第21章 クリスマスの灯りと、約束の季節
十二月に入り、Lunetteは冬の装いになった。
窓辺に小さなイルミネーションを飾り、カウンターには赤い実の入ったリースを置いた。看板メニューは「スパイス・ホットチョコレート」と「栗とチョコのタルト」。店内は甘い香りと柔らかな灯りで満ちていた。
「今年は特別に賑やかになりそうね」
真澄が朝の準備をしながら呟くと、山田老人が微笑んだ。
「君の店が、この街の冬の風物詩だよ」
クリスマスが近づくにつれ、店は予約でいっぱいになった。彩花家族、佐々木夫妻、遥のサークルの仲間たちも訪れ、店内は温かい会話で溢れた。
クリスマスイブの夜。
真澄は特別に店を早めに閉め、拓也と二人で過ごすことにした。店内で簡単なディナーを用意し、キャンドルを灯す。
「メリークリスマス、真澄さん」
「メリークリスマス。……今年は本当にありがとう」
二人はワインを傾けながら、今年一年を振り返った。真澄がカフェを営み、拓也と出会い、ゆっくり恋に落ちたこと。たくさんの人の優しさに支えられたこと。
食事が終わると、拓也が小さな包みを差し出した。
「開けてみて」
中に入っていたのは、繊細な銀のネックレス。Lunetteの「L」をモチーフにした小さなチャームが付いていた。
「君の大切な場所を、いつも身につけていてほしい」
真澄の目が潤んだ。
「……ありがとう。大切にするわ」
真澄も用意していたマフラーを拓也に巻きながら、静かに言った。
「来年も、一緒に過ごしましょう。Lunetteで、君の書店で、この街で」
拓也は真澄を抱きしめ、優しくキスをした。
「約束だよ」
クリスマスの夜、Lunetteの窓から漏れる灯りが、雪の降る街を優しく照らしていた。
真澄は心の中で思った。
——私は今、とても幸せだ。
冬の夜は静かに更け、しかし新しい年の希望を静かに運んでくるようだった。




