転生者と異世界渡航者
私は筋肉王アレキサンダー・マッチョの像を届けるためシャルロッテ先輩の部屋の前まで来た。そしてノックをして先輩を呼び出した。
「失礼します。エンデュミオン郵便配達の者です。お届け者をお持ちしました」
「は~い、ただいま判子をお持ちします」
先輩の声が聞こえしばらくして先輩が出てきた。
「え~と、ここに判子もしくはサインをお願いします」
私は王都エンデュミオン国立魔法学園エンデュミオンGクラス寮シャルロッテ・ユースティティア・トリッガー様宛の書類を出した。
「はいはい、ここにサインね、わかったわ」
先輩は快く書類に判子を押してくれた。
「できればあそこに置いてほしいと助かるわ」
と言われて指を指された方を向いた、そこには大量の筋トレ用の道具があった。
もしかして像をダンベルとかバーベルの代わりにしようとしているとかじゃないよな。
「わかりました。あそこに置けばいいのですね。置いたらすぐに次の配達がありますので」
「嘘言わないでね、もともとエンデュミオン郵便配達はないのだからゆっくりしていったらどうかな。食堂での話を一対一でしたいから」
そういえば先輩は私のことを転生者と言ってきて、私は否定して異世界渡航者を名乗って、もしかして異世界の話をするために私を引きとめようとしている?でも先輩にとっては前世の話で今とは全然関係のない話ではないのか聞いてみるか。
「先輩もしかして私が渡ったことがある異世界の事を聞きたいのですか」
「ええそうよ。一番そこに興味があるの。私は前世でこの世界をゲームという形で知っている。あなたはどんな形で知っているか知りたいの」
先輩はこの世界をゲームとして知っているようだ。確かに私も異世界でこの世界を舞台にしたゲームを知っている。『世界ヲ蝕ムモノ』や『未来ヲ閉ザスモノ』がその世界の者に憑依するときがある、だけど、憑依した物の意志が強いと逆に取り込まれることがある。私たちはそのときははずれと呼んでいるが、戦いの日々だけではなく平和な世界にも行った事がある。
「わかりました。私も異世界にいたとき、この世界を舞台としたゲーム、漫画、小説を知っています。像を置いたら話しますね」
私は筋肉王アレキサンダー・マッチョの像を指定された場所に置き、先輩に進められるがまま、いすに座った。
「イセリア、私はねこの世界を格ゲーの世界だと思っているの。前世のときはまっていた格ゲー『インペリアルファイト』に出てくる場所や人たちがこの世界に入る、そして、私がそのゲームに出てくるプレイヤーキャラの一人だから、この世界は格ゲーの世界だと思っているの」
先輩はこの世界を格ゲーだと思っているらしい。だがこの世界は格ゲーの世界にはならない。
「先輩、これは私の経験則ですが異世界で物語としてつむがれた話はすでに起こった後のできごとなのでまったく同じになることはないのです。だから心配いりませんよ。この世界はこの世界だから物語の強制力なんて存在しないのですよ」
「その話だと異世界にはゲームと同じ行動をとった私がいるということ?」
「はい、そうなります」
「異世界って平行世界か何かなの」
「どこかで分岐した世界だと考えられます」
異世界、これについてはまだ私にはわからないことがある。師匠たちなら何かわかるかな。でもあの人たちは気にしないかもしれない。
「私はこの世界を格ゲーと言ったけど、あなたはゲーム、漫画、小説といったけどジャンルは何?」
「まずゲームは、アクション、シミュレーション、RPG、乙女ゲー、ギャルゲー、エロゲーになります。マンガは、恋愛もの、バトルもの、冒険活劇ものになります。小説もマンガと同じとなります」
たくさん異世界を回っているといろんなところにあった。これでもごく一部だと思われる。現に私が行った所がないところに格ゲーという形でこの世界のことがつむがれている以上、私が知らないだけでまだ星の数だけこの世界の物語があると思われる。
「結構多いですのね」
「私がただ知らないだけで行ったことがない異世界にはまだ在るかもしれませんよ。この世界のこと、いや、この世界に似た世界の物語が」
「所詮、世界は何者が書いた物語のように進むのではなく、世界はその世界に存在一つ一つが世界を作り未来をつむぐと言うことね」
「はい、そうなります」
「こんなことを聞くと転生者なんてものすごくちっぽけな存在なのね。なら私は、私が思うままに生きていく、前世なんて関係なく、格ゲーなんて関係なく、今の立場など関係なく」
転生者であることは先輩にとってなにかしらの負い目でもあったのかな?
「よし決めた。私はこの世界を旅して回って生きるだから、私は冒険者になる。ありがとう。イセリア、私は前世でやっていたゲームみたいになるのかと思うと怖かった。だけど別の私がすでにやっているなら、ゲームの強制力はない。だから、私はゲームで出てきた騎士ではなく世界を回って旅する冒険者になる」
先輩は私の手を持ち上下に振って喜びを表した。案外、今年度で卒業する先輩は進路のことで悩んでていたのかもしれない。
「でも先輩、貴族の娘ですよね。親御さんたちが許しますか」
「大丈夫よ、両親は元冒険者なの、同じ道を歩んでも許してくるわ」
なんかよくわからないがものすごい自信だ。
「もし許しもらえなくても、私の今の実力なら皆を突破して自力でなってみせる」
トリッガー伯爵家ってどんな一家だったかな?こんな武闘派だったかな。くそ、覚えてない。でも先輩がそうしたならそれでいいかこの話に私が関わっていいわけじゃない。
「私が冒険者になった、そのときはイセリアのパーティにでも入れてもらいましょうか」
「私、基本、ソロなので、それに私が卒業するのは先輩が卒業してから二年後ですよ」
「それまでにあなたと同じくらいのランクまで上げさせてもらうから大丈夫よ」
もうパーティを組むことになりそうだ。でもまぁいいか。
「わかりました。私は現在Bランクです。だから私の卒業のときまでにBランクになっていてくださいね」
「約束よ。私はあなたが卒業するときまでにはBランクになって見せるわ」
私は先輩と拳をどうし打ち合い、私たちの未来に約束した。その後、先輩に冒険者として心構えを教えた。
「ありがとう、イセリア」
「どういたしまして、もうそろそろ退出しますね」
「そう、もうそんな時間、明日の放課後、楽しみにしているよ。イセリア」
「ご期待に沿えるようがんばらせていただきます」
私は先輩の部屋から退出し、自分の部屋に戻り明日に備えた。
楽しみだ、先輩はどのくらい強いのだろう。
入学初日が終わりました。
次回、二日目




