【不気味な影】
ソファーに座る。
修一と真奈。
相対するように、玲央と一樹が座った。
その後ろには、海斗と紫苑。
ソファーから少し離れた場所に、鷹臣が立っている。
蓮は、壁際に立ったまま、どこか落ち着かない様子だった。
修一
「では、話を聞いてもいいかな?」
玲央
「どうぞ。」
修一
「今回の依頼相手は、大きい方。」
修一
「で、合っているかい?」
その瞬間。
神崎組の全員が、わずかに反応した。
玲央
「……何故です?」
修一
「……なるほど。」
修一は静かに目を細める。
修一
「そう来たか。」
玲央
「…………。」
修一
「では、違う角度から聞こう。」
修一
「その依頼相手の交流関係。」
修一
「背後にある繋がり。」
修一
「最近近寄ってきた人物。」
修一
「その中に、不審な動きは?」
玲央
「…………。」
玲央は少し黙った。
それから、静かに口を開く。
玲央
「いや。」
玲央
「俺たちは、必要な情報しか知らない。」
玲央
「日時。場所。護衛の人数。護衛が何を所持しているか。」
玲央
「だいたい、護衛は限られた所を使う。」
玲央
「俺たちはそこを調べて、依頼が本物かどうかを確認し、こちらも準備をする。」
玲央
「今回は、所持品のない護衛だった。」
玲央
「だから、紫苑を行かせた。」
一樹
「周辺は調べました。」
一樹
「ですが、不審な人物の接触や、目立った動きは見られていません。」
修一
「……そうか。」
真奈
「氷室に聞きたい。」
紫苑
「……ああ。」
真奈
「あの日、異形に変化した奴は、どんな感じで変化した?」
紫苑
「最初は、普通に護衛をしていた。」
紫苑
「依頼者が店を出た時だ。」
紫苑
「急に、空を見上げた。」
真奈
「空を?」
紫苑
「ああ。」
紫苑
「見上げたと思ったら、急に大声で笑い出した。」
紫苑
「それから、身体が変な形に変化していった。」
紫苑
「そして、いきなり俺を見た。」
真奈
「は?」
真奈の目が細くなる。
真奈
「お前、隠れてたんだろ?」
紫苑
「ああ。」
紫苑
「相手の死角にいた。」
真奈
「待て待て……。」
真奈は眉間に皺を寄せる。
真奈
「親父。」
修一
「ああ。」
真奈
「その日……何の日だ?」
修一は、わずかに沈黙した。
修一
「……新月だ。」
真奈
「クソ!」
真奈が低く吐き捨てる。
真奈
「やられた。」
真奈
「見落としてた。」
真奈
「月だ!」
修一
「……マズいな。」
玲央
「待ってください。」
玲央の声が低くなる。
玲央
「今回の件と、月に何の関係が?」
真奈
「大ありだ。」
真奈
「奴らは、タイミングを見てた。」
真奈
「自分たちの力加減。」
真奈
「月の巡り。」
真奈
「それがぴったり合った日が、この前だったんだ。」
真奈
「たぶん、神崎組はたまたまそこに居合わせた。」
真奈
「向こうにとっても誤算だったはずだ。」
真奈
「だが、良い誤算だった。」
玲央
「良い誤算……?」
修一
「ああ。」
修一の声が、静かに落ちる。
修一
「君たちは、向こうに見つかった。」
修一
「しかも、冠崎家との繋がりまで見えてしまった。」
修一
「かなり危険な立場だ。」
海斗
「なんなんだよ。」
海斗
「何の話だよ!」
修一
「君たちは、狙われる。」
海斗
「……。」
修一
「狩られる側に回ったということだ。」
鷹臣
「待て待て。」
鷹臣
「一体、何の話なんだよ!」
真奈
「一刻の猶予もない。」
真奈
「早急にこの場を――」
その時。
真奈が、ぴくりと止まった。
空気が変わる。
修一
「安心しろ。」
修一は静かに言った。
修一
「もう、手筈は取ってある。」
真奈
「え?」
次の瞬間。
外で、大きな爆発音が響いた。
屋敷が、低く震える。
海斗
「うわっ!」
蓮
「なんだ!?」
一樹
「外か!」
玲央
「全員、動くな!」
真奈
「父さん。」
修一
「ああ。」
修一は立ち上がる。
修一
「すでに、結界は張ってある。」
外から、笑い声が響いた。
「あははは!」
「あ~~はっはっは!」
その声に、真奈の表情が変わった。
真奈
「……来たか。」
全員が、外へ向かった。




