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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
148/193

【翌日・夕方 夕暮れの帰り道】

その後、紫苑が立ち上がった。


紫苑

「送る。」


胡桃

「え? 大丈夫ですよ。」


紫苑

「昨日怪我した奴を、一人で帰せるか。」


胡桃

「でも……。」


紫苑

「いいから。」

挿絵(By みてみん)


胡桃は少し困ったように笑った。


胡桃

「……じゃあ、お願いします。」


二人は並んで歩き出した。


公園の木々の間を、風が抜けていく。


胡桃は、隣を歩く紫苑の横顔をそっと見た。


昨日は、ただ知っている人だった。


血の匂いがして。


鋭い目をして。


近づいてはいけない人だと思った。


でも今は。


少し不器用で。


少し優しくて。


笑うのが下手な人。


胡桃

「……。」


胸の奥が、少しだけ跳ねた。


紫苑

「何見てんだ。」


胡桃

「えっ、あっ、何でもないです!」


胡桃は慌てて前を向く。


紫苑

「……変な奴。」


胡桃

「また変って言いました!」


紫苑

「事実だろ。」


胡桃

「違います!」


紫苑は、ほんの少しだけ口元を緩めた。


胡桃はそれに気づいて、また胸が跳ねた。


どうしてかは、まだ分からない。


ただ。


隣を歩くこの時間が、少しだけ嬉しかった。


胡桃

「氷室さん、今日は少し顔色良くなりましたね。」


紫苑

「……そうか?」


胡桃

「はい。」


胡桃

「最初、すごく苦しそうでした。」


紫苑

「……。」


胡桃

「少しでも楽になったなら、良かったです。」


紫苑

「……お前は、誰にでもそうなのか。」


胡桃

「え?」


紫苑

「そうやって、助けるのか。」


胡桃

「ん~~……。」


胡桃は少し考えた。


胡桃

「目の前で困ってる人がいたら、放っておけないだけです。」


紫苑

「……危なっかしいな。」


胡桃

「よく言われます。」


胡桃は、へへへっと笑った。


紫苑

「笑うところじゃねぇ。」


胡桃

「えぇ~~。」


紫苑

「本当に危なっかしい。」


胡桃

「でも、氷室さんも助けてくれそうです。」


紫苑

「……。」


胡桃

「昨日、前に出ようとしてくれました。」


紫苑

「……何もできなかった。」


胡桃

「でも、助けようとしてくれました。」


紫苑は黙った。


胡桃は、また少し笑った。


胡桃

「だから、ありがとうございます。」


紫苑

「……礼を言われるようなことはしてねぇ。」


胡桃

「私は、嬉しかったです。」


紫苑は何も言わなかった。


ただ、歩く速度がほんの少しだけ、胡桃に合わせてゆっくりになった。

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