第40章 初雪の朝と、温もりの約束
十二月に入り、Lunetteは本格的な冬の空気に包まれていた。
朝、真澄が店の鍵を開けると、地面が薄く白く染まっていた。初雪だ。静かに舞う雪片が、店の前を優しく覆っている。
「初雪……。綺麗ね」
真澄はしばらくその景色を眺めてから、店内に入り、暖房を点けた。窓の外で雪が舞う様子が、店内を一層温かく感じさせる。
山田老人がいつもの席に座り、温かいブラックコーヒーを受け取りながら言った。
「今年の初雪は早いな。……君の店で見る雪は、格別だよ」
「ありがとうございます。山田さんも、体を冷やさないでくださいね」
午前中、彩花があかりちゃんを連れて来た。雪を珍しがるあかりちゃんが窓に顔をくっつけて喜んでいる姿が、店内を明るくした。遥もバイトに入り、「真澄さん、初雪おめでとうございます!」と元気に声を上げた。
午後、拓也が顔を出した。肩に雪を少し乗せたまま、笑顔で入ってくる。
「初雪だね。……君の店で見る雪は、特別に綺麗だ」
「あなたも、そう思う?」
二人はカウンターに並んで座り、温かいココアを傾けた。窓の外で雪が舞い、店内は柔らかな静けさに包まれている。
「ねえ、拓也。今年の冬も、一緒に過ごせるのが嬉しいわ」
「僕もだよ。君といる冬は、温かい」
拓也が真澄の手を握り、静かに引き寄せた。二人は短いキスを交わし、しばらく並んで初雪の景色を眺めた。
閉店後、二人は店内で簡単な夕食を取りながら、これからの冬の話をした。クリスマスメニューのこと、年末の営業のこと、来年の展望のこと。特別な約束ではないけれど、自然と「一緒に」という言葉が浮かぶ時間だった。
夜、二階の部屋に戻った真澄は、窓を開けて夜の雪を見つめた。静かに積もる雪が、街を優しく白く染めていく。
彼女はノートに書いた。
『初雪の朝。
冬が本格的に始まった。
私は今、誰かと温もりを分け合う場所がある幸せを、深く感じている。
この冬も、穏やかに、大切に過ごしていこう。』
外では、初雪が静かにLunetteの看板を白く彩っていた。




