【帰ってきた声】
玲央達も、庭から玄関先へ歩いて行った。
ちょうど、全員が荷物を下ろしているところだった。
先に気がついたのは、和真だった。
和真
「海兄ちゃん!」
海斗
「和真君!」
二人は、嬉しそうに手を振り合った。
今の海斗には、
恐れられる戦闘狂の顔はない。
ただの。
子供好きなお兄ちゃんにしか見えなかった。
一方で。
蓮は、ひたすら真奈を探していた。
蓮
「どこ行ったんだよ。」
そんな蓮を横目で見ながら、杏奈はクスッと笑った。
杏奈
「たぶん、幻灯楼よ。」
蓮
「は?」
蓮
「げん……なんだって?」
杏奈
「げんとうろう。」
和真
「真っ暗で、音がドンドン鳴ってるとこ!」
雄一
「妖怪も人間も一緒に踊る!」
伊織
「真奈姉、そこで歌う!」
蓮
「……は?」
海斗
「蓮、顔。」
蓮
「CLUBみたいなとこってことか。」
そう言って、蓮はなぜか玄関へ向かった。
杏奈
「ちょっと。」
蓮は止まらない。
杏奈
「場所も分からないのに、どうするの?」
蓮は、ぴたりと立ち止まった。
蓮
「……。」
杏奈
「心配しなくていいわよ。」
杏奈
「子供じゃあるまいし。」
蓮
「ふざけんな。」
蓮
「あいつに何かあったら、ただじゃおかねぇ。」
杏奈
「姉さんに惚れたわけ?」
蓮
「うるせぇ!」
蓮は、顔を背けた。
その耳まで、真っ赤になっていた。
海斗
「分かりやす。」
蓮
「黙れ。」
その頃。
紫苑は、胡桃の前で立ち止まっていた。
胡桃
「あ、氷室さん。」
紫苑
「荷物。」
胡桃
「え?」
紫苑
「持つ。」
胡桃
「あ、ありがとうございます。」
胡桃は少し戸惑いながらも、荷物を差し出した。
紫苑は、それを黙って受け取る。
一樹
「……お前も分かりやすいな。」
紫苑
「何が。」
一樹
「何でもない。」
一樹は、小さく息を吐くと、そのまま中へ入っていった。
紫苑
「……。」
胡桃
「あの、重くないですか?」
紫苑
「軽い。」
胡桃
「そうですか?」
紫苑
「ああ。」
胡桃
「ありがとうございます。」
紫苑は何も答えなかった。
ただ、胡桃の隣を歩いていた。
一方で。
蓮や杏奈達は、まだ言い合いをしていた。
蓮
「どこだよ。」
蓮
「連れてってくれ。」
杏奈
「嫌よ。」
杏奈
「あんたを連れてきたなんて知れたら、私がただじゃ済まないじゃない。」
玲央
「やめとけ、蓮。」
玲央
「杏奈さんも困ってるじゃないか。」
蓮
「でも!」
鷹臣
「でももクソもねぇ。」
鷹臣
「いいから、行くぞ。」
鷹臣は、蓮の首根っこを掴むようにして引っ張った。
蓮
「離せーー!!!」
杏奈
「うるさ。」
玲央
「すまない。」
玲央
「あんな奴じゃないんだが……。」
杏奈
「仕方ないわ。」
杏奈
「何かが外れかけてるんでしょうし。」
玲央
「外れかけてる?」
杏奈
「封じられていたものか。」
杏奈
「本能か。」
杏奈
「それとも、もっと別のものか。」
杏奈
「まだ分からないけどね。」
玲央
「……。」
杏奈
「落ち着いたら、私だけ行ってくるわ。」
杏奈
「顔なじみもいるし。」
玲央
「すまない。」
杏奈
「いいわよ。」
杏奈
「私も少し息抜きしたいし。」
そう言って、杏奈は軽く伸びをした。
そして。
玲央に向かって、ふわっと笑った。
玲央
「……。」
玲央は、一瞬だけ言葉を失った。




