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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
168/193

【総本家の湯】

案内された座敷に荷物を置き、神崎組はリビングへ向かった。


そこには、真奈が勝手口の近くで煙草を吸っていた。


真奈

「お前たち、先に風呂入れ。」


玲央

「え?」


真奈

「え? じゃねぇ。入れ。」


千代

「これ、真奈。」


千代

「そんなふうに言うもんじゃないよ。」


真奈

「はいはい。」


千代

「お風呂はこっちじゃよ。」


千代

「着替えを持っておいで。」


玲央

「は、はい。」


全員は一度座敷に戻り、着替えを持って廊下へ出た。


そこには、千代が待っていた。


千代

「大丈夫かい?」


千代

「こっちだよ。」


千代に案内され、長い廊下を歩く。


しばらく進むと、縁側へ出た。


その先には、綺麗に手入れされた日本庭園が広がっていた。


海斗

「すげ~~。」


一樹

「綺麗だな。」


千代

「おやおや、ありがとねぇ。」


千代

「玄三さんの趣味なんだよ。」


鷹臣

「趣味のレベルじゃねぇだろ。」


千代

「ほほほ。」


千代

「老後はゆっくりしたくてねぇ。」


千代

「まあ、色々やることもあるけどね。」


千代

「それでも、植物や風や水、土に触れていると、心が落ち着くんだよ。」


紫苑

「……お婆さんも、一緒に?」


千代

「ああ。」


千代

「私は他にも、畑なんかもしてるんだよ。」


千代は柔らかく笑った。


千代

「ほら、ここが風呂だよ。」


引き戸を開ける。


そこにあったのは、普通の脱衣所とは思えないほど広い空間だった。


「広っ!!」


千代

「ほほほ。」


千代

「全員集まると、これでも狭くなる時があるんだよ。」


神崎組は、全員呆然とした。


千代

「ああ、それと湯なんだけどね。」


千代

「ちょっと染みるかもしれない。」


玲央

「染みる?」


千代

「ああ。」


千代

「でも、しっかり温もって出るんだよ。」


千代

「少しだけど、穢れが落ちるからね。」


玲央

「穢れ……?」


千代

「ほほほ。」


千代

「まあ、入ったら分かるよ。」


千代

「出たらリビングへおいで。」


千代はにっこり笑うと、そのまま戻っていった。


全員、まずは湯を身体にかけた。


その瞬間。


玲央

「な、なんだ……!」


身体のあちこちが、傷があるわけでもないのに痛み出した。


海斗

「いて~~……!」


一樹

「うわ、顔が痛い。」


紫苑

「……体中に、針が刺さるみたいな痛みが来る。」


鷹臣

「うわ。マジで顔が痛ぇ!」


「う……!」


蓮は胸を押さえた。


「胸が……なんか、染みる。」


それぞれが鈍い痛みを受けながら、身体を流していく。


そして、湯に浸かった。


海斗

「いててて……。」


玲央

「う~~……これは、痛いな。」


一樹

「両手と頭が痛い。」


紫苑

「……くっ。」


鷹臣

「ひ~~~~。」


「……。」


蓮は胸を押さえたまま、眉を寄せる。


だが、しばらくすると。


「……あれ?」


玲央

「どうした。」


「俺、あんまり痛くなくなった。」


全員

「え?」


「え?」


全員の視線が、一斉に蓮へ向いた。


海斗

「何それ。ずるくない?」


「知らねぇよ。」


一樹

「胸は?」


「まだ少し染みるけど……さっきほどじゃねぇ。」


玲央

「……。」


しばらくすると、鷹臣が顔を上げた。


鷹臣

「あれ?」


海斗

「今度は何?」


鷹臣

「俺もだ。」


鷹臣

「痛みが引いてきた。」


海斗

「は~~?」


海斗は自分の腕を見る。


海斗

「……あれ?」


玲央

「どうした。」


海斗

「俺も、少し楽になってきた。」


一樹

「……確かに。」


一樹は両手を見た。


一樹

「手の痛みが引いている。」


紫苑

「……。」


紫苑も黙ったまま、少しだけ息を吐いた。


体中を刺すような痛みが、少しずつ薄れていく。


湯の中へ溶けていくように。


重かった身体が、わずかに軽くなっていく。


玲央

「……なんだったんだ。」


誰も、すぐには答えられなかった。


少しだけど、穢れが落ちるからね。


千代の言葉が、全員の頭をよぎった。

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