第三階層の探索終了
「イセリア!」
ファントムとイセリアの戦いの結果は相打ちで終わった。
シャルロッテとエリナは墜落したイセリアの元へ行き。
アモンは倒れて動けないユーリを背負って後に続く。
三人がイセリアのもとに着いたとき、イセリアは目をそむきたくなる状態だった。
「ひどい」
「まだ、ユーリの自滅が可愛いくらいだ」
「ん!?先輩!イセリアはまだ息をしています。治癒魔法か回復魔法を使えませんか?」
「無理よ!今の私ではどうすることもできない」
「オレも攻撃一辺倒だ。それにその手の適性もない」
「くそっ。俺も使えない。後輩をただ見殺しにすることしかできないのか」
三人は重傷を負っているイセリアをただ見ていることしかできなかった。
イセリアはいたるところから出血していて、両足は曲がらない方向に曲がっており、腹部に大きな穴が開いていて、心臓付近に装甲の破片が刺さっていた。
生きているのが不思議な状態であった。
それでもイセリアは生きている。
イセリアはゆっくりではあるが動き出し、腰につけているアイテムボックスを開こうとする。
しかし、アイテムボックスは先の戦闘で壊れてしまっている。
そのせいで中身を出すことができない。
今のイセリアの状態では次元倉庫からアイテムを引っ張り出すこともできない。
ただイセリアが死ぬのを見ているだけかと思ったとき、アモンの後ろから声がした。
「あ、たし、の、アイテム、ボックスに、試作、品だけど、エリク、シルがある。それなら、イセリアを」
そう言ってユーリは意識を失った。
息はちゃんとしているので死んではいない。
やはり、神霊力の枯渇とトランザムライザーの反動はでかいらしく意識を回復できてもすぐに力尽きてしまう。
ユーリが意識を回復してくれたおかげでユーリが試作品のエリクシルを作り出していることが分かった。
今は試作品のエリクシルがどこまで効くかわからないが三人はそれにかけることにした。
エリナはユーリのアイテムボックスから試作品のエリクシルを取り出しイセリアにかけようとする。
イセリアもかけようとしているのが何なのかわかったのか力を振り絞り、心臓付近に刺さっている装甲の破片を引き抜く。
イセリアが装甲の破片を引き抜いた瞬間にイセリアにユーリが作った試作品のエリクシルがかけられた。
イセリアの浅い傷は治っていくが深い傷や腹の穴はまだ開いたままで心臓付近の傷も治っていない。
ユーリの試作品エリクシルの効能はイセリアの霊薬エリクシルと比べるとはるかに効能が低い。
でもそのおかげでイセリアの体力を少しだけ回復でき次元倉庫から霊薬エリクシルを取り出しすことができた。
だが、霊薬エリクシルを自分自身にかけることも飲むだけの体力は回復できなかった。
イセリアが霊薬エリクシルを取り出したことに気が付いたアモンはすぐにイセリアからエリクシルを奪い取りイセリアにかけた。
これによりすべての傷が癒えて体力も戻り、身を起こして軽く首を振った後立ち上がった。
「すまない。迷惑をかけた」
「謝られて困る。なんせ俺たちはファントム戦の時何もしていないのだから」
「そうだ。もっと私たちが強ければよかったのだが・・・」
「どんな形であれ、私はみんなのおかげでこうして生きている」
「ほとんどユーリのおかげだけどね。そうだ動けるようになったのならユーリを治してもらっていいかな」
イセリアはユーリの治療を頼まれたとき、首を横に振って拒否した。
「えっ!?なんで?」
「いや、これが肉体的疲労または魔力の枯渇だったらエリクシルをかけて対処するんだが、何分、神霊力の枯渇だからなエリクシルをかけても治らないんだ」
「霊薬エリクシルでも治せないものがあるなんて」
「どう例えたらいいかな。この例えだとここでわかるのはシャルロッテ先輩だけだなんだが」
「どんなたとえ?」
「人をコンピューターとして例えると肉体はハードウェアで魂がソフトウェアになるんだよ。霊薬エリクシルはハードウェア関係を簡単に治せるけどソフトウェアを治すことはできないんだ」
「つまりどういうことだ」
「魔力は肉体に依存して神霊力は魂に依存しているってことね」
「魔力は肉体を治せばどうにかなるが、神霊力は魂をどうにかしなければならない。そして、魂に直接効く薬など私の経験上存在しない」
「どうやって治すんだよ」
「自然に治るのを待つしかない。見た感じ二、三日で動けるようになるだろう。それまでこの状態で我慢してもらうしかない。それに下手に肉体だけを元気にしても介助が難しくなるだけだ」
三人はアモンの背中の上で寝ているユーリを見た。
これからどれだけ強くなるのかわからない。
王族から籍を抜いているといえ王が今のユーリを見たらどう思うか。
これまでのことを反省してユーリを王族として呼び戻すか、危険分子としてみて暗殺するかわからない。
だが、今は知られない方がいいかもしれない。
五人は今いる場所が元に戻っていることに気が付いた。
いつもならファンファーレがなって天井に言葉が書かれているのだが、今回はなかった。
いや、今回はなかったのではない。
実はイセリアが大けがを負ったために治すことばかり考えていたために気がつかず見落としてしまったのだ。
これまでのこと考えると労いの言葉が書かれているだけの可能性が高いために、イセリアは気にもしなかった。
残りの三人はそのことを忘れていた。
イセリアたちはボス部屋から出て大広間へ行き、探索メンバーが待つフロアへと向かう。
イセリアたちがエレベーターフロアに着いた時には探索メンバーから労いなどがあると思った。
しかし、そこには誰もいなかった。
疑問に思ったイセリアたちは探索メンバーに連絡を取る。
探索メンバーがここにいたなかったのなぜかすぐにわかった。
探索メンバーがここにいなかったのはどうやら第二階層でけが人が出たからのようだ。
(だからと言って全員で行くなよ。代表一人に容体を聞きに行かせればいいだけだろうが。それとも暇だったのか・・・、まさかな。こちらもけが人ではないが行動不能が一人いるから早く戻ってベッドに寝かせないと)
イセリアたちはすぐにリフトに乗り込み上へと戻る。
戻ったところには第二階層探索メンバーと第三階層探索メンバーがいた。
イセリアが上に戻ったときに労いの言葉をかけられるが、アモンに背負われているユーリを見て説明を求められた。
イセリアたちはユーリが倒れた理由を教えた。
一年生は神霊力でも使用し続ければ枯渇することがあるのかと思った。
ユーリは神霊力を莫大に所持しているためにこれまで枯渇することはなかった。
しかし、今回はトランザムライザーによる神霊力の消耗スピードが思っているより大きかったのと、ほかの術併用し過ぎたために一気に消耗しているために枯渇することになってしまった。
ユーリはこれからは自分の最大値を知ったことで今度は効率を重視しながら最大値を上げていくことが課題だ。
イセリアたちが戻ってきたことにより今回の探索は終了した。
各々、寮へと戻り、今日起こったことの報告書を書き始めた。
ユーリはその日の夜にもう一度目が覚め自分が今置かれている状態をイセリアに聞かされた。
二、三日動けないこと、神霊力の枯渇による後遺症で動けるようになってもしばらくは体がだるくなり、食欲も減ることを聞かされ少しへこんでいる。
そして、今度のユーリの鍛えからの方針を決めたとき、ユーリは限界を迎えて再び眠りについた。
イセリアは自分の部屋に戻って今日の第三階層の探索の報告書を書いて眠りについた。




