【翌日・日中 別編】
翌日。
胡桃
「じゃあ、出てくるね。」
由美
「行ってらっしゃい。楽しんで。」
胡桃
「は~~い。」
玄関を閉める。
外は、いつも通りの街だった。
胡桃は、ぶらぶらと街中を歩く。
いつもの風景。
いつもの道。
けれど、今日は仕事ではない。
目的もない。
ただ歩いているだけ。
そろそろ夏物が出る頃だった。
胡桃
「あの服いいな~~。」
胡桃
「げっ! 高!」
思わず値札を見て、顔を引きつらせる。
胡桃
「あっちに新しいお店か。」
胡桃
「色々出来てるな~。」
いつもは目的があって街に出ることが多い。
買うもの。
行く場所。
用事。
でも今日は、何も決めていない。
胡桃
「ど~しよ~かな~。」
そう思いながら歩いていると、
通り沿いのベンチに、誰かが座っているのが見えた。
そこら中にベンチはある。
座っている人も、何人もいる。
なのに。
なぜか、そのベンチに座っている人だけが、
他と違って見えた。
胡桃
「……おっかし~な~。」
気になってしまう。
見ないふりをして通り過ぎてもよかった。
けれど、どうしても目が離せなかった。
胡桃は、恐る恐る近づく。
近づくほどに、
どこかで知っているような気がした。
その時。
小さく、声が聞こえた。
紫苑
「……くそ。」
聞き覚えのある声。
胡桃は足を止めた。
胡桃
「あの~~~。」
恐る恐る声をかける。
胡桃
「氷室……さん?」
すると、ベンチに座っていた人が、
急に顔を上げた。
氷室紫苑だった。
胡桃
「あ、やっぱり氷室さんだったんですね。」
胡桃は少し安心して、ほっと笑う。
胡桃
「どうかしたんですか?」
胡桃
「気分が悪いとか?」
紫苑
「……。」
胡桃
「なんか、顔色が悪い気がします。」
胡桃
「大丈夫ですか?」
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