地下アジト
古びた地下アジト。
雨音。
鉄臭い空気。
紫苑が、
気絶した胡桃をソファへ雑に降ろす。
海斗
「……は?」
玲央
「お前何持ち帰ってんだ。」
紫苑は濡れた前髪をかき上げながら、
淡々と言った。
紫苑
「目撃者。」
蓮
「いや意味わかんねぇ。」
ソファに横たわる胡桃を見て、
全員が固まる。
びしょ濡れのOL。
しかも、
どう見ても一般人。
海斗
「一般人じゃねぇか!!」
玲央
「終わったな紫苑。」
一樹
「頭でも打ったか?」
紫苑は黙ったまま、
煙草に火をつける。
だが頭から離れない。
恐怖していたはずなのに、
あの女は“死にかけていた男”を見ていた。
普通なら、
自分の命しか考えない。
なのに。
蓮
「……で?
どうすんだよ。」
一樹
「既に顔見られてる。」
海斗
「いやでも一般人だぞ!?」
玲央
「処理するなら早い方が──」
その時。
ソファの上で、
胡桃の指がぴくりと動いた。
全員の空気が止まる。
海斗
「……起きた。」
紫苑
「……。」
胡桃はゆっくり目を開けた。
ぼやける視界。
知らない天井。
煙草の匂い。
低い男達の声。
そして──
目の前に並ぶ、
黒スーツの男達。
「…………。」
胡桃の脳が停止する。
怖い。
いや怖いどころじゃない。
全員、
明らかに“普通じゃない”。
空気が危険すぎる。
胡桃は小さく震えながら、
掠れた声を出した。
胡桃
「……ここどこ?」
沈黙。
海斗
「いやこっちが聞きてぇ。」
胡桃
「……ここどこ?」
沈黙。
黒スーツの男達が、
一斉に胡桃を見る。
その視線だけで、
背筋が凍る。
胡桃の呼吸が浅くなる。
そして。
さっきの光景が、
頭に蘇った。
血。
ナイフ。
倒れた男。
黒いコート。
胡桃
「えっ……
えっ……?」
顔色が真っ白になる。
震える声で、
胡桃は紫苑を指差した。
胡桃
「あなた……
さっき……」
玲央
「見たんだろ?」
海斗
「まぁ、
見られたなら仕方ないよな〜。」
軽い口調。
なのに、
内容が重すぎる。
胡桃
「っ……」
胡桃の瞳に涙が滲む。
蓮
「どうする?」
一樹
「普通なら処理。」
胡桃
「嫌だ……」
声が震える。
胡桃
「死にたくない……っ」
その一言で、
空気が少し止まった。
胡桃は半泣きで頭を下げる。
胡桃
「お願い……
家に帰らせて……!」
胡桃
「なんにも言わないから……!」
必死だった。
恐怖で手が震えている。




