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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
186/193

【幻灯楼の灯子】

真奈が中へ入った瞬間。


カウンターの奥にいた灯子が、にやりと笑った。


灯子

「あら。いらっしゃい。」


灯子

「昼間っから珍しいじゃない。」


真奈

「いいだろ、別に。」


灯子

「荒れてるの?」


真奈

「普通。」


灯子

「普通の女は、昼間からそんな顔でここに来ないわよ?」


灯子は、クスクスと笑った。


真奈

「酒。」


灯子

「はいはい。」


灯子は、笑いながらグラスを取った。


灯子

「バイクは置いて帰りなさいよ。」


真奈

「分かってるよ。」


灯子は、細い指でグラスを撫でるように取った。


その仕草だけで、

人ではないものだと分かる。


真奈がグラスを受け取った時。


灯子は、カウンターの下で小さく指を動かした。


誰にも見えない狐火のような光が、

一瞬だけ灯る。


真奈

「……今、何した。」


灯子

「何も?」


真奈

「嘘つけ。」


灯子

「荒れてる子には、見張りが必要でしょう?」


真奈

「灯子。」


灯子

「はいはい。酒、濃いめね。」


そう言いながら、灯子は真奈の酒を作っていた。


真奈は深いため息をつきながら、周りの様子を見る。


人。


人ならざる者。


様々な者達が、ドリンク片手に踊っている。


ソファに腰掛け、女を口説いている者。


友人同士で談笑している者。


同族同士で肩を組んで笑っている者。


人間と妖が、当たり前のように同じテーブルを囲んでいる。


各々が、好き勝手に楽しんでいた。


真奈

「変わらず……か。」


灯子が、グラスを差し出した。


灯子

「何がよ?」


真奈

「いや、こっちの話。」


そう言って、真奈は酒を飲む。


真奈

「濃い!!!」


真奈

「濃すぎだろ!」


灯子

「あら、ごめ~~ん。」


灯子は、クスクスと笑っていた。


灯子

「で?」


灯子

「何があったの?」


灯子

「周りは密かに、てんやわんやじゃない。」


真奈

「色々。」


灯子

「また、一人で解決しようとしてないでしょうね?」


真奈

「今回は、そうもいかないよ。」


真奈

「全員だよ。」


灯子は前のめりになり、

カウンターに両肘をついて真奈を見た。


灯子

「あんたも、もう三十過ぎたんだよ。」


灯子

「男の一人や二人、いないの?」


真奈

「何の話だよ!」


灯子

「あんたは昔っから、男との色恋沙汰なんざ聞いたことがないからねぇ。」


灯子

「わたしゃ、心配なんだよ~~。」


真奈

「面白がってるだけだろ。」


灯子

「惚れた腫れたの話はないのかい?」


真奈

「あるわけないだろ。」


真奈

「面倒臭いだけ。」


真奈

「そんな暇があるなら、私は寝る。」


灯子

「も~~~~!!!」


灯子は、カウンターを軽く叩いた。


灯子

「あんたって子は、本当に色気のない返事しかしないねぇ!」


真奈

「うるさいな。」


真奈

「色気で結界は護れないだろ。」


灯子

「そういうところだよ!!」

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