【変な怒り】
全員が、しばらく動けなかった。
外に残る、黒い気配。
消えた骸。
そして、空から落ちてきた不気味な声。
海斗
「……なんなんだよ、今の。」
鷹臣
「骸って……。」
玲央
「修一さん。」
玲央
「あれは、一体なんなんですか。」
修一
「……。」
修一はすぐには答えなかった。
真奈は、骸が消えた方を睨んでいる。
その横顔を見た瞬間。
蓮の奥で、何かが燃え上がった。
真奈が狙われた。
ただ、それだけで。
胸の奥から、どうしようもない怒りが湧いた。
理由なんて分からない。
なぜ、こんなにも腹が立つのか。
なぜ、あの男が真奈を見た瞬間に、全身が熱くなったのか。
分からない。
けれど。
蓮
「……あいつ。」
蓮の声が、低く落ちた。
全員が蓮を見る。
蓮
「あいつ、ぶっ殺す。」
真奈
「……は?」
蓮は、骸が消えた闇を睨んでいた。
拳が震えている。
怒りで。
殺意で。
それとも、自分でも分からない何かで。
一樹
「蓮。」
蓮
「真奈を狙いやがった。」
蓮
「ふざけんな。」
その言葉に、空気が止まる。
真奈
「……。」
真奈は、蓮を見た。
蓮は気づいていない。
自分が今、何を口にしたのか。
ただ、怒っていた。
ただ、許せなかった。
真奈
「……お前。」
蓮
「あ?」
真奈
「私、別に怪我してないぞ。」
蓮
「そういう問題じゃねぇだろ!」
真奈
「……。」
真奈は一瞬、きょとんとした。
それから、少しだけ眉を寄せる。
真奈
「なんでお前が怒ってんだ?」
蓮
「……。」
蓮
「知らねぇよ!」
蓮は自分でも分からないまま、吐き捨てた。
蓮
「でも、腹立つんだよ!」
その場に、重い沈黙が落ちた。




