第四話「試された」
日曜の昼、ユキと近所を散歩していた。
特に目的もなく歩いて、小さな雑貨屋に入って、ユキが変な形のマグカップをしばらく眺めていた。買わずに出た。公園のベンチに座って、缶コーヒーを飲んだ。
「ねえ、アキ」
「うん」
「私のこと、最初から好きだった?」
アキは缶コーヒーを持ったまま止まった。
最初から。最初、というのがどこを指すのかによる。聞き役をしていた頃から、という意味なら、そうだ。でもそれを認めると、ずっと隠していたことも認めることになる。
うまく答えをずらせばいい。「最初ってどこから?」と聞き返すか、「好きになったのは確かだよ」と時制を曖昧にするか。
でも。
「……わりと最初から」
出てきた。
ユキが笑った。何かを確認したような、満足したような笑いだった。
「やっぱり」
「やっぱり?」
「なんか、そんな気はしてた」
アキは缶コーヒーを見た。
「試した?」
「少し」とユキは言った。悪びれなかった。
アキは笑うべきか怒るべきかわからなくて、結局どちらでもない顔をした。
「性格悪いな」
「アキが正直に答えるかどうか、知りたかっただけだよ」
「知ってどうするんだ」
ユキはベンチの上で少し背伸びをして、それからアキの肩に頭を乗せた。
「安心した」
アキは何も言えなかった。
試されて、正直に答えて、安心された。なんだそれ、と思いながら、悪い気は全然しなかった。




