【一時の休息】
食事が終わる頃には、神崎組は全員、言葉数が少なくなっていた。
腹が満たされたからなのか。
湯で身体が緩んだからなのか。
それとも、この家の空気に飲まれたからなのか。
分からない。
ただ、妙に眠かった。
玲央
「……。」
海斗
「なんか……眠い。」
一樹
「ああ。」
鷹臣
「飯食っただけで、こんなに眠くなるか?」
紫苑
「……眠い。」
蓮
「……俺も。」
真奈
「そりゃそうだろ。」
真奈
「風呂で表面の穢れ落として、飯で中を整えたんだ。」
真奈
「体が休めって言ってんだよ。」
玲央
「……穢れ。」
真奈
「詳しい話は明日。」
玄三
「そうじゃ。」
玄三
「今のお前達に必要なのは、説明ではない。」
玄三
「休息じゃ。」
由美
「座敷に布団を敷いてあるわ。」
由美
「今日はもう休みなさい。」
千代
「明日になれば、少しは頭も働くさ。」
千代
「今は寝るのが一番だよ。」
全員、案内されるまま座敷へ向かった。
そこには、人数分の布団が敷かれていた。
海斗
「……布団だ。」
鷹臣
「見りゃ分かる。」
海斗
「いや、そうじゃなくて……。」
一樹
「人数分、用意されている。」
玲央
「……早いな。」
蓮
「何なんだよ、この家。」
紫苑
「……。」
由美
「ふふ。驚いた?」
由美
「陸斗達が来たら、一緒に布団敷いたらいいわ。」
千代
「今日は、ゆっくり休みなさい。」
そう言って、由美と千代は扉を閉めた。
全員、違和感があった。
謎は山ほどある。
何一つ、解決していない。
それなのに。
言われるがままになっている。
海斗は布団に触れた。
海斗
「柔らか……。」
鷹臣
「感想が子どもか。」
海斗
「だって柔らかいんだよ。」
一樹
「……確かに。」
玲央は、小さく息を吐いた。
玲央
「今日は、もう眠い。」
玲央
「考えるのは無理だ。」
蓮
「……ああ。」
紫苑
「……眠い。」
その一言に、全員が少しだけ黙った。
紫苑が、そんなことを言うのは珍しかった。
けれど、誰も茶化さなかった。
全員、同じだったからだ。
玲央
「……寝よう。」
誰も反論しなかった。
それぞれが布団に入る。
柔らかくて。
温かい。
謎は山ほどある。
それでも、まぶたはゆっくりと重くなっていく。
神崎組は、何一つ分からないまま。
その夜、すぐに眠りについた。




