【幻灯楼】
その時。
車を車庫へ入れていた陸斗と隼人が戻ってきた。
陸斗
「姉ちゃんのバイクがないや。」
隼人
「どっか行ったな~。」
そう言いながら、二人は靴を脱いで中へ入ってきた。
廊下を歩いていると、杏奈と玲央が話しているのが見えた。
陸斗
「どした?」
杏奈
「お姉ちゃんが居ないって、桐生が騒いだのよ。」
陸斗
「は?」
陸斗
「居なくなるのは毎度のことだし、気にしなくていいんじゃね?」
隼人
「そうそう。」
隼人
「息抜きだよ。息抜き。」
玲央
「そんなに頻繁に行くのか?」
陸斗
「ま~ね。」
そう言って、陸斗と隼人は目を合わせた。
その顔は。
少しだけ、苦笑いに近かった。
________________________
その頃。
街外れの古びたビルの前に、一台のバイクが止まった。
黒い大型バイク。
エンジン音が、低く唸る。
ヘルメットを外した真奈は、乱れた髪をかき上げた。
真奈
「……だる。」
昼間だというのに。
ビルの入口からは、重低音が漏れていた。
ドン。
ドン。
ドン。
心臓を直接叩くような音。
真奈は迷わず、地下へ続く階段を降りていく。
一段。
また一段。
下へ降りるほど、音は大きくなった。
壁が震える。
足元が震える。
胸の奥まで、音が響く。
そして。
階段の先にある重たい扉の前で、真奈は足を止めた。
一瞬だけ、息を吐く。
真奈
「……行くか。」
真奈は、その扉を開けた。
中は、真っ暗だった。
昼間の光など、一つも入らない。
赤。
青。
紫。
金。
色とりどりのライトが、闇の中を切り裂く。
爆音。
歓声。
笑い声。
人間。
妖怪。
人ではないもの。
人に似たもの。
そのすべてが、同じ空間で踊っていた。
ここでは。
誰が何者かなど、どうでもよかった。




