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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
137/193

【戻れない夜】

神崎組別荘。


帰ってきてから、紫苑はずっと荒れていた。


紫苑

「くそっ!!!」


壁に拳を叩きつける。


鈍い音が、部屋に響いた。


紫苑

「なんでだよ……!」


もう一度。


拳が壁を打つ。


紫苑

「なんで!!!」


海斗

「おい、紫苑~~~。」


海斗

「ちょっと落ち着けって。」


鷹臣

「…………。」


「おい紫苑!」


「やめとけ!」


紫苑

「うるせぇぇぇ!!!」


紫苑が振り向いた瞬間。


鋭い気配が、弾けた。


「うわっ!!!」


蓮は思わず尻もちをついた。


紫苑

「あっ……。」


紫苑の顔が強張る。


蓮は驚いた顔で、紫苑を見上げていた。


怒りではない。


恐怖でもない。


ただ、何が起きたのか分からない顔。


紫苑

「……っ。」


紫苑は、自分の拳を握りしめた。


紫苑

「クソ……!」


その場の空気が、重く沈む。


誰もすぐには口を開かなかった。


一樹

「また、助けられたのか。」


静かな声だった。


責めているわけではない。


けれど、その一言は、紫苑の奥へ深く刺さった。


紫苑

「…………。」


「一樹……。」


蓮は困惑した表情で一樹を見る。


一樹は、紫苑から目を逸らさなかった。


一樹

「図星か。」


紫苑

「……黙れ。」


一樹

「黙っても、変わらないだろ。」


紫苑の拳が震える。


だが、何も言い返せなかった。


あの時。


胡桃が前に出た。


自分を庇った。


傷を負った。


それなのに。


あの女は、笑った。


“大丈夫です。”


“氷室さんが無事で、良かった。”


紫苑

「……ふざけんなよ。」


小さく呟いた声は、

怒りなのか、悔しさなのか、

自分でも分からなかった。


玲央

「紫苑。」


紫苑

「…………。」


玲央

「今は何を言っても届かないだろうな。」


紫苑は答えなかった。


鷹臣は、黙ったまま立ち上がる。


海斗

「鷹。どこ行くんだよ。」


鷹臣

「ちょっと外だ。」


海斗

「……。」


誰も止めなかった。

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