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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
147/193

【翌日・日中 次の約束】

胡桃

「あ、氷室さん。」


紫苑

「何だ。」


胡桃

「口元、アイスついてます。」


紫苑

「は?」


胡桃

「ここです。」


胡桃が、自分の口元を指す。


紫苑は拭こうとするが、違うところを拭いた。


胡桃

「あ、違います。」


胡桃

「こっちです。」


胡桃はハンカチを取り出し、紫苑の口元をそっと拭いた。


紫苑

「っ……。」


胡桃

「取れました。」


紫苑

「……お前、距離近ぇ。」


胡桃

「え?」


胡桃は一瞬固まる。


そして、慌てて身体を離した。


胡桃

「あっ、ご、ごめんなさい!」


紫苑

「……別に、嫌とは言ってねぇ。」


胡桃

「え?」


紫苑

「何でもねぇ。」


紫苑は視線を逸らす。


胡桃

「そろそろ帰らないと、お姉ちゃんに怒られます。」


紫苑

「……そうか。」


胡桃

「今日はありがとうございました。」


紫苑

「礼を言うのは俺だろ。」


胡桃

「え?」


紫苑

「……アイス。」


胡桃

「あ、ふふっ。」


胡桃

「どういたしまして。」


胡桃が立ち上がる。


その瞬間。


紫苑は、反射的に胡桃の手首を掴んでいた。


胡桃

「氷室さん?」


紫苑

「……。」


なぜ掴んだのか、自分でも分からなかった。


ただ。


今、離したら。


この陽だまりみたいな時間が、終わる気がした。


紫苑

「……また。」


胡桃

「え?」


紫苑

「また、会えるのか。」


胡桃は少し驚いた。


それから、柔らかく笑った。


胡桃

「はい。」


胡桃

「会えますよ。」


紫苑

「……そうか。」


胡桃

「氷室さんが会いたいなら。」


紫苑

「……っ。」


紫苑の指先に、少しだけ力が入る。


胡桃

「あれ?」


胡桃

「違いました?」


紫苑

「……違わねぇ。」


胡桃

「ふふっ。」

胡桃


「あ、でも。」


紫苑


「何だ。」


胡桃


「次は、氷室さんが好きな味を選んでくださいね。」


紫苑


「……。」


胡桃


「今日の宿題です。」


紫苑


「宿題?」


胡桃


「はい。好きな味を見つける宿題です。」


紫苑


「……ガキかよ。」


胡桃


「大事です。」


紫苑は、少しだけ笑った。


紫苑


「……分かった。」


胡桃


「約束ですよ。」


胡桃が小指を出す。


紫苑


「……何だそれ。」


胡桃


「指切りです。」


紫苑


「しねぇよ。」


胡桃


「えぇ~~。」


紫苑


「……。」


胡桃が少し残念そうにする。


紫苑は小さく舌打ちした。


紫苑


「……今回だけだ。」


胡桃


「!」


二人の小指が、そっと触れた。


紫苑にとっては、馬鹿みたいな約束だった。


けれど。


胡桃の小指は温かかった。


胡桃


「約束です。」


紫苑


「……ああ。」


この瞬間。


紫苑は思った。


また会いたい。


その言葉を、まだ恋とは知らなかった。

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