【戻すべきもの】
全員が総本家の中へ入り、
そのまま仏間へ向かった。
仏間には、大きな仏壇があった。
そして、その上座には、
かなり大きな神棚が祀られている。
古い木の香り。
畳の匂い。
外の騒がしさとは違う、
静かな空気がそこにあった。
一番前の中央に玄三。
その隣に千代。
二人は神棚と仏壇を背にし、
全員を見る形で座った。
正面には修一。
その後ろに由美、真奈、杏奈。
さらに後ろへ、陸斗、隼人、胡桃、雄一、伊織、和真が並ぶ。
玄三
「よく来た。」
玄三
「まずは、挨拶じゃ。」
その言葉に、全員の表情が引き締まる。
まずは仏壇へ。
静かに手を合わせる。
それから、神棚へ。
誰も声を出さなかった。
先ほどまでの騒がしさが嘘のように、
仏間には、祈りの空気だけが満ちていた。
挨拶を終えると、
玄三がゆっくりと神棚の方へ向かった。
そして、神棚から一つの箱を下ろす。
丁寧に蓋を開けると、
中には封印具が納められていた。
玄三
「これが、封印具じゃ。」
細かな細工が施されたそれは、
ただの器には見えなかった。
金属とも、石とも、木とも違う。
どこか不思議な気配を纏っている。
陸斗
「……すげぇな。」
隼人
「初めて見た。」
雄一
「綺麗だ……。」
伊織
「初めて見た……。」
和真
「すごーい!」
真奈
「久しぶりに見たな。」
杏奈
「ええ。」
胡桃
「これが……封印具。」
玄三
「修一。」
玄三
「あれを出してみてくれ。」
修一
「ああ。」
修一は、補助具をそっと前に置いた。
胡桃の霊糸。
杏奈の結界。
真奈の邪気祓い。
幾重にも守られていた補助具から、
修一がゆっくりと結界核を取り出す。
その瞬間。
仏間が、紫色の光に包まれた。
眩しいほどの光。
けれど、不思議と目を背けたくなるものではなかった。
封印具が、反応する。
まるで長く待っていたものを迎えるように。
閉じていた花弁が、
ひとつ、またひとつと開いていく。
蓮の花が咲くように。
静かに。
美しく。
玄三
「この開いた中央へ置く。」
玄三
「焦るな。ゆっくりでいい。」
修一は頷き、
結界核を封印具の中央へ納めた。
次の瞬間。
封印具全体が、紫色に光った。
花弁の内側に刻まれた細かな紋が浮かび上がり、
光はゆっくりと縁へ集まっていく。
結界核の光も、少しずつ落ち着いていった。
まるで、暴れていた呼吸が整っていくように。
やがて、開いていた花弁が、
結界核を包み込むように閉じていく。
一枚。
また一枚。
最後の花弁が閉じた瞬間、
仏間に満ちていた紫の光は、静かに消えた。
玄三
「……よし。」
玄三
「これで、大丈夫じゃ。」
全員
「おおーーー。」
和真
「すごかった!」
雄一
「花みたいだった!」
陸斗
「いや、あれ本当に封印具か? 芸術品じゃねぇか。」
真奈
「だから言っただろ。すごいやつだって。」
隼人
「言ってねぇよ。」
杏奈
「でも、これで戻ったわね。」
胡桃
「うん……。」
胡桃は、閉じられた封印具を見つめた。
ただ封じたのではない。
戻るべき場所へ、戻した。
そんな気がした。
玄三
「さて。」
玄三は封印具を丁寧に持ち上げる。
玄三
「神社へ向かうか。」
玄三
「全員、来るがいい。」
玄三
「茂夫も、首を長くして待っとる。」
全員
「はい!」
こうして、冠崎家は全員で神社へ向かった。




