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祓ノ血族(はらいのけつぞく)  作者: ハルヤ
【祓ノ血族】-本編-
124/193

【本家へ向かう朝】

翌朝。


冠崎家の玄関は、朝から騒がしかった。


陸斗

「おい、和真。荷物それだけか?」


和真

「うん。」


隼人

「いや、少なすぎだろ。」


和真

「だって、一泊じゃないの?」


陸斗

「親父の話聞いてたか?」


和真

「聞いてたけど、途中で真奈姉ちゃんがサービスエリアの話してたから忘れた。」


真奈

「私のせいにするな。」


隼人

「いや、九割姉貴のせいだろ。」


真奈

「一割は?」


陸斗

「元から話聞いてない和真。」


和真

「えっ。」


胡桃

「ふふっ。」


由美

「はいはい。朝から喧嘩しないの。」


杏奈

「喧嘩というより、いつもの確認作業ね。」


真奈

「確認作業ってなんだよ。」


杏奈

「真奈がどこまで本気で寄り道する気かの確認。」


真奈

「本気に決まってるだろ。」


陸斗

「だから運転させねぇって言ってんだよ!」


隼人

「本家に着く前に全サービスエリア制覇される。」


真奈

「旅の醍醐味だろ。」


修一

「今日は旅じゃない。」


修一の声で、少しだけ空気が止まった。


けれどすぐに、由美が柔らかく笑う。


由美

「でも、ちゃんと朝ご飯は食べてから行きましょうね。」


雄一

「やった。」


伊織

「おにぎりある?」


由美

「あるわよ。」


真奈

「唐揚げは?」


由美

「あります。」


真奈

「よし、出発できる。」


陸斗

「目的変わってんだよ。」


胡桃

「クスクス。」


朝の光が、玄関に差し込んでいた。


大きな問題を抱えたままでも、

冠崎家の朝は、いつも通り騒がしい。


それが少しだけ、胡桃を安心させた。


修一

「……行くぞ。」


全員が荷物を持つ。


冠崎家が、本家へ向かう朝だった。


修一

「あれは?」


胡桃

「大丈夫!」


胡桃

「私が霊糸で巻いてる。」


杏奈

「私が補助具で結界を張ってるわ。」


真奈

「私が邪気祓いしたから、問題ない。」


修一

「そうか……。」


修一は、ようやく少しだけ息を吐いた。


その様子を見て、真奈が首を傾げる。


真奈

「お父さんさ~~。」


修一

「なんだ?」


真奈

「もっと気楽に行こ?」


修一

「……なに?」


真奈

「今からそんなにピリピリしたって、しょ~がないじゃん。」


真奈

「なるようにしかならないし。」


真奈

「向こうに着いてからしか分かんないのに、分からないものを考えても分かりません!!!」


修一

「…………。」


修一は、呆然とした。


全員も、思わず固まった。


数秒後。


修一

「くっ……。」


修一

「くっくっくっ……。」


肩が震える。


そして。


修一

「ハッハッハッーー!」


修一が、突然大笑いし始めた。


真奈

「やば。」


真奈

「壊れた。」


杏奈・胡桃

「おねーーちゃん!!!」


陸斗

「いや、壊したのお前だろ!」


隼人

「親父が朝からバグった。」


由美

「あらあら。」


修一

「くっくっくっ……。」


修一は目元を拭う。


修一

「真奈の言う通りだ。」


修一

「なるようにしかならんか。」


修一

「そうだな。」


修一

「その通りだ!!!」


修一の顔から、少しだけ力が抜けた。


修一

「気楽に出発するぞ!!」


全員

「おーーー!!!」


真奈

「よし! サービスエリア寄るぞ!」


陸斗

「寄らねぇ!!!」


隼人

「気楽の意味を履き違えるな!!!」


胡桃

「クスクスクス。」


由美

「本当に、騒がしい朝ね。」


そう言いながらも、由美の表情は柔らかかった。


騒がしい声。

呆れたようなツッコミ。

誰かの笑い声。


重い問題をいくつも抱えているはずなのに、

冠崎家の朝は、いつも通りだった。


だからこそ、少しだけ救われる。


胡桃は、荷物を抱えながら小さく笑った。


胡桃

「行こう。」


真奈

「おう!」


杏奈

「忘れ物はない?」


陸斗

「真奈姉の寄り道欲以外はな。」


真奈

「だから置いていけるなら置いていきたいって言っただろ。」


隼人

「置いてけ。今すぐ置いてけ。」


修一

「……行くぞ。」


その声に、全員が顔を上げた。


玄関の扉が開く。


朝の光が、家の中へ差し込んだ。


いつものようで、

いつもとは違う朝。


冠崎家は、騒がしいまま、

本家へ向かって動き出した。

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