【翌日・夜 神崎組別邸】
海斗
「おかえり~~。」
海斗
「どこ行ってたんだよ。」
紫苑
「別に。」
蓮
「あれ?」
蓮
「紫苑、なんか機嫌よくない?」
紫苑
「は?」
蓮
「いや、顔が怖くない。」
紫苑
「いつも通りだ。」
一樹
「良いことあったな。」
紫苑
「……。」
海斗
「え、マジ?」
蓮
「なになに?」
蓮
「紫苑の良いことってなに?」
紫苑
「うるせぇ。」
鷹臣
「何があったんだよ?」
紫苑
「……アイス食った。」
沈黙。
海斗
「……は?」
蓮
「アイス?」
一樹
「お前が?」
紫苑
「殺すぞ。」
紫苑
「何だよ。」
海斗
「いや、待て。」
海斗
「情報量が多い。」
蓮
「紫苑が、アイス?」
紫苑
「俺だって食べる時はある。」
鷹臣
「何味だ。」
紫苑
「そこかよ。」
一樹
「何味だ。」
紫苑
「お前もか。」
蓮
「で? 何味?」
紫苑
「……ストロベリー。」
再び沈黙。
海斗
「ストロベリー。」
蓮
「紫苑が。」
一樹
「ストロベリー。」
鷹臣
「…………。」
紫苑
「何だよ。」
海斗
「いや、破壊力がすごい。」
蓮
「想像できないのに、想像したら面白い。」
海斗
「しかも、たぶん無表情で持ってたんだろ?」
蓮
「やばい。見たい。」
紫苑
「殺す。」
海斗
「で?」
紫苑
「……。」
海斗
「誰と?」
紫苑
「……は?」
蓮
「一人でアイスは食べないだろ。」
蓮
「どう考えても。」
紫苑
「うるせぇ。」
一樹
「…………。」
紫苑
「……。」
海斗
「あ。」
蓮
「あ。」
鷹臣
「覚えてるな。」
紫苑
「殺すぞ、お前ら。」
海斗
「誰とは言ってないけど?」
蓮
「墓穴掘ったな。」
紫苑
「黙れ。」
けれど、いつもの紫苑なら、ここで本気の殺気が出ていた。
でも今は違う。
少しだけ面倒くさそうで。
少しだけ居心地が悪そうで。
それでも、どこか空気が柔らかかった。
一樹
「……悪くない顔だな。」
紫苑
「黙れ。」
蓮
「やっぱ良いことあったんじゃん。」
紫苑
「うるせぇ。」
海斗
「ストロベリーか~~。」
鷹臣
「似合わねぇな。」
紫苑
「全員殺す。」
笑い声が、別荘に広がった。
昨夜の重い空気が、ほんの少しだけ薄れていく。
紫苑は何も言わなかった。
けれど、スマホに新しく増えた連絡先のことだけは、
誰にも言わなかった。




