【機密文書】Artifact-02-A(ダークエルフ)に関する基礎調査および事後聴取記録
文書番号:ART-02-A-REC-001
機密レベル:(極東支部 班長級以上閲覧可)
作成日:20XX年X月X日(Artifact-02進出から10日後)
作成者:極東支部 調査班 / 管理部 記録課
提出先:極東支部長 ヴィクター・ヴァンス、本部パトロン会議
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1. オブジェクト概要
正式名称:Artifact-02-A
通称(非公式):ダークエルフ、森の民
分類:有機体・人型実体・知的生命体
生息地:Artifact-02(帝国世界)内の森林地帯
脅威レベル:低〜中(財団の現行装備において、単体での制圧は極めて容易)
現在の状況:極東支部との間に暫定的な「同盟関係(不可侵および相互協力)」を締結。FOB(前線基地)周辺の水源および地形情報を提供中。
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2. 物理的・生物学的特徴
Artifact-02-A(以下、対象)は、地球上のホモ・サピエンス(現生人類)と極めて酷似した外見および内臓構造を持つが、以下の点で明確な生物学的差異が認められる。調査班による遺体の解剖、および集落でのフィールドワークに基づく所見は以下の通りである。
外見的特徴
耳介の肥大化:側頭部の耳介が上方に尖って伸びており、平均して人間の1.5倍から2倍の長さを持つ。これにより、集音能力および音源の指向性特定能力が極めて高く、森の中でのステルス行動や索敵に寄与している。
皮膚と色素:メラニン色素の分布が地球上のどの人種とも異なり、浅黒い(あるいは淡い灰褐色)の肌を持つ。これは森林の暗がりにおいて高度な迷彩効果を発揮する。
視覚器官:網膜の裏側に、猫科動物に見られる「タペタム(輝膜)」に類似した構造を確認。光量の極めて少ない夜間の森においても、昼間と同等の視力を確保できると推測される。
身体能力および寿命
骨格筋密度:ホモ・サピエンスの約1.3倍の筋密度を持つ。華奢な外見に反して筋力が高く、成人男性であれば100ポンド(約45kg)を超える張力のクロスボウを容易に引くことが可能。
細胞分裂とテロメア:回収された細胞サンプルの分析結果、染色体末端のテロメアの短縮速度が極めて遅いことが判明した。現時点での推測に過ぎないが、対象の平均寿命は地球人類の2倍〜3倍(約150年〜250年)に達する可能性がある。
「魔法」に関する考察
対象の社会において、我々の銃火器を「魔法」と呼称する文化が見受けられた。しかし、現時点で対象の体内から未知のエネルギー器官や、物理法則を無視する事象の発現は確認されていない。彼らの身体能力の高さ、あるいは森の環境を利用した戦術が、他種族から「魔法的」と誤認されている可能性が高い。
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3. 社会的・文化的特徴
言語体系
対象の言語は、地球における「古代ラテン語」および「ケルト語派」の文法構造・語彙と約74%の類似性を持つ。発音やイントネーションには独自の「訛り」があるものの、古代言語の知識を持つ調査員(ハル・フォスター等)であれば、数日の適応で十分な意思疎通が可能である。
この言語的類似が「偶然の収斂進化」なのか、あるいは過去に「門」を通じて地球とArtifact-02の間に文化交流があったのかは、現在調査中である。
政治的立ち位置
対象は、Artifact-02の広域を支配する「ロウル帝国(技術水準:中世〜近世)」の属州民として扱われている。帝国からは「穢れた蛮族」として差別され、過酷な搾取と、戦場における「使い捨ての先兵(肉の盾)」としての徴兵を強いられている。
集落は老齢の女性(族長)を頂点とする母系社会的な側面を持つが、実質的な防衛や狩猟は「戦士長(ギルと呼ばれる青年)」が取り仕切っている。
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4. 脅威度および利用価値(本部方針に基づく評価)
利用価値:極めて高い。
対象は帝国の支配に強い不満を抱いており、財団を「救済者」として認識している。この心理的優位性を利用することで、以下のメリットを低コストで享受できる。
1. FOB周辺の地形情報、水源、および食用動植物の提供。
2. 帝国軍が侵攻してきた際の、早期警戒網および第一防衛ライン(防波堤)としての利用。
3. 将来的な、Artifact-02における資源採掘の安価な労働力。
リスクと懸念事項:
対象に財団の科学技術(特に銃火器、火薬、通信機器)の原理を理解させてはならない。彼らが「武力による完全な独立」を志向した場合、財団のコントロールを離れ、不測の事態を招く恐れがある。
本部パトロン会議からの通達通り、対象には「過度な保護」や「技術の供与」を固く禁ずる。
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5. 付録:事後聴取記録
記録番号:INT-02A-01
実施日時:水源確保作戦の翌日 14:00
実施場所:孤島拠点(Artifact-1453) 管理部 仮設尋問室
聴取者:管理部 記録官 ████
対象者:ウーティス・ヴァンス(通称:ジャック / 極東支部 警備部 警備第1班長)
背景:水源確保作戦の道中において、対象者がArtifact-02-Aの個体(名称:アリア、10代中盤の女性型)に対し、財団の制式装備であるFN P90を譲渡し、実弾を射撃させた事実が、同行した隊員のウェアラブルカメラの記録から発覚した。本聴取は、明確な規定違反に対する事実確認である。
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[記録開始]
記録官:着席してください、ヴァンス班長。本日は、貴方のArtifact-02での行動について確認を行います。映像記録によれば、貴方は現地住民の少女にアサルトウェポンを渡し、発砲を許可しましたね。これは事実ですか?
ジャック:(椅子に深く寄りかかり、あくびをしながら)ああ、事実ですよ。見事な腕前でした。40メートル先の花をセミオートで一発。あれは天性のスナイパーですね。極東支部にスカウトしたいくらいだ。
記録官:冗談を言っている場合ではありません。本部からの通達を読んでいないのですか? 「現地住民への技術供与および、過度な保護を禁ずる」。貴方の行動は、財団の軍事機密を外部の知的生命体に漏洩させる重大な反逆行為に該当する可能性があります。
ジャック:機密漏洩? 記録官、あんた現場を見たことがないからそんなデスクワークみたいなことが言えるんですよ。俺があの子に渡したのは、ポリマーと金属の塊です。あの子たちは鉄を溶かす炉も、硝石から火薬を作る化学知識も持っていない。銃を一発撃たせたからって、明日から森の中でP90が量産されるとでも? 1000年早いですよ。
記録官:問題は物理的なリバースエンジニアリングだけではありません。精神的な問題です。彼らに「財団の武器を使えば帝国に勝てる」と錯覚させることは、過度な依存を生み、最悪の場合、我々の武器庫を襲撃して銃を奪おうとする動機を与えかねない。
ジャック:だから、一発だけ撃たせたんです。
記録官:……どういう意味ですか?
ジャック:銃ってのは、引き金を引くのが簡単すぎる。クロスボウみたいに弦を巻く苦労もない。指先一つで、相手の命をあっさり奪える。その「恐ろしさ」を教えるための教育ですよ。あの子は、銃を魔法の杖か何かと勘違いして、目を輝かせていました。だから、現実を教えたんです。これはただの人殺しの道具だと。結果として、あの子は「もう触らない」と約束しました。依存を防ぐための、現場の裁量によるコミュニケーションの一環です。
記録官:(書類を強く叩く音)詭弁です! 貴方は常にそうやって、規則の隙間を突いて自分の感情的な行動を正当化する。以前も指摘しましたが、貴方は対象(Artifact)に対して人間として接しすぎている。我々は軍隊でも慈善団体でもない。異常存在を管理し、利用する組織です!
ジャック:利用するなら、信頼関係が必要でしょう。同盟相手を最初から泥棒扱いして、銃を隠して威張り散らすような真似をすれば、いざという時に背中を刺されますよ。俺は俺の部下の命を守るために、最も効率的な外交をしたまでです。文句があるなら、次からあんたが森に入って、あのエルフたちと交渉してください。アーマード・ボア(鎧猪)に轢き殺されないように祈ってますよ。
記録官:……貴方の態度は、支部長に正確に報告させていただきます。
ジャック:ええ、どうぞご丁寧に。
[記録終了]
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6. 支部長 決裁コメント
> 記録官の報告書、およびウェアラブルカメラの映像を確認した。
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> ジャック・ヴァンスの行動は目に余る。結果として現地住民との信頼関係が深まったとはいえ、本部からの明確な通達を現場の独断で曲げる態度は、極東支部全体の立場(特にパトロン会議からの評価)を危うくするものである。彼が対象に抱いている「人間的な同情」は、今後の過酷な作戦において致命的な判断ミスを誘発しかねない。
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> よって、ジャック・ヴァンスに対し以下の処分を下す。
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> 1. 本日をもって、ジャック・ヴァンスをArtifact-02の前線基地(FOB)の指揮任務から解任する。
> 2. FOBの指揮権および現地防衛の責任は、本部直轄強襲班から編入されたクロエ・ナギに代行させる。
> 3. ジャックは孤島拠点(Artifact-1453)へ帰還し、冷却期間としてハル・フォスターの助手(護衛および肉体労働)に就くこと。現在判明している6つの門のさらなる解析、および「第8の門(月)」のロック解除に向けた調査を手伝え。
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> 帝国軍の敗報が帝都に届き、彼らが本格的な討伐軍を編成して再びFOBへ襲来するまでには、軍の移動速度を考慮して数ヶ月の猶予があるはずだ。
> ジャック、それまでに頭を冷やしておけ。次はないぞ。
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> ——極東支部長 ヴィクター・ヴァンス
文書終了




