【冠崎家の食卓】
茂夫は一度屋敷に戻ると告げ、帰っていった。
その背中を見送り、
全員で総本家の中へ戻る。
そして、仏間。
全員
「疲れた~~~~~~……。」
誰からともなく畳の上に倒れ込み、
そのまま全員が寝そべった。
由美
「あなた達!」
千代
「あらあらまぁ~~。」
千代は口元に手を添え、くすくすと笑った。
真奈
「腹減った。」
陸斗
「力が出ね~~。」
隼人
「あ~~~、涼しい~~~。」
杏奈
「ゆっくり出来るわ~~~。」
胡桃
「気持ちいい~~~。」
雄一
「腹減った~~~。」
伊織
「ねむ~~~い。」
和真
「ふわ~~~~~あ!」
和真が大きく伸びをする。
玄三
「飯だぞー。」
その瞬間。
真奈・雄一
「ご飯だ!」
二人は同時に起き上がり、
台所へ向かって走り出した。
杏奈・胡桃
「おねーーちゃん!!!」
陸斗
「ヤバ。」
隼人
「中学生が二人いる。」
伊織
「真奈姉ちゃん、大人なのに。」
和真
「雄一兄ちゃんと同じ速さだった。」
真奈
「聞こえてるぞ!」
台所の方から、真奈の声が飛んでくる。
由美
「走らないの!」
千代
「ホホホホ。元気が一番ねぇ。」
全員が、深いため息をついた。
けれどその顔は、
どこか楽しそうだった。
各々が起き上がり、食事の席へ移った。
座卓には、料理が並んでいた。
その横に、
それぞれ小さな白い小皿が置かれている。
お供え用の皿だった。
一人につき、一皿。
だが。
真奈の前だけ、明らかに数が多い。
陸斗
「相変わらずだな~。」
隼人
「まっ、違うからな。」
杏奈
「…………。」
杏奈
「やっぱり迫力あるわね。」
杏奈
「見慣れてるけど。」
胡桃
「いつもより量が多いね。」
真奈
「久々だしな。」
真奈
「腹も減るんだろ。」
その時だった。
真奈の背後に、ふわりと気配が立つ。
空気が揺れた。
金色の光が、細く伸びる。
そして。
神龍
「刺身が欲しい。」
真奈
「は?」
神龍
「刺身は無いのか?」
真奈
「他のは?」
神龍
「う~~む。」
神龍
「刺身がいい。」
真奈
「分かったよ。」
真奈
「後で買ってくる。」
千代
「あらあら。」
千代
「刺身ならあるわよ。」
真奈
「あるの?」
千代
「夜に出そうと思っていたのよ。」
全員
「あるの!?」
千代
「あるわよ。」
千代は、にこにこと笑う。
千代
「流石ね。ふふっ。」
真奈
「ばーちゃん。」
真奈
「ちょっと三切れ貰っていい?」
千代
「いいわよ。」
千代が用意した刺身を、真奈は三切れだけ取り分ける。
そして、自分の皿の横へそっと置いた。
神龍
「美味い。」
神龍
「美味い。」
真奈
「良かったな。」
真奈
「てか、これら全部、私が食べんといけんから。」
真奈
「早くみんな食べて。」
すると、今度は別の気配が動いた。
淡い炎のような光。
白く細い影。
黒に近い毛並みの獣。
そして、狐の気配。
フェニックス
「無理。」
白蛇のハク
「無茶だよ。」
ハク
「美味いから、味わって食べる。」
狼神のロウ
「うまい。」
ロウ
「無理。」
お狐さま
「美味。」
真奈
「え~~~~……。」
陸斗
「勢揃い。」
陸斗
「初めて見た。」
真奈
「普段は見せないからな。」
隼人
「こんなに居たか?」
真奈
「居たよ。」
真奈
「元々から全員。」
胡桃は、真奈の前に並ぶ皿を見た。
一人につき、一皿。
それが普通。
でも真奈の前だけは違う。
神龍。
フェニックス。
白蛇。
狼神。
お狐さま。
それぞれが、当たり前のようにそこにいて、
当たり前のように供えられたものを食べている。
異様な光景だった。
けれど。
真奈だけは、いつもの顔で箸を持っていた。
真奈
「だから早く食べろって。」
真奈
「最終的に私が腹いっぱいになるんだから。」
陸斗
「いや、絵面が強すぎて飯が入ってこねぇよ。」
隼人
「総本家って感じするわ。」
杏奈
「真奈の場合、総本家じゃなくてもこうだけどね。」
真奈
「人を怪奇現象みたいに言うな。」
胡桃
「ふふっ。」
千代
「賑やかでいいわねぇ。」
玄三
「相変わらず、真奈の周りは騒がしいのう。」
神龍
「刺身、もう一切れ。」
真奈
「味わえって言われただろ!」
全員が、思わず笑った。
けれど、その笑いの中でも、
真奈の前だけは、明らかに空気が違っていた。
冠崎真奈。
冠崎家最強。
その意味を、
食卓の上に並ぶ小皿の数が、静かに物語っていた。




