表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけが知る彼の裏側〜距離感ゼロの王子様  作者: 水波瀬 凪
距離感ゼロの王子様〜本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/15

【2話】瑞樹に殴られた木原先輩の復讐なのかな? と疑う僕って

小さな街灯ひとつしか明かりがない暗い公園に、一歩足を踏み入れた途端、すぐに不安になった。


「和泉」


ポンと後ろから肩を叩かれ、「わあっ」と声をあげた。


「あぁごめん。びっくりさせたね」


振り返ると、いつもテニスコートで笑っている、木原先輩の優しい笑顔があった。


木原先輩は、急に呼び出してごめん、と前置きしてから話を始めた。


「実は今日、長瀬に相談されたんだ。あいつ、イジメにあってるらしいね」


「…みたいです」


「長瀬はどうも、首謀者は僕だと決め付けてるようなんだ。どうして僕だと思われているんだか、分からなくて参る」


ねぇ。と同意を求められ、ハイともイイエとも答えられず困った。


「僕がそういう陰湿なことをするように見える?」


「……瑞樹が、嫌がらせされてるのは本当です。部内での事だし、部員の誰かだろうって事は僕も、そうかなって思うけど、それが先輩かって言われると正直、わかりません」


本人を目の前にして、先輩でしょうとは言えない。


それに木原先輩がイジメなんかに加担するとはやっぱり思えない。


けど、人は見かけによらないって言われれば、そうかな、とも思う。


「ホントは明日にしようと思ったんだけど、和泉くんには、早く言っておきたくて」


「僕に、ですか?」


「僕じゃない。やってないよ、嫌がらせなんて」


先輩がこんなにきっぱり言ってるんだから、やっぱり瑞樹の勘違いなのかもしれない。


「だけど、やったのが部の誰かだとしたら、それは部長である僕の責任だ。ちゃんとそいつを見つけてやめさせるようにするから。僕が疑われているのはつらいけど、いいや。キミだけでもわかってくれれば僕は救われる。今日はわざわざ悪かったね」


送るよ。と言って先輩が僕の肩に手をかけた時。


「悠人!」


公園の入り口から僕を呼び、こっちに向かって走ってくるのは、瑞樹?


「てめー悠人に触んなっ!」


「うわぁっ」


止める間もなく、瑞樹が先輩を殴りつけた。


すぐに瑞樹は僕の肩を抱き寄せるようにすると、


「悠人に何かしやがったら殺すからな!」


倒れたままの先輩を見下ろし、怒鳴りつける。


「行こう、悠人」


「瑞樹、僕大丈夫だよ。何もされてない」


「されてたまるか」


僕は後ろを振り向く間もなく、ぐいぐい引っ張って行かれた。


「誤解だよ瑞樹、木原先輩は……」


「騙されんなよ、悠人」


公園の出口まで来ると、そこに瑞樹の自転車が倒れていた。


瑞樹は自転車を起こして、僕を後ろに乗せる。


「俺に対して嫌がらせされるのは我慢できるんだ」


自転車を走らせながら、瑞樹が話す。


「今日、あいつを煽ったせいだ。悠人にまで手をかけようとするなんて、許せねーよ」


バカヤロー。と怒りながら瑞樹は自転車をかっ飛ばした。


家まで送ってもらうと、瑞樹は先に僕を自転車からおろす。


そして自分も降りると、僕の両肩をつかんだ。


「テニス部なんかやめよう悠人。悠人を危険にさらしてまで続ける意味ねーし」


「けど瑞樹、せっかくレギュラーになったのに」


来週、他校との初試合が予定されている。


「そんなのどうでもいい」


ふんっと瑞樹は吐き捨てるように言った。


「良くないよ。ちゃんと責任果たさなきゃダメだってば」


選手に選ばれるなんて、すごいことなのに。


僕なんか一生かかっても選手になれないかもしれないのに、そんなのどうでもいいなんて。


「やめるのは、試合後でもいいだろ?」


「そんなに待ってたら悠人が……」


「大丈夫だってば」


「うーん、そっか?」


瑞樹は、なにかあったらすぐ俺に言えよ。


と、くどいくらい念を押して、やっと部を続けることに承知した。







翌日の昼休み、屋上に行こうと廊下に出た僕を、後ろから木原先輩が呼び止めた。


「ちょっと話があるんだけど、いい?」


瑞樹が待っているはずだ。


遅くなったら心配する。


だけど先輩は、迷っている僕を「ちょっとだけだから」と、強引に部室に連れて行く。


パタンとドアが閉められ、カチャリと鍵をかける音がした瞬間、やばい気がした。


「昨日、長瀬にいきなり殴られてさ、痛かったな」


うわうわ、怒ってる? まさか仕返しされるんじゃあ…。


「長瀬はよほど和泉くんが大切なんだね」


先輩はにこっと笑って、僕に手を伸ばし、頭を撫でる。


先輩を見上げると、相変わらず優しい目で僕を見てた。


「長瀬の大切な和泉くんと、僕も仲良くしたいな」


目の前でにっこり微笑まれて、僕は「?」と首をかしげる。


「わかんない? じゃあストレートに言うよ。キミが好きなんだ。付き合ってみない?」


「…………えええっ!」


やっと意味がわかって、びっくりして後退る。


なんて言った? 先輩。


……僕を……好き?


「僕、男……ですけど」


「分かっているよ。悠人」


僕が一歩下がると、先輩が一歩近づいて来る。


なんだよいきなり、名前呼び捨て?


一歩下がり、二歩下がりしていたら、背中がドンッと壁に突き当たる。


「悠人は僕が嫌い?」


先輩の両手が壁をついて、僕は体を囲まれるような格好になってしまう。


見上げる先輩が、いつもよりすごく大きく見えて怖い。


「き……嫌いとか……」


そんなんじゃないけど…と、口の中でもぞもぞ言った。


「けど先輩、女の子にすごい人気で。なのに何で僕? 男なのに」


からかわれているんだろうか。


これってやっぱり仕返し?


「入部した時からずっと見てたよ。長瀬と仲良くて、嫉妬してた」


「まさか、だから瑞樹に嫌がらせしてたんですか?」


「あれ? 僕じゃないって言ったはずだけど。心外だな、疑われてたの?」


「あ、ごめんなさい」


慌てて僕が謝った時、スマホが鳴った。


「瑞樹からだ」


「なんだ、邪魔しやがって」


 僕のスマホはなんと先輩の手に奪われてしまった。


「ピッ」と電源を切られ、しかも自分のポケットの中に入れてしまう。


「僕じゃ不満?」


何事もなかったように先輩は話を続ける。


「ってゆうか男同士だし。困ります、僕……」


おなかがすいてきたし、先輩が何言ってるのか理解し難いし、イライラした。


「ちょっとって言ったでしょう、先輩。これじゃあ昼ご飯を食べる時間がなくなります」


「怒るなよ、悠人。ハイハイわかった。わかりましたよー」


先輩は、行っていいよ。と鍵とドアを開けてくれた。


「失礼します」


言って頭を下げつつ先輩をチラリと見ると、笑顔で「放課後部活でね」と手を振られた。



急いで屋上への階段を駆け上がるが、いつもの定位置に瑞樹の姿はなく、屋上全体を探したけれど、見当たらなかった。


怒っちゃったのかな、それとも心配して探してくれてる? スマホも出られなかったし。


「あっ!」


先輩がポケットに入れたままだ。


あのスマホは、瑞樹と色違いのお揃いで買った大事なものなんだ。


三年の教室を訪ねるのは、すごい勇気がいるけれど、返してもらわなきゃ困る。


「これだろ?」


僕が口を開く前に、先輩の方から返してくれた。


「じゃあまたね」


今回は、あっさりと解放してもらえてホッとする。


結局、瑞樹は見つからないし、スマホもつながらないまま五時間目になった。


五時間目の体育はマラソンで、昼食抜きにはつらかった。


けれどなんとか倒れずに体育を終えて、着替えてソッコーで弁当をかきこんだ。


「今頃ごはん?」


葵が立っていた。ちょっと気まずい。


瑞樹の気持ちをまだ伝えることが出来ず、一緒に遊ぼうって言った誘いを、ずるずると引き延ばして放置していた。


「いろいろあってね」


「いつも瑞樹くんと食べてるのにね」


「…だからいろいろあったんだってば」


その時はまだ、知らなかったんだ。


僕がそれを知ったのは、放課後の部活の時で……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ