第22章 年の瀬と、静かな誓い
クリスマスが過ぎ、Lunetteは年末の静けさに包まれていた。
店内のイルミネーションはまだ残してあるが、真澄は少しだけ控えめにしていた。年の瀬は慌ただしいより、ゆっくりとした時間を大切にしたいと思ったからだ。
「今年も、あと少しね」
朝一番に山田老人が来て、いつものブラックコーヒーをすすった。
「来年もここで、君のコーヒーを飲めるのが一番の楽しみだよ」
「もちろんです。山田さんがいなくなったら、朝が始まりませんから」
午前中は常連さんたちが次々と顔を出し、簡単な年末の挨拶を交わした。彩花は家族で帰省する予定だと言い、遥は大学のサークル仲間と年越しをする予定だと嬉しそうに話した。佐々木夫妻は「年末年始も野菜を届けに来るからね」と約束してくれた。
午後、拓也が書店からやってきた。最近は二人で年末のギフトセットを用意し、書店とLunetteの両方で販売していた。売れ行きもよく、街の人たちに少しずつLunetteの名前が広がっているのを感じていた。
「年越しは、どうする?」
拓也がカウンター越しに聞いた。
「店は三十一日まで開けて、元日は休むつもり。あなたは?」
「書店も同じだよ。……もしよかったら、三十一日の夜、一緒にそばでも食べないか。静かに年を越したい」
真澄は少し考えてから、微笑んだ。
「いいわ。ここ、Lunetteで年を越しましょう。二人で」
その日の閉店後、二人は店内で簡単な夕食を作り、年越しそばを茹でた。窓の外では、街の人々が慌ただしく行き交っている。でも、Lunetteの中はとても静かで、温かかった。
年が明けた瞬間、拓也が真澄の手を握った。
「明けましておめでとう。今年も、よろしく」
「明けましておめでとう。……今年も、一緒にいてね」
真澄は拓也の肩に頭を預け、静かに目を閉じた。
新しい年が始まった。
Lunetteの灯りは、変わらず優しく店内を照らしている。
真澄は心の中でそっと誓った。
——この場所を、この気持ちを、大切に守っていこう。
外では、冬の夜空が静かに新しい年を迎えていた。




