↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lunetteの午後三時  作者: 蒼狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/42

第32章 花火の夜と、寄り添う影

七月も後半に入り、Lunetteの周辺では近所の小さな夏祭りが開かれることになった。


真澄は朝の準備をしながら、店の前に小さな飾りを追加した。シンプルな風鈴と、青い色のリボン。派手さは控えめに、でも夏らしい清涼感を出したかった。


「祭りがあると、街が少し華やぐね」


山田老人がいつもの席で冷たいコーヒーを飲みながら言った。


「君も、浴衣とか着るのかい?」


「考えてます。久しぶりに着てみようかしら」


午前中は比較的穏やかだったが、午後から祭り関連の客が増え、店内は少し賑やかになった。彩花とあかりちゃんも浴衣姿で現れ、遥は「真澄さんも浴衣着てくださいよ!」と何度も勧めてきた。


夕方、拓也が顔を出した。手に軽い夕食の食材を持っている。


「今夜、祭りに行かない? 花火もあるらしい」


「いいわね。閉店後に行きましょう」


閉店作業を急いで終え、真澄は二階で浴衣に着替えた。薄い藍の生地に白い模様が入った、落ち着いたデザイン。鏡の前で帯を結びながら、自分の顔が少し柔らかく見えた。


拓也と合流し、二人は祭り会場へ向かった。屋台の灯りが夜の街を照らし、子供たちの笑い声が響く。真澄は時折拓也の袖に触れながら、ゆっくりと歩いた。


花火が上がる時間になると、二人は少し離れた土手に腰を下ろした。大きな花火が夜空に咲くたび、周囲から歓声が上がる。


「綺麗……」


「うん。君と見る花火は、格別だよ」


拓也が真澄の手を握り、肩を寄せた。浴衣の袖が重なり、夏の夜風が二人を優しく撫でる。花火の光が交互に二人の横顔を照らす。


花火が終わった後、二人は静かに夜道を歩いてLunetteへ戻った。


「今夜はありがとう。すごく楽しかったわ」


「僕もだよ。……また、こうして並んで歩きたい」


店の前で、拓也が真澄を軽く抱きしめた。短いキスを交わし、しばらくその温もりを分け合った。


夜、二階の部屋に戻った真澄は、浴衣を畳みながらノートを開いた。


『花火の夜。

夏の思い出が、また一つ増えた。

私は今、誰かと寄り添う時間を、自然に求めている。

この優しさを、大切に感じながら生きていこう。』


外では、夏の夜風が優しく看板を揺らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。