第三回Gクラス課外授業:王都夏至祭の警備 2日目
王都夏至祭は二日目に入る。
イセリアは昨日と同じ場所でアベルトとジークフリートと合流し早速警備に取り掛かる。
午前中は怪我した人の手当てや万引きの現行犯逮捕、喧嘩の仲裁、迷子の子供の親を探したりして、時間が過ぎていく。
昼頃、食事中にイセリアたちに一本の通信が入る。
「食事中になんでしょうか?」
『食事中にすまないが、一度城まで来てくれないか』
「城???すみませんがどちら様で???」
『なに、城に来ればわかる』
「え、ちょっと!」
相手はそう言い一方的に通信を切る。
イセリアは今の通信に訝しげな表情をして通信機を見つめる。
アベルトとジークフリートはイセリアの通信相手に心当たりがあるようだ。
イセリアは二人に通信相手のことを聞くと二人そろって城に行けばわかると答える。
今度は通信相手はイセリアを城に呼び出して何させようとしているか心当たりがないか二人に聞く。
二人は昨日の件でイセリアに聞きたいことがあると言う。
イセリアは昨日の件を思い出す。
昨日あったのは怪我した人の手当てや万引きの現行犯逮捕、喧嘩の仲裁、大きなので、当時ユーリの非公式ファンクラブの会員が通知された場所以外の場所から地下水道へ下りてしまった人と地下水道へ下りた謎の女神崇拝者の男の捜索。
そこでイセリアは城の人間がイ聞きたいことは地下水道へ下りた謎の女神崇拝者の男についてだと思った。
「その話なら昨日、詰所あたりでもできただろうに、なんで今日なんだ?」
「話を聞きたい人が先の通信が来るまで忙しくしているのだから仕方ないだろ」
「今は夏至祭の最中だから城の人間が忙しいのはわかる。だけど、昨日のことなら詰所ですればよかったのに」
「仕方がない。あの人は本当に忙しい方なのだ。このことを聞くためにいつもよりハイペースで仕事を終わらせたのだから」
「アベルトもしかすると、さっきの通信私ではなく。貴方が取っていたらどうなってた」
「お前を城に連れてくるように言われていただろう」
アベルトの回答にイセリアは自分を呼ぶのはいったい誰なのか察することができた。
イセリアを呼んで話を聞きたい人物とは・・・、
「いいのか。私の身分は庶民だぞ。国王陛下が庶民に直接話を聞きたいなんて何の冗談だ」
イセリアが口にした人物を耳にしてアベルトとジークフリートは驚きの顔をする。
「なぜ父上がお前を呼んでいるとわかった」
「アベルト、自分の身分を考えろよ。宰相でも王子に進言はできても、頼みごとできる人物なんて数えるほどしかいないだろ」
イセリアの回答に二人は納得し、昼食を終わらせた後、詰所に連絡を入れて事情を説明した後、二人はイセリアを城へと案内する。
イセリアはアベルトとジークフリートに城へと案内される。
イセリアは本来城へと入ることが許されないが、アベルトたちのおかげで城に入ることができる。
城に入る際にボディチェックを受けてたあと、今持っている武装を城の守衛に預けて城の中に入る。
城の中は豪華絢爛で中に入った人をきらびやかに迎え入れてくる。
城はきらびやかに迎え入れても城で働いている貴族たちがそうであるかは別である。
城の中は現在、人がひっきりなしに動き回っている。
そんな人たちを横目にアベルトたちはイセリアを目的の場所へと案内する。
イセリアはアベルトたちについて行く最中、歌声が聞こえてきて、ふと、目を向けた。
そこは昔と変わらず、きれいな花々が咲き誇る中にはだった。
花々が咲き誇るすぐそばで一人の女性が赤ん坊を抱き、歌を歌っていた。
歌を歌っているの人は、
「あの人は確か・・・、かつて聖女と謳われた側妃様。それに今抱いている赤ん坊はいったい?」
「イセリアはあの方を知っていたのか」
「噂は国にいれば聞こえてきますから、それに去年、妊娠したと聞いていたけど、今抱いている赤ん坊が・・・」
「そうだ。今年の初めに生まれた妹のラクシャータだ」
「今の第一王女があそこに・・・」
「言うな。ユーリが王族から籍を抜いたことはまだあの方には伝えていないのだ」
イセリアはアベルトの言葉に何も言わなかった。
ただ聞こえてくる歌を聴くだけだった。
ジークフリートに王が待っていることを言われ、目的地に向かって再び向かう。
(どんな理由があったとしても育児放棄していい理由はない。それにユーリは側妃のことをただ自分を生んだだけの女としか思っていないだろう。そこに親子の情などない)
アベルトたちに連れられて、イセリアはある部屋の前へと案内された。
イセリアはてっきりに謁見の間で王と謁見すると思っていた。
思いなおせばそんな事をすれば、“冒険者ギルドの冒険者ランクB以下の冒険者は城への登城してはならない”に抵触する恐れがある。
本来ならイセリアは冒険者ランクBなので登城は許されていないが、今回は冒険者としての登城ではなく。学生で王子たちの知り合いという抜け道を使った登城である。
アベルトは扉をノックして入室許可もらう。
部屋の中から中に入る許可をもらい部屋の中へと入っていく。
部屋の中には40代後半の男性ときれいな女性が座っており、その後ろには二人の護衛と思わしい人物が後ろに控えていた。
「陛下、王妃様、目的の人物をお連れしました」
「よい。アベルトよご苦労だった。お前は下がれ」
「わかりました」
アベルトは部屋から出ていった。
だが気配は部屋の外にしっかりと会った。
国王陛下とその王妃がイセリアは見つめる。
陛下はイセリアを値踏みするような目で見つめるが、王妃は素早く扇子で目から下をを隠して、イセリアを見ている。
王妃はイセリアを一目見て、イセリアの正体に気がつき内心驚いているのだろう。
「フェネクスよ。本来なら冒険者ランクBであるおぬしを直接呼び出すことはできぬが、おぬしに聞きたいことがあって呼び出した」
「聞き及んでおります陛下。昨日のことで聞きたいことがあると」
「時間が惜しいので単刀直入に聞こう。おぬし・・・、ユーリに何をした」
イセリアは陛下の質問に少し思考が停止した。
陛下が聞きたかったことはユーリのことだった。
“昨日のこと”で、“ユーリ”で聞きたいことなるとユーリのファンクラブ設立のことだろうか。
「ファンクラブの設立に関しては私には」
「そのことではない!」
陛下はファンクラブ設立のことについて聞きたかったわけではないようだ。
では一体何を聞こうというのだろうか。
イセリアが昨日ユーリと関わったのは寮以外で地下水道へ下りた人たちの捜索くらいである。
イセリアが答えあぐねていると横で聞いていた王妃が助け舟を出してくれた。
「あなた。我々からしたら昨日のことであって、彼女からしたら昨日のことではないのかもしれないわ」
「むっ、そうかもしれん」
陛下たちはいったい何が聞きたいのかイセリアはわからなかったが、もしかしたら陛下たちが聞きたいことはユーリが王族から籍を抜いたことではないだろうか。
それならもはや昨日のことではない先月のことである。
それになぜイセリアに聞こうとするのか、ユーリのそばにいるジークリンデから聞けばいいのではないか。
「おぬしに聞きたいのはユーリが魔法が使えるようになったのといつ王族から籍を抜くことを考え始めたことについてだ。なお護衛のジークリンデはこのことについては余たちに対して何も話さないのだ」
ジークリンデは黙秘してユーリのことについて陛下たちに一切報告していないのだろう。
いや、報告していても報告内容をぼかしている可能性がある。
そんなことを王族への不義として処刑されかなねない。
それなのにジークリンデは何も話さない。
「わかりました。私がわかる範囲でお話しましょう。」
「うむ。話すがよい」
ユーリがいつ頃王族から籍を抜こうと思ったかはイセリアはわからない。
だが、イセリアと再会するまで王家が用意した婚約者と政略結婚して生活していくと思っていたことを話す。
ユーリが王族から籍を抜くとをできるようなった切っ掛けを作ったのはイセリアであることを話した。
ユーリはこの世界では持っていること自体が不思議な神霊力の持ち主の一人であり、イセリアがそれに気がつき使えるように指導したことにより、神霊力を使いこなせるようになったこと。
最初は見様見真似でイセリアの術を模倣して使っていたが、今では自分で一から術を構築するまでに至ったこと。
さらにユーリの資質は神霊力だけではなかったこと、彼女はイセリアから貸し与えられたビームライフルを少しの訓練でいとも簡単に使いこなせるようになっていたこと。
今では射線さえ通れば高確率で当てられることを話す。
陛下たちはイセリアの話に黙って聞き続け、何も言わなかった。
イセリアが話し終えた後、沈黙が部屋を支配する。
イセリアは黙って沈黙している王と王妃をただ見つめる。
「余はいったいどこで間違えたのか」
陛下は絞りだすようにつぶやかれる。
つぶやかれた言葉にイセリアとしてはどこで間違えではなく、王も王妃も聖女もユーリに対して何もしていないのが原因だと思う。
ユーリは自我が芽生えてから一度たりとも陛下や側妃と顔を合わせたことがないと言っていたことをイセリアは聞いている。
親と子が一度たりとも顔を合わせたことがないことは異常なことだ。
ユーリは親から育児放棄を受け、乳母がいなくなった後、護衛を務めることになったジークリンデによって養われていた。
ジークリンデ以外、ユーリに対して手を伸ばした人はいなかった。
たとえ王妃や兄であるフェイトやアベルトも気にかけはしても何かしようとはしなかった。
その時の孤独感から自分は王家から必要とされていない。
不必要な存在と思ったことで王家から籍を抜くことを考え始めたのかもしれない。
王妃は意を決して陛下にあることを話す。
「あなた、ユーリのことで何かしよとするたびに側妃のお願いなど聞かず、無理やりにでも私たち元へ引き取ればよかったですわね」
新たな事実が王妃の口から言われた。
陛下と王妃はユーリに対して何かしようと動かれていた。
しかし、それを側妃である聖女によって止められていた。
「そうだな。あ奴はユーリとラクシャータの扱いに物凄く差がある」
「もうユーリとの関係修復はできなくても彼女の最後の願いでいもある卒業までの支援だけは最後までやりましょう」
「そうだな。これだけはやり通そう。たとえあ奴がなんて言おうとも」
「はい」
陛下と王妃の会話を黙って聞いていたイセリア、自分はこの話を聞いていいいのだろうか、早急にここか出ていった方がいいのではないだろうかと思う。
そんなこと思っている時、陛下がイセリアに対して、
「フェネクスよ。王妃との話をユーリに伝えてほしい。余も王妃もユーリのことを愛していると」
「わかりました。陛下と王妃様の話をユーリに伝えます。しかし」
「しかし?なんだ?」
「最後の愛していることは伝えません。今、陛下と王妃が愛していると伝えても信じてもらえないからです」
「そうか。それは致し方ないか」
陛下は自分たちがしてきたことを振り返りユーリに愛していると言っても聞いてもらえないことに少し残念そうにされる。
「最後にイセリアよ。あなたは元とはいえ婚約者であるフェイトに伝えておきたいことはある」
「元気にやっていますとだけ伝えて下さい」
王妃はやはりイセリアの正体に気がついていた。
王妃の言葉に陛下は表情を変えていないが驚いているように見える。
陛下としては学園での王子の知人を呼んだだけに過ぎなかったが、呼んだ者の正体がかつて息子のフェイトの元婚約者だったとは気づいていなかった。
陛下は内心を隠しつつイセリアに退出を命じる。
イセリアは陛下の命に従い部屋から出ていき、外で待っていたアベルトたちと合流して警備を再開する。
今日の警備が終わり寮に戻った時、イセリアはユーリに会いに行き、城での王と王妃の会話をユーリに話す。
そのことを聞いたユーリの感想は、
「何をいまさら、もうなにもかも遅い・・・」
とただつぶやき自分の部屋へと戻っていくのだった。




