【残片の違和感】
冠崎家。
淡い紫の光が玄関先に広がり、
杏奈、隼人、胡桃の三人が姿を現した。
胡桃
「ただいま。」
その声に、家の中から一斉に足音が響いた。
由美
「胡桃!」
真奈
「おかえり。」
修一
「無事か?」
陸斗
「どうだった?」
雄一
「怪我してない?」
伊織
「大丈夫?」
和真
「胡桃姉ちゃん!」
全員が玄関先に集まる。
隼人
「みんな、すまねぇ。」
その一言で、空気が止まった。
隼人
「胡桃が怪我した。」
由美
「胡桃!」
胡桃
「大丈夫。かすり傷だから。」
杏奈
「残滓はないわ。」
杏奈
「応急処置もしてある。」
杏奈
「心配ない。」
全員が、そこでようやく息を吐いた。
由美
「……よかった。」
修一
「中へ入れ。」
修一
「話を聞く。」
三人はリビングへ移動した。
全員が集まる。
空気は、先ほどまでの騒がしさとは違っていた。
真奈
「何があった?」
隼人
「いつもの異形だった。」
隼人
「下位。気配もそうだった。」
真奈
「なら、胡桃が怪我するほどじゃないだろ。」
隼人
「ああ。」
隼人は表情を険しくする。
隼人
「でも、途中で一部が暴走した。」
真奈
「は?」
修一
「……なに?」
杏奈
「私の結界から逃げようとしたんじゃない。」
杏奈
「霧になりきらず、残片だけが別方向へ飛んだ。」
胡桃
「私が霊糸を離さなかったから、狙いがこっちに向いたの。」
由美
「胡桃……。」
胡桃
「でも大丈夫。本当にかすり傷だから。」
真奈
「大丈夫かどうかは、こっちが決める。」
胡桃
「お姉ちゃん……。」
真奈
「残片が独立して動いた?」
隼人
「ああ。」
真奈
「下位で?」
隼人
「下位で。」
陸斗
「……おかしくねぇか。」
杏奈
「おかしいわ。」
杏奈
「下位異形なら、核を崩された時点で霧散する。」
杏奈
「一部だけが意思を持つように動くなんて、普通はない。」
修一
「外部干渉か。」
真奈
「可能性はある。」
リビングの空気が、一段重くなる。
胡桃は、そっと自分の腕に目を落とした。
もう痛みはほとんどない。
けれど、紫苑の顔が頭から離れなかった。
動けなくなっていた紫苑。
自分の腕を見て、苦しそうに顔を歪めていた紫苑。
真奈
「胡桃。」
胡桃
「……え?」
真奈
「何かあったな。」
胡桃
「…………。」
胡桃は少しだけ迷った。
そして、小さく頷く。
胡桃
「氷室さんが、いました。」
全員の表情が変わった。
修一
「……神崎組か。」
胡桃
「はい。」
胡桃
「氷室さんが、異形に狙われていました。」
真奈
「……そうか。」
修一は深く息を吐いた。
修一
「もう、偶然じゃ済まんな。」




