【訳の分からない世界】
全員、風呂から上がり、リビングへ向かった。
すると、すでに食事の準備が整っていた。
玄三
「おっ。」
玄三
「少しはスッキリしたな。」
玄三は、神崎組を順に見た。
玄三
「しかし……。」
玄三
「まだ濃いな。」
玲央
「……濃い?」
玄三
「これだと……二日。」
玄三
「いや、三日はかかるかもしれんな。」
真奈
「それでも、やるしかない。」
真奈
「落とさない限り、次には進めん。」
玲央
「なんの事だ?」
海斗
「落とすって、何を?」
一樹
「……。」
全員、訳が分からなかった。
だが、玄三はそれ以上を言わなかった。
玄三
「話は明日じゃ。」
玄三
「今は、食え。」
由美
「あら、上がった?」
由美
「ご飯できてるわよ。」
由美
「食べなさい。」
由美は、にこっと笑って迎えた。
温かいご飯。
湯気の立つ味噌汁。
大皿に盛られた料理。
それを前に、神崎組は全員立ち尽くした。
真奈
「何してんだ?」
真奈
「食べないの?」
玲央
「あ……いや。」
海斗
「どうしていいか……分かんなくて。」
真奈
「は?」
真奈
「座って食べればいいんじゃね?」
真奈
「てか、今までどうやって食べてたんだ?」
一樹
「いや、そういう意味じゃなくて。」
海斗
「真奈さん、そうじゃないんだよね~~。」
真奈
「じゃあ何だよ。」
その時、玄三が小さく笑った。
玄三
「はははは。」
玄三
「坊主ども。」
玄三
「戸惑うのは分かる。」
玄三
「だが、ここは冠崎家だ。」
玄三
「遠慮はいらん。」
玄三
「食べなさい。」
全員、何が何だか分からなかった。
突然の転移。
総本家。
玄三。
穢れ。
狙われる理由。
何もかもが、普通ではない。
なのに、冠崎家はそれを当たり前のように受け入れている。
その現状に、神崎組は困惑を隠せなかった。
それに、いち早く気づいたのは千代だった。
千代
「ほっほっほ。」
千代
「まあ、今までの生活が一変したんじゃ。」
千代
「急に色々言われても、頭が追いつかんじゃろう。」
千代
「少しだけなら教えるよ。」
千代
「何が知りたい?」
玲央
「……なぜ。」
玲央
「なぜ、俺達は狙われるんですか。」
海斗
「そうだ。」
海斗
「それに、なんでここが安全なんだ?」
一樹
「あの紫色の光は……。」
一樹
「それに、転移とは……。」
千代
「ほっほっほ。」
千代
「いっぺんに話すのは酷じゃなぁ。」
真奈
「じゃあ、簡単に言う。」
真奈は、神崎組を見た。
真奈
「お前達が狙われるのは、お前達の中にある霊力が関係している。」
真奈
「つまり、生い立ちだよ。」
真奈
「それを全員、今まで見ない振りして生きてきたんじゃないのか?」
その言葉に、全員の身体がわずかに強張った。
玲央
「……。」
海斗
「……。」
一樹
「……。」
鷹臣
「……。」
紫苑
「……。」
蓮
「……。」
真奈
「ここが安全なのは、じいちゃんとばあちゃん、それに色んな方からの加護があるからだ。」
真奈
「この屋敷は護られてる。」
真奈
「足取りも、気配も、ここへ入った時点で一度消えた。」
真奈
「だから、今は安全なんだよ。」
海斗
「……足取りが、消えた?」
真奈
「ああ。」
真奈
「追えなくなったってこと。」
一樹
「……なるほど。」
一樹
「だから総本家へ移動したのか。」
真奈
「そういうこと。」
玲央
「では、あの紫の光は。」
真奈
「それは……。」
真奈は少しだけ考えた。
真奈
「父さん。頼む。」
その声の直後。
修一
「はいはい。」
いつの間にか、修一が全員の後ろに立っていた。
全員
「うわ!!!」
修一
「はははは。」
修一
「そんなに驚くな。」
海斗
「いや、驚きますって!」
修一はゆっくりと椅子に座った。
修一
「そうだな。」
修一
「あれは、真奈の気配を探り、この場所と真奈のいる場所を繋いだものだ。」
一樹
「場所を、繋ぐ……。」
修一
「ああ。」
修一
「お互いの霊力の波動、と言えばいいかな。」
修一
「私の波動と真奈の波動を合わせ、空間に道を作った。」
修一
「それが、さっき君達が通ってきた転移だよ。」
鷹臣
「そんなことが、現実に可能なのか。」
真奈
「可能になってるから、今ここにいるんだろ?」
紫苑
「いや、そうなんだが……。」
真奈
「ま、訳分からん方が正しいよ。」
全員
「え?」
真奈
「そりゃそうだろ。」
真奈
「今までの生活と違うんだからさ。」
真奈
「理解しろって言われても、理解できないのが普通。」
真奈
「ここで、理解しましたって言われた方が怖いわ。」
修一
「確かに。」
玄三
「ぶわはははは。」
玄三
「そりゃそうじゃ。」
千代
「ほっほっほ。」
由美
「ふふ。」
なぜか、リビングは笑いに包まれていた。
神崎組は、まだ何一つ理解できていない。
それでも。
少なくとも今、自分達が責められているわけではないことだけは分かった。




