【迷いと不安】
玄三の話が終わった後。
玲央達は、外へ出た。
綺麗に手入れされた庭。
木々は風に揺れ、静かにざわめいている。
鳥達はさえずり合い、気持ちの良い風が吹いていた。
誰も、すぐには口を開かなかった。
さっきの言葉が、まだ耳に残っている。
絶対に、お前達を見捨てん。
共に戦い。
共にある。
海斗と鷹臣は、縁側に腰を下ろしていた。
一樹は、腕を組んで庭を見ている。
紫苑は、少し離れた場所で空を仰いでいた。
蓮は、その場にしゃがみ込み、地面を睨んでいる。
玲央だけが、黙って立っていた。
誰も、すぐには口を開かなかった。
さっきの言葉が、まだ耳に残っている。
海斗
「……重いね。」
鷹臣
「ああ。」
一樹
「簡単に返事をしていい話ではない。」
紫苑
「……。」
蓮
「でも、逃げられねぇんだろ。」
玲央は黙っていた。
海斗
「玲央?」
玲央
「……俺は、今まで選んできたつもりだった。」
玲央
「神崎組としてどう動くか。」
玲央
「誰を守るか。」
玲央
「誰を切るか。」
玲央
「全部、俺が決めてきた。」
一樹
「ああ。」
玲央
「でも今回のこれは、そういう話じゃない。」
玲央
「俺が組長として決めていい話じゃない。」
玲央は、全員を見る。
玲央
「お前達一人一人の人生の話だ。」
その言葉に、全員が黙った。
海斗
「……玲央が決めてよ、って言いたいところだけど。」
海斗
「今回は、それ言っちゃ駄目なやつだよね。」
鷹臣
「珍しく分かってるな。」
海斗
「珍しくって何。」
一樹
「俺は、知るべきだと思う。」
玲央
「理由は。」
一樹
「知らなければ、対処できない。」
一樹
「俺達が何を持っているのか。」
一樹
「何を狙われているのか。」
一樹
「そこが分からないままでは、次も同じように罠にかかる。」
鷹臣
「同感だ。」
鷹臣は、自分の手を見る。
鷹臣
「俺は、ずっと変な音を聞いてた。」
鷹臣
「病院でも、別邸でも。」
鷹臣
「異形とは違う気配だ。」
鷹臣
「気のせいで片付けるには、もう無理がある。」
海斗
「俺はさ……正直、怖いよ。」
海斗は軽く笑った。
けれど、その笑いはいつもより弱かった。
海斗
「自分の中に何かあるって言われても、何それって感じだし。」
海斗
「過去の清算とか、魂の奥とか、死後に受けるはずだったものとか。」
海斗
「普通に怖い。」
一樹
「怖くない方がおかしい。」
海斗
「だよね。」
再び沈黙がはしった。




