【憑依ではないもの】
真奈
「あ~~~!!! くそ!」
真奈が乱暴に髪をかき上げた。
真奈
「やっぱ、探り入れるしかないか。」
修一
「どっちにだ。」
真奈
「黄泉連だよ。」
その名前が出た瞬間、
リビングの空気が変わった。
陸斗
「……黄泉連。」
隼人
「また面倒なの出てきたな。」
真奈
「最近の動きから、やり方や動向を探ってたんだが……。」
真奈
「空振りばっかりで、線から外すか悩んでたんだよ。」
真奈
「でも、父さんの時も黄泉連絡みだったよね?」
修一
「ああ。」
真奈
「ただ、その時は黄泉連だけで、禍神衆は居なかったんでしょ?」
修一
「そうだ。」
修一の表情が険しくなる。
修一
「あっちの路線が入ると、かなり厄介だな。」
修一
「淀みや歪み。」
修一
「人間への憑依。」
修一
「今回の件とも、繋がらないわけではない。」
修一は隼人を見る。
修一
「隼人。」
隼人
「ああ。」
修一
「憑依の可能性は?」
隼人
「それがおかしいんだ。」
隼人
「憑依の兆候がなかった。」
修一
「……なかった?」
隼人
「ああ。」
隼人
「身体を乗っ取られてる感じじゃない。」
隼人
「異形が入り込んだってより、外側から無理やり形を変えられた感じだった。」
杏奈
「だから、結界の反応もズレていたのね。」
胡桃
「霊糸も、変だった。」
胡桃は自分の腕を見る。
胡桃
「捕まえてるのに、中が空っぽみたいで……。」
胡桃
「でも、残片だけは意思があるみたいに動いた。」
真奈
「……ヤバいな。」
真奈は舌打ちした。
真奈
「憑依じゃないなら、入り込んだ可能性がある。」
修一
「あるいは、異形を人間の形に重ねたか。」
杏奈
「下位でそんなこと、普通はできないわ。」
真奈
「普通じゃないから、今こうなってんだろ。」
陸斗
「最悪じゃねぇか。」
隼人
「最悪だな。」
真奈
「とりあえず、また氷室に状況を聞かんといけんくなったな。」
胡桃の肩が、わずかに揺れた。
真奈はそれに気づいたが、今は触れなかった。
真奈
「父さん。」
真奈
「近々、コンタクト取れる?」
修一
「ふ~~~。」
修一は深く息を吐いた。
修一
「仕方ないか。」
修一
「玲央に連絡を入れる。」
真奈
「ああ。」
真奈はそこで、胡桃へ目を向けた。
真奈
「それと、胡桃。」
胡桃
「え?」
真奈
「明日は仕事休みな。」
胡桃
「え?」
胡桃
「いつもと同じじゃない!」
胡桃
「仕事は行くわよ。」
真奈
「ダメだ。」
真奈
「明日は休み。」
胡桃
「なんで?」
真奈
「怪我したから。」
胡桃
「かすり傷だよ。」
真奈
「かすり傷でも怪我は怪我。」
真奈
「それに、お前はすぐ無理する。」
胡桃
「う……。」
真奈
「たまには街に出てブラブラしてこい。」
真奈
「有給、溜まってるだろ。」
胡桃
「う~~~。」
胡桃
「は~~い。」
杏奈
「良かったじゃない。」
杏奈
「ゆっくり羽を休めなさい。」
胡桃
「分かったよ~~。」
隼人
「じゃ、俺も休も。」
隼人
「頑張ったし。」
真奈
「いいけど、自分で連絡入れろよ。」
隼人
「うへぇ~~~~。」
陸斗
「そこまでが仕事だろ。」
隼人
「休むのにも労力がいるとか聞いてねぇ。」
由美
「はいはい。二人とも、まずはご飯食べて落ち着きなさい。」
張り詰めていた空気が、少しだけ緩む。
けれど、真奈の表情は晴れなかった。
黄泉連。
禍神衆。
憑依ではない異形。
点だったものが、
少しずつ線になり始めていた。




