第20章 冬の訪れと、灯る光
十月も終わりに近づき、Lunetteの窓ガラスに朝の霜が付くようになった。
真澄はエプロンを付けながら、店内の飾り付けを考えていた。シンプルなリースと、柔らかいオレンジ色の照明。派手すぎず、温かみのある冬の装いにしたい。
「今年は、特別なクリスマスにしようかな」
朝一番に山田老人が来て、いつもの席で新聞を広げた。
「冬はコーヒーが美味しく感じる季節だな」
「今年はスパイスの効いたブレンドを増やそうと思ってます。山田さんにも飲んでほしいな」
午前中は常連さんたちが途切れなく訪れ、店内は穏やかな会話で満ちていた。彩花は夫との関係が改善傾向にあると言い、遥は大学で文学祭の準備に追われていると楽しそうに話した。
午後、拓也が顔を出した。最近は書店とLunetteのコラボ商品が増え、二人の時間も自然に増えていた。
「クリスマスメニュー、一緒に考えない?」
「いいわよ。君の書店でも、特別なギフトセットを作りましょうか」
二人はカウンターでアイデアを出し合いながら、時折指先が触れ合う。旅行から数ヶ月が経ち、関係はとても穏やかで自然なものになっていた。
夕方、佐々木夫妻が温かい手作りのシチューを届けてくれた。
「寒くなるから、体に気をつけてね」
「おばあちゃん、いつも本当にありがとうございます」
真澄は胸がいっぱいになった。この店を始めた頃は「一人でやる」と決めていたのに、今はたくさんの人の優しさに囲まれている。
閉店後、拓也と二人で店内を片付けながら、真澄はふと言った。
「ねえ、拓也。この店を始めてよかったって、心から思ってる。あなたと出会えて……本当に良かった」
拓也は真澄を抱き寄せ、額に優しくキスをした。
「僕もだよ。君とLunetteが、この街の宝物だ」
その夜、真澄は二階の部屋で温かいハーブティーを飲みながら、窓の外を見ていた。
街の灯りと、Lunetteの看板の柔らかな光。
冬の訪れとともに、自分の人生もまた、新しい章を迎えようとしている。
真澄は静かに微笑んだ。
「これからも、よろしくね。私の大切な場所」
外では、初雪がちらちらと舞い始めていた。




