【神崎組との再会】
修一は玄関を出て、車に乗り込む前にスマホを取り出した。
表示された名前は、神崎玲央。
一度だけ息を吐く。
修一
「……さて。」
通話ボタンを押す。
数回の呼び出し音の後、相手が出た。
玲央
『……冠崎さん。』
修一
「朝から悪いな。」
玲央
『いえ。こちらからも、連絡しようと思っていました。』
修一
「昨夜の件だな。」
玲央
『はい。』
短い沈黙。
修一は、車のドアに手をかけたまま空を見上げた。
修一
「神崎さん。」
玲央
『はい。』
修一
「昨夜の依頼について、確認したい。」
玲央
『依頼……ですか。』
修一
「ああ。」
修一
「誰から来た依頼か。」
修一
「どういう経路で入ったのか。」
修一
「標的の情報。」
修一
「そして、紫苑君があの場に行くことを、誰が知っていたのか。」
玲央の声が、少し低くなる。
玲央
『……罠だったと?』
修一
「可能性は高い。」
玲央
『神崎組を狙った罠ですか。』
修一
「それだけなら、まだいい。」
玲央
『……。』
修一
「冠崎家を炙り出すための罠だった可能性もある。」
電話の向こうで、玲央が息を呑む気配がした。
玲央
『……胡桃さんの怪我は。』
修一
「残滓はない。かすり傷だ。」
玲央
『そうですか……。』
修一
「ただし、普通の下位異形ではなかった。」
玲央
『やはり、そうですか。』
修一
「話を聞きたい。」
玲央
『分かりました。こちらも、お話ししたいことがあります。』
修一
「場所はこちらで指定する。」
玲央
『冠崎家、ですか?』
修一
「いや。」
少し間を置いて、修一は言う。
修一
「神崎組の別荘へ行く。」
玲央
『……こちらへ?』
修一
「ああ。」
修一
「そちらの現場を見たい。」
修一
「それと、紫苑君本人にも確認したいことがある。」
玲央
『分かりました。』
修一
「今日の夕方、都合はつくか。」
玲央
『つけます。』
修一
「では、夕方に伺う。」
玲央
『お待ちしています。』
修一
「それと。」
玲央
『はい。』
修一
「今後、似た依頼が入った場合は、すぐに連絡してくれ。」
玲央
『……分かりました。』
修一
「独断で動くな、という意味ではない。」
修一
「だが、昨夜のようなものが絡むなら、もう神崎組だけの問題では済まない。」
玲央
『……承知しました。』
修一
「では、また後ほど。」
玲央
『はい。』
通話が切れる。
修一は、しばらくスマホを見つめていた。
そして、小さく息を吐く。
修一
「……もう、隠して済む段階じゃないな。」
朝の光の中、修一は車へ乗り込んだ。




