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『1400万人の漂流国家 ~弾薬ゼロの自衛隊と最強の政治家が、異世界で「究極の兵站(ロジスティクス)」を無双する~』  作者: 月神世一


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EP 4

反撃の七・七ミリと、舞い降りる黄金

新宿・都庁前広場。

迫り来る死蟻機アントの大群を前に、坂上信長は真新しい『令和版・九九式短小銃』を構えた。

(……重い。だが、凄まじく手に馴染む)

ストックの木肌は吸い付くように滑らかで、機関部にはミクロのガタつきすら存在しない。80年前の図面を、大田区の変態的なマシニング加工で極限まで研ぎ澄ました「オーパーツ」だ。

信長は照星フロントサイトを、先頭の死蟻機の赤い複眼に合わせた。

「——撃てェッ!!」

ズドガァァァァァァァンッ!!!

新宿のビル群を震わせる、89式小銃の5.56mm弾とは次元の違う重厚な爆音。

強烈な反動リコイルが信長の肩を殴りつける。

それと同時。信長の放った真鍮削り出しの7.7mm弾は、猛烈な運動エネルギーを伴って死蟻機の極厚の頭部装甲に激突し——まるでガラスでも割るかのように、綺麗にそれを粉砕した。

「ギ、ギィィィ……ッ!?」

頭部を完全に吹き飛ばされた死蟻機が、緑色の体液を撒き散らしながらアスファルトに転がる。

それを見た自衛隊員たちが、歓喜の雄叫びを上げた。

「す、すげえっ! 一撃で装甲をぶち抜きやがった!!」

「これが町工場のオヤジたちが作った銃かよ!? 狙撃銃スナイパーライフル並みの精度じゃねえか!」

信長は素早くボルト(遊底)を引き、空の薬莢を排出する。

カシャィッ、という小気味良い金属音。引っ掛かりなど微塵もない。滑らかすぎて、まるでバターの上を滑らせているようだ。

「……大田区のオヤジども、やりすぎだろ。どんな精度で削り出してやがるんだ」

信長は不敵に笑うと、次弾を装填し、再び構えた。

「総員、第一列と第二列に別れろ! つるべ打ちだ! 弾を一発も無駄にするな、一撃必殺で頭をカチ割れ!!」

「「「オオォォォォッ!!!」」」

自衛隊の誇る精鋭たちが、旧式のボルトアクションを手に、見事な一斉射撃ボレー・ファイアの陣形を組む。

ズドン! ズドン! という規則正しい爆音が響くたび、蟲たちが次々とスクラップへと変わっていく。

弾薬ゼロの絶望から一転、1400万人の職人魂が生み出した兵器が、戦線を確実に押し返していた。

『……ほう? 弾が尽きたはずの彼らが、反撃を?』

はるか北方の天魔窟。

道化師の仮面を被った魔人ワイズは、蟲の視覚を通して新宿の様子を観察し、首を傾げた。

『見たことのない形状の鉄パイプですね。なるほど、あれも「チキュウ」の兵器ですか。たった数時間で新しい武器を量産し、前線へ届ける……恐るべき底力です』

ワイズは手を叩いて称賛した。だが、その声はすぐに、見下すような嘲笑へと変わる。

『しかし……あの武器は「単発」のようですね。一発撃つごとに、わざわざ手で金具を引いている。……絶望的に手数が足りていない』

ワイズの言う通りであった。

九九式短小銃の威力と精度は申し分ない。だが、いかに自衛隊員が訓練されていようと、ボルトアクション式の連射速度には物理的な限界がある。

一方、ワイズが送り込んでいる死蟲軍の数は「数十万」だ。

『大木を切り倒そうとするアリの努力は美しいですが、所詮はアリ。……数の暴力の前に、溺れ死になさい』

ワイズが指を鳴らした瞬間。

——メキメキメキメキッ!!!

新宿のストリートのアスファルトが広範囲にわたって隆起し、巨大な陥没穴が開いた。

そこから現れたのは、観光バスほどの太さを持つ、地中潜行型の大型魔獣——『死百足センチピード』だった。

「シャァァァァァァッ!!」

「なっ……! でかすぎる!!」

九九式の銃弾が死百足の胴体に命中し、火花を散らす。だが、あまりにも質量が違いすぎた。数発の銃弾を食らっても、死百足は止まらない。

巨大な蟲の王が、その重厚な胴体を持ち上げ、信長たち自衛隊の陣形を上から丸ごと押し潰そうと倒れ込んできた。

「隊長ッ!! 退避——」

「クソッ、間に合わねえッ!!」

信長が九九式を盾にしようと構え、隊員たちが絶望に目を閉じた、まさにその時である。

——ズドォォォォォォォンッ!!!

夜空を切り裂き、金色に輝く『巨大な流星』が、新宿のど真ん中に叩きつけられた。

「……え?」

信長が目を開けると、彼らを押し潰そうとしていた巨大な死百足が、首の根元から無惨に踏み千切られ、緑色の体液を噴き上げて絶命していた。

砂埃と爆煙が晴れた、クレーターの中心。

月光を浴びて神々しく輝く黄金の装甲と、紅蓮に燃え上がるタテガミ。

体長10メートルを超える巨大な機械の獣が、その鋭い瞳で、蠢く死蟲の群れを睥睨していた。

『……へっ。旧式ポンコツの鉄パイプで、ドロガメにしちゃあよく粘ったな、人間ども』

信長の脳内に、直接、ガラの悪いヤンキーのような男のテレパシーが響き渡る。

「ろ、ロボットの……ライオン……?」

腰を抜かしかけた信長に対し、その黄金の獅子——聖獣ガオンは、チラリと視線を向けて鼻を鳴らした。

『見てらんねえから降りてきてやったぜ。……テメェらは下がって、泥水でもすすって休んでな。ここからは、俺様が引き受ける!!』

『——ガァァァァァァァオオオオオオオオオオオンッ!!!!』

新宿のビル群のガラスが一斉に粉々に砕け散るほどの、圧倒的で、途方もない『獣の咆哮』。

人間たちが血反吐を吐いて戦線を支え抜いたからこそ間に合った。

異世界の神獣スーパーロボットが、日本の絶望を切り裂くために、いよいよその牙を剥いた。

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