第五話「気づいてたよ」
付き合って一ヶ月が経った頃、ユキが突然言った。
「アキってさ」
二人でコンビニのイートインに座って、アキはホットコーヒー、ユキはフランクフルトを食べていた。脈絡がなかった。
「うん」
「私の前だけ、嘘下手だよね」
アキはコーヒーを飲もうとして、止まった。
「……何の話」
「いや、前から思ってたんだけど」ユキはフランクフルトを一口食べた。「アキって普段すごく上手に場に合わせるじゃん。言葉の選び方とか、間の取り方とか。なんか計算されてるな、って感じがする時がある」
「計算って言い方は」
「でも私といる時だけ、それが崩れるんだよね」
アキは黙った。
「映画が面白くない時、ちゃんとそう言うし。聞いてない時、なんか顔に出てるし。最初から好きだったって、あっさり言うし」
「……それは」
「嘘つけないんだよね、私には」
ユキは笑った。責めている感じじゃなかった。ただ、知っていた、という顔だった。
「気づいてたよ、割と最初から」
アキは天井を見た。コンビニの蛍光灯が白かった。
「なんで言わなかったんだ」
「だって面白いんだもん」
「面白い」
「うん。アキが一生懸命ごまかそうとして、でも全然ごまかせてなくて。見てて飽きない」
アキはしばらく黙って、それから笑った。笑うしかなかった。
「最悪だな」
「ごめんね」とユキは言ったが、全然悪そうじゃなかった。
アキはコーヒーを飲んだ。負けた、と思った。完敗だった。でもなぜか、すっきりしていた。




