩がやらせてる?


瑞樹が言ってたように先輩が首謀者なのか?


「仲良くしよう、悠人」


顎をぐいっと持ち上げられ、先輩が顔を近づけてくる。


咄嗟によけたが、先輩の唇が僕の唇をかすめた。


「おとなしく言うことを聞いてくれないか、悠人」


どんっと突き飛ばされ、僕が倒れたところに、先輩が馬乗りになる。


「何だよ、何するんだよ。うわっ……やめ…」


僕もしかして、襲われる?

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