表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lunetteの午後三時  作者: 蒼狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/24

第18章 帰ってきた朝と、変わらない場所

旅行から帰った翌朝、Lunetteの鍵を開ける音が、いつもより少し軽やかに響いた。


真澄はエプロンを付けながら、昨夜のことを思い出して頰が緩むのを止められなかった。温泉街の夜風、拓也の温もり、静かな告白——すべてが夢のように感じる。


「私、ちゃんと恋してるんだな……」


豆を挽き、湯を沸かし、ハンドドリップでコーヒーを淹れる。いつもの動作が、今日は特別に愛おしく思えた。


九時開店。最初に顔を出したのは山田老人だった。


「おかえり。……顔がいいね、真澄さん」


「またそれですか。山田さん、鋭すぎますよ」


老人はブラックコーヒーを受け取りながら、穏やかに笑った。


「若い頃を思い出すよ。いいことだ。人生は二度目が一番味わい深い」


真澄は照れくさそうに笑った。


午前中、彩花が来て旅行の話を少しだけした。彩花は目を輝かせながら「いいなぁ、私もいつかそんな旅行したい」と呟いた。真澄は温かいカフェオレを出しながら、静かに励ました。


「きっと大丈夫よ。彩花さんなら」


昼過ぎ、遥がバイトで入ってきた。遥は真澄の顔を見るなり大騒ぎした。


「真澄さん! なんか雰囲気変わってませんか!? 温泉旅行、絶対にいい雰囲気だったでしょ! 告白されました!?」


「遥、声が大きいわよ……」


真澄は顔を赤らめながらも、軽く認めた。


「まあ……少し、進展したわ」


遥は大喜びで飛び跳ね、真澄をからかいながらも、心から喜んでくれた。


午後三時頃、拓也が書店から顔を出した。

カウンター越しに目が合うと、二人とも自然と微笑む。


「ただいま」


「おかえりなさい。……昨日のことは、ありがとう」


短い会話だったが、そこに甘い空気が流れていた。拓也は新しいタルトを試食し、「これも書店に置きたい」と嬉しそうに言った。


閉店後、真澄と拓也は店内で少しの間、並んで座った。


「旅行、楽しかったわ。本当に」


「僕も。……これからも、時々こうして出かけたいな」


真澄は頷き、拓也の手に自分の手を重ねた。


「ええ。でも、Lunetteの日常も大事にしたいの。ここが私の居場所だから」


「もちろん。君のペースで、一緒にやっていこう」


その夜、真澄は二階の部屋で日記のようにノートを開いた。


『旅行から帰ってきた。

変わったのは、私の心。

Lunetteは変わらずここにあり、私はここで、ゆっくり恋をしている。』


秋の風が、窓を優しく叩いていた。


Lunetteの看板は今日も柔らかく灯り、静かに街を見守り続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ