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『1400万人の漂流国家 ~弾薬ゼロの自衛隊と最強の政治家が、異世界で「究極の兵站(ロジスティクス)」を無双する~』  作者: 月神世一


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EP 5

特務レンジャー部隊、未知なる大地へ

護衛艦『いずも』の飛行甲板。

強風が吹き荒れる中、陸上自衛隊の迷彩服に身を包んだ精鋭たちが、待機するUH-60JA多用途ヘリコプター(ブラックホーク)の前に整列していた。

「——というわけだ。練馬からわざわざご足労願って悪いな、1尉」

「……いえ。総司令の命令とあらば」

坂上信長は、目の前に立つ巨大な熊のような男——総司令であり実の父親でもある坂上真一を前に、直立不動で冷や汗を流していた。

(なんで俺なんだよ! 海自の特別警備隊(SBU)でも行かせりゃいいだろ! 絶対俺の顔見てイビりたかっただけだろこの親父!)

内心で盛大に毒づく信長だが、口に出せるはずもない。かつて木刀一本で暴走族を壊滅させたこの男に逆らえば、文字通り東京湾(今は滝だが)に叩き込まれる。

「お前たち陸自レンジャー部隊の任務は、異世界の森へ降下し、現地の『食料供給拠点』になり得る場所、及び交渉可能な友好的勢力を発見することだ」

真一は鋭い眼光で息子を射抜いた。

「いいか。先ほどの航空戦で実証された通り、我々の火器は強力だ。だが、弾薬の補充は一切利かない。発砲は極限まで控えろ。脅しで空へ撃つ一発すら惜しいと思え。……これは戦争じゃない。1400万人を食わせるための『お使い』だ」

「了解しました! 命に代えても、美味い飯のタネを見つけてみせます!」

食い意地が張っている信長らしい力強い返事に、真一は鼻を鳴らして背を向けた。

「待って。これ持ってきな」

タラップを登ろうとした信長の背中に、気の抜けた声がかけられる。

振り返ると、オーバーサイズのパーカーのポケットに両手を突っ込んだ早乙女蘭が、ダルそうに立っていた。

「……早乙女技官? なんですか、これ」

「特注のベルギーチョコ。カカオ80%。私の脳みそを回すためのガソリンのおすそ分け」

蘭は小箱を信長の胸に押し付けた。

「現地で脳のカロリーが切れたら判断をミスるからね。疲れたら食べな。……あと、無事に帰ってきてよ。あなたが死んだら、金曜日に美味しい甘口カレーを作ってくれる人がいなくなっちゃうから」

「……ははっ、了解です。最高の食材を見つけて、とびきり美味いヤツを作ってやりますよ」

信長はチョッパーの轟音の中でニカッと笑い、小箱をコンバットシャツのポケットにねじ込んでヘリに乗り込んだ。

降下ゴー降下ゴー降下ゴー!!」

バタバタと紫色の空気を切り裂くローター音の中、樹海の上空でホバリングするヘリから、太いファストロープが投下された。

信長を先頭とするレンジャー部隊が、次々と未知の森へと滑り降りていく。

ブーツが腐葉土を踏みしめる。

地球の熱帯雨林とは全く違う、むせ返るような濃密な「生命の匂い」。大気中に溶け込む未知のエネルギー(魔力)が、肌をピリピリと撫でていく。

「隊長。コンパス、完全に狂ってます。ぐるぐる回って使い物になりません」

「想定内だ。太陽(?)の位置と地形を頼りに進むぞ。周囲警戒、絶対に音を立てるな」

信長たちは手信号ハンドサインで意思疎通を図りながら、鬱蒼とした森の奥へと足を進めた。

数十分ほど進んだ時、斥候に出ていた隊員が信長を振り返り、信じられないものを見たというように前方を指差した。

「……隊長、あれを」

「なんだ? ……嘘だろ、こりゃあ」

信長が草むらを掻き分けた先には、深い森に似つかわしくない、綺麗に開墾された『農地』が広がっていた。

だが、彼らを驚かせたのは農地の存在そのものではない。そこに植わっている「作物」の規格外のサイズと生命力だ。

「おいおい……なんだよこの大根。満月みたいにまん丸で、大人が抱えきれないくらいデカいぞ」

「こっちの芋なんて、土から溢れ出しそうにパンパンに育ってます! 日光を浴びて、信じられない速度で成長してるように見えます!」

月見大根、そして太陽芋。

アナステシア世界が誇る、豊穣なる大地の恵みである。

「こいつは……すげえ。この尋常じゃない収穫量と成長速度……。ここなら、これならマジで1400万人の胃袋を救えるかもしれない!」

信長の顔に、確かな希望の光が差した。

その時だった。

——ゾクッ!!!

幼い頃から父・真一に叩き込まれた北辰一刀流の剣士としての「本能」が、けたたましい警報を鳴らした。

首筋の産毛が総毛立ち、心臓が早鐘のように打ち始める。

「散開ッ!!!」

信長の叫びと同時だった。

彼らが身を隠していた草むらの前方の空間から、「圧倒的な殺意と闘気」を纏った小さな影が、音すら置き去りにする異常な速度で飛び出してきたのだ。

「そこまでよ、侵略者ルナミスの斥候部隊! 私の村(畑)には指一本触れさせないわ!!」

長いウサギの耳をなびかせ、両手に鋼鉄のトンファーを構えた愛らしい少女。

だが、その可憐な外見とは裏腹に、彼女の足元からは地面をすり鉢状に抉るほどの圧倒的なエネルギーが立ち昇っていた。

鬱蒼とした森の奥。

信長たちは、1400万人を救う希望の宝庫に足を踏み入れた。

だが、そこには最強で最悪の「番人」が待ち構えていたのである。

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